世界屈指のハイパーカー、ブガッティ・ヴェイロン。
その名前を聞けば、車両価格だけでなく、タイヤ交換や整備にも桁違いの費用がかかるクルマというイメージを持つ人も多いでしょう。
ところが、そんなヴェイロンのトラブルをわずか54ドル(約8,000円)程度の部品代で修理してしまったYouTuberがいます。
しかも、そのヴェイロンに付けられた評価額は150万ポンド(約200万ドル)。
今回の主役は、事故車や高級車の再生で知られる英国のYouTuber、Mat Armstrong(マット・アームストロング)です。
ドバイで眠っていた「誰も欲しがらないヴェイロン」
今回アームストロングが購入したのは、一般的なヴェイロンではありません。
Oakley Designによって手が加えられたワンオフ仕様で、最高出力は約1,200馬力。軽量なカーボンボディを備えた非常に特殊な個体です。
しかし、ドバイのショールームに置かれていたこのヴェイロンには大きな問題がありました。
エンジンが始動せず、トランスミッションも正常に作動しないことがあったのです。
世界有数の高額車であるヴェイロンだけに、原因不明のトラブルを抱えた個体を購入するのは相当なリスクがあります。
ところがアームストロングには、ある勝算がありました。
彼は以前、自身が所有する別のヴェイロンで、よく似たトラブルを経験していたのです。
現地で約20分ほど車両を確認したアームストロングは、この個体を購入することを決断しました。
輸送費や英国への輸入関税などを含めると、最終的な投資額は約130万ドルに達したとされています。
原因は「燃料ホース」だった

驚くべきことに、100万ドルを超えるハイパーカーを動かなくしていた原因のひとつは、極めてシンプルなものでした。
燃料ホースです。
アームストロングは以前、自身のヴェイロンでも同様の故障を経験しており、その修理過程をYouTubeで公開していました。
ドバイで車両の輸送準備を担当していたスタッフがその動画を発見。
同じ症状だと気づき、なんと輸送前に燃料ホースを交換してしまったのです。
しかも、この作業自体は無料だったとされています。
ただし使用されたホースクランプが適切ではなく、英国に到着して間もなくヴェイロンは再び停止。
最終的にはアームストロング自身が適切な燃料ホースを使って修理をやり直しました。
ブガッティなのに「フォルクスワーゲンの14ドル部品」
さらに面白いのは、修理に使用された部品です。
エンジン始動に関係するイグニッションスイッチは、なんとフォルクスワーゲン・トランスポーター用の約14ドルの部品。
そのほかにもフォルクスワーゲン・ティグアン用のボンネットストラットや、わずか4ドル程度の抵抗などが使用されました。
最終的にアームストロングが細かな修理部品に費やした金額は、約54ドルだったとされています。
100万ドルを超えるヴェイロンの修理費としては、あまりにも現実離れした金額です。
修理内容をまとめると
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車両 | Bugatti Veyron Oakley Design |
| 状態 | エンジン始動不能・トランスミッション不調 |
| 主な原因 | 燃料ホースなど |
| イグニッションスイッチ | VW Transporter用部品 |
| イグニッションスイッチ価格 | 約14ドル |
| 抵抗 | 約4ドル |
| ボンネットストラット | VW Tiguan系部品 |
| 修理部品代 | 約54ドル |
| 輸送・関税等を含む投資額 | 約130万ドル |
| 修理後の評価額 | 150万ポンド/約200万ドル |
もちろん、これは「ヴェイロンは8,000円で修理できる」という話ではありません。
アームストロング自身の知識や過去の経験、設備、協力してくれる専門家の存在があったからこそ実現した特殊なケースです。
それでも、ヴェイロンほどのハイパーカーであっても、故障原因そのものは意外なほど単純な場合があることを示す非常に興味深い事例でしょう。
復活したヴェイロンをプロが査定

修理を終え、オリジナルホイールへ戻されたヴェイロンは、高級車・クラシックカー販売で知られるTom Hartleyへ持ち込まれました。
そこで提示された評価額が、
150万ポンド(約200万ドル)
でした。
しかも、この個体については2006年頃からの履歴も確認され、大きな事故歴が隠されているような車両ではないことも確認されたとされています。
アームストロングの総投資額が約130万ドルだったことを考えると、単純計算では約60万ドルもの含み益が生まれたことになります。
ただし、これはあくまで評価額との差であり、実際にその価格で売却して利益が確定したわけではありません。
ヴェイロンそのものの価値も上昇している
今回の話をさらに興味深くしているのが、ヴェイロンの中古車市場です。
2005年に登場したヴェイロンは、8.0リッターW16クワッドターボエンジンを搭載し、当時としては異次元となる1,001PSを発揮しました。
今回のOakley Design仕様では、さらに約1,200馬力まで強化されています。
Bugatti Veyron 基本スペック
| 項目 | Bugatti Veyron 16.4 |
|---|---|
| エンジン | 8.0L W16 クワッドターボ |
| 最高出力 | 1,001PS |
| 最大トルク | 約1,250Nm |
| トランスミッション | 7速デュアルクラッチ |
| 駆動方式 | AWD |
| 0-100km/h加速 | 約2.5秒 |
| 最高速度 | 約407km/h |
| 生産期間 | 2005〜2015年(Veyronシリーズ) |
登場から20年以上が経過しようとしている現在、ヴェイロンは単なる「古いハイパーカー」ではなく、自動車史を変えたコレクターズカーとして評価されるようになっています。
1,000馬力と400km/hという数字を量産車の世界へ持ち込んだ功績を考えれば、今後さらに価値が高まる可能性も十分に考えられます。
「高級車=すべての部品が高い」とは限らない
今回の一件で特に興味深いのが、ヴェイロンにフォルクスワーゲングループの部品が使われている点です。
ブガッティは当時フォルクスワーゲングループ傘下でヴェイロンを開発しており、一部の部品についてグループ内の既存部品を活用すること自体は不思議ではありません。
しかし、
「ブガッティの故障」と聞けば数百万円を覚悟するところが、実際には十数ドルのVW部品だった。
このギャップこそ、今回の動画が大きな注目を集めた理由のひとつでしょう。
同時に、現代の高級車において「部品そのものの価格」と「メーカー正規ルートで修理する価格」は必ずしも同じではないことも浮き彫りになっています。
まとめ
不動状態だったワンオフのブガッティ・ヴェイロン。
普通なら手を出すことすらためらう個体ですが、Mat Armstrongは過去の経験からトラブルの原因を見抜き、購入を決断しました。
結果として、燃料ホースやVW系の部品、数ドルの抵抗などを使い、細かな修理部品代はわずか約54ドル。
そして復活したヴェイロンには、150万ポンド(約200万ドル)という評価額が付けられました。
もちろん、約54ドルだけで130万ドルのヴェイロンが完成したわけではありません。購入費、輸送費、関税、作業環境、知識、そしてこれまで積み重ねてきた経験があってこその結果です。
それでも、数億円クラスのハイパーカーを止めていた原因が、意外にも身近な部品だったという事実は面白いところです。
そして何より興味深いのは、ヴェイロンが「世界最速を競ったハイパーカー」から、いよいよ歴史的価値を持つコレクターズカーへと移行し始めていることなのかもしれません。
出典:Autoblog / Mat Armstrong




