メルセデス・ベンツと中国の吉利汽車(Geely)が共同展開するスマート(smart)は、2026年10月12日に開幕したパリモーターショーで、新型電気自動車「smart #2(スマート・ハッシュタグツー)」を世界初公開しました。
かつて欧州の都市部を中心に人気を集めた2人乗りコンパクトカー「smart fortwo(スマート・フォーツー)」の思想を受け継ぐ新型モデルであり、全長わずか2,746mmという極めてコンパクトなボディに、最新のEV技術とメルセデス・ベンツのデザイン哲学を融合しています。
近年のスマートはSUVを中心とするブランドへと変貌していましたが、今回の#2によって、ブランドの原点ともいえる超小型シティカーが復活することになります。
スマートの原点である2人乗りモデルが復活

スマートの歴史は、1990年代にメルセデス・ベンツとスウォッチの協力によって誕生した小型車構想にさかのぼります。
1998年に発売された初代スマート・シティクーペは、全長約2.5mという小さな車体と個性的なデザインで注目を集め、その後「fortwo」の名称で世界各国に展開されました。
特に欧州では、都市部の狭い道路や限られた駐車スペースに適した移動手段として支持され、単なる低価格車とは異なる、ファッション性の高い都市型モビリティとして独自の地位を築いてきました。
しかし、スマートは2020年にメルセデス・ベンツと吉利汽車による合弁事業へ移行すると、電動化とブランドの高級化を推進し、#1、#3、#5といった比較的大型のEVを展開するようになります。
こうした方向転換によって、ブランドの象徴だった小さな2人乗りモデルは姿を消していましたが、今回の#2は、その空白を埋める存在として登場しました。
全長2,746mm、初代の思想を受け継ぐデザイン

新型smart #2の最大の特徴は、現代の自動車としては珍しいほど小さな車体です。
全長は2,746mmに抑えられており、日本の軽自動車規格で定められた全長3,400mmよりも654mm短く、都市部での取り回しを最優先した設計となっています。
エクステリアはメルセデス・ベンツのグローバルデザインチームが担当し、四隅に配置されたタイヤ、短い前後オーバーハング、丸みを帯びたフォルムなど、歴代スマートを象徴するデザイン要素を継承しました。
また、ボディと異なるカラーを組み合わせたツートーン仕上げや、上下に分割して開閉できるテールゲートも採用されており、初代モデルを知る人には懐かしく、新しい世代には新鮮に映るデザインに仕上がっています。
インテリアについても、限られた車内空間を最大限に活用する設計が取り入れられ、2人の乗員が快適に移動できる居住性と、日常的な使いやすさの両立が図られています。
最高出力82PS、航続距離は約290km
新型smart #2は、新開発の電気自動車専用プラットフォーム「Electric Compact Architecture(ECA)」を採用しています。
リアに配置された電気モーターが後輪を駆動するRRレイアウトを採用しており、最高出力は60kW(約82PS)、最大トルクは130Nmを発生します。
バッテリーには容量35.8kWhのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を搭載し、欧州WLTP基準で約290kmの航続距離を目標としています。
高速道路での長距離移動を主目的としたEVではありませんが、日常の通勤や買い物、都市部での短距離移動を想定すれば、十分に実用的な性能といえるでしょう。
smart #2 主要スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 車名 | smart #2 |
| ボディタイプ | 2ドア・2人乗り |
| 全長 | 2,746mm |
| 駆動方式 | 後輪駆動(RR) |
| 最高出力 | 約82PS(60kW) |
| 最大トルク | 130Nm |
| バッテリー容量 | 35.8kWh |
| バッテリー種類 | LFP |
| 航続距離 | 約290km(WLTP目標値) |
| DC急速充電 | 最大65kW |
| 急速充電時間 | 約20分(10〜80%) |
| 最小回転直径 | 約6.95m(車体外周基準) |
| プラットフォーム | ECA |
特に注目したいのは、車体の小ささを活かした取り回しの良さです。
車体外周基準の最小回転直径は約6.95mと発表されており、日本で一般的に用いられるタイヤ軌跡基準の最小回転半径とは測定方法が異なるものの、狭い道路や駐車場でも扱いやすいことが期待されます。
さらに、リアサスペンションには5リンク式を採用し、前後で異なる幅のタイヤを組み合わせることで、コンパクトカーでありながら走行安定性にも配慮しています。
小さなボディでも安全性を重視
超小型車で気になるのが衝突安全性能ですが、新型smart #2には進化した安全構造「Tridion Cell Evo(トリディオン・セル・エボ)」が採用されています。
歴代スマートでは、乗員を取り囲む高剛性の安全セルが特徴的な技術として知られてきましたが、新型モデルではEV専用プラットフォームに合わせて構造を見直し、車体剛性と衝突時の保護性能の向上を目指しています。
もっとも、車体が小さいことと衝突安全性が高いことは必ずしも両立するわけではなく、実際の安全性能については、今後の第三者機関による衝突試験結果を確認する必要があるでしょう。
特別仕様車「Couture Edition」も登場

世界初公開に合わせて、特別仕様車「smart #2 Couture Edition(クチュール・エディション)」も発表されました。
専用のマットホワイト塗装にプラチナゴールドのアクセントを組み合わせた仕様で、コンパクトなシティカーにファッション性と高級感を与えています。
この特別仕様車は欧州と中国でそれぞれ999台が用意され、中国では11万2,999元で販売されます。
通常モデルとは異なる特別な仕立てを採用することで、スマートが単なる実用的な小型EVではなく、ライフスタイルを表現するプレミアムブランドであることを強調しています。
欧州では2027年に発売予定、日本導入の可能性は?
新型smart #2は欧州と中国を中心に展開され、英国では2027年夏の導入が予定されています。
英国での目標価格は2万ポンド未満とされており、比較的購入しやすいプレミアムEVとして市場に投入される見込みです。
一方、日本市場への導入については、2026年10月13日時点で正式な発表はありません。
ただし、日本では過去にスマート・フォーツーが正規輸入されていた実績があり、特に都市部では小さなボディと独特のデザインを評価するユーザーが存在していました。
今回の#2は全長こそ軽自動車より短いものの、車幅や法規上の条件から、そのまま日本の軽自動車として登録できるわけではありません。
仮に日本へ導入される場合は、普通乗用車としての価格競争力に加え、充電規格への対応や販売・整備体制の構築が重要になります。
日本には軽自動車という完成度の高い小型車市場が存在するだけに、実用性だけで勝負することは難しいと考えられますが、輸入車ならではのデザインやブランド価値を求める層には、一定の需要が期待できるでしょう。
大型化が進むEV市場で、スマートは再び独自の道を歩む
近年の電気自動車市場では、大容量バッテリーや長い航続距離を確保するために車体が大型化する傾向が見られます。
スマート自身もSUVを中心としたラインアップへと転換していましたが、今回の#2は、必ずしも大きな車体や長い航続距離だけがEVの価値ではないことを示すモデルといえます。
都市部での移動に必要な性能を見極め、限られたスペースを効率的に使いながら、運転する楽しさや所有する喜びも提供するという考え方は、まさにスマートが誕生した当時の理念そのものです。
かつて欧州の街並みを彩った小さな2人乗りモデルが、EV時代にどのような存在感を示すのか。そして、日本でも再びスマートの新車を購入できる日が訪れるのか、今後の展開に注目したいところです。
参考・出典:CarBuzz / smart公式ニュースルーム / Car and Driver / CnEVPost / EV Fleet World




