「技術のAudi」が特許ランキング14位という意外 BMWは2,350件、Audiはわずか199件

「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」という言葉を長年掲げ、quattroをはじめとする数々の技術によってブランドを築いてきたAudiですが、そのイメージからすると少し意外なデータが明らかになりました。

CarBuzzが紹介した自動車メーカーの特許ランキングでは、Toyotaが2,389件で首位に立ち、BMWが2,350件、Mercedes-Benzが2,050件と続いている一方、Audiはわずか199件で14位にとどまっています。

しかも上位メーカーの多くが前年から特許件数を増やしているなか、Audiは3.9%減少しており、「技術による先進」をブランドの象徴としてきたメーカーとしては、なかなか興味深い結果といえそうです。

目次

Toyotaが首位、BMWとMercedes-Benzも2,000件超え

今回示されたランキングを見ると、トップはToyotaの2,389件で、前年から67.9%という大幅な増加を記録しています。

わずか39件差の2位にはBMWが2,350件で入り、こちらも42.3%増加。さらにMercedes-Benzが2,050件で3位となっており、67.2%増という大きな伸びを見せています。

主なメーカーを並べると、その差はさらに分かりやすくなります。

順位メーカー特許件数増減
1Toyota2,389件+67.9%
2BMW2,350件+42.3%
3Mercedes-Benz2,050件+67.2%
4Hyundai1,983件+69.6%
5Stellantis1,502件+6.1%
6Volkswagen1,026件+47.2%
7Porsche932件+19.5%
8Honda919件+28.9%
9Nissan713件+83.3%
10Ford362件+8,950.0%
11Subaru303件+11.4%
12Tesla303件+88.2%
13Jaguar Land Rover210件+35.5%
14Audi199件-3.9%
15Rivian146件-39.2%

このランキングでAudiはJaguar Land Roverよりも少なく、同じVolkswagen Groupに属するVolkswagenの約5分の1、Porscheと比較しても4分の1以下となっています。

そして何より目を引くのが、プレミアム市場で長年ライバル関係にあるBMWとMercedes-Benzとの差でしょう。BMWの2,350件に対してAudiは199件ですから、単純な件数では約11.8倍、Mercedes-Benzの2,050件と比べても約10.3倍という非常に大きな開きがあります。

「技術による先進」を掲げるAudiとしては意外な結果

この数字が興味深いのは、Audiが単なるプレミアム自動車メーカーではなく、長年にわたって「技術」をブランドアイデンティティの中心に置いてきたからです。

Audiを象徴する技術として真っ先に思い浮かぶのはquattroでしょう。四輪駆動をスポーツモデルや高性能な乗用車へ積極的に導入し、モータースポーツでもその性能を証明したことで、Audiは独自のポジションを築いてきました。

その後もアルミニウムを大規模に使用したAudi Space Frame、LEDヘッドライト、マトリクスLED、デジタルコックピットなど、新しい技術を市販車へ積極的に取り入れてきた歴史があります。

Mercedes-Benzが高級車としての伝統を持ち、BMWが走りをブランドの大きな柱としてきたのに対し、Audiにとって「先進技術」はブランドを特徴づける重要な要素です。それだけに、現在の特許ランキングでBMWとMercedes-Benzからこれほど大きく離されているという結果には驚かされます。

さらに気になる「前年比−3.9%」

件数以上に注目したいのが、その方向性です。

Toyota、BMW、Mercedes-Benz、Hyundai、Volkswagen、Porscheなど上位メーカーの多くは特許件数を前年から増加させており、とりわけToyotaは67.9%、Mercedes-Benzは67.2%、Hyundaiは69.6%増加しています。

現在の自動車業界では、EVだけでなくバッテリー、充電、ソフトウェア、AI、運転支援、シャシー制御、熱管理など、メーカーが競争しなければならない技術領域そのものが急速に広がっています。そのため、各社が将来を見据えて知的財産の確保を進めていることは不思議ではありません。

そうした状況のなかでAudiは199件にとどまり、さらに前年から3.9%減少しています。

もちろん3.9%という減少だけでAudiの研究開発が縮小していると判断することはできませんが、多くの競合メーカーが大幅に件数を伸ばしていることを考えると、相対的な差が広がっている点は気になるところです。

ただし「199件だからAudiの技術力が低い」は間違い

一方で、このランキングを見る際には重要な注意点があります。

特許件数は、そのメーカーの技術力を直接示す点数表ではありません。

企業によって知的財産戦略は異なり、積極的に特許を取得する企業がある一方、技術の内容を公開することになる特許出願を避け、ノウハウを営業秘密として管理する場合もあります。また、一つの技術から複数の特許が生まれることもあれば、出願された技術が実際の市販車に採用されないことも珍しくありません。

さらにAudiの場合はVolkswagen Groupに属していることも考える必要があり、グループ内にはVolkswagenだけでなくPorscheなど複数のブランドや技術開発部門が存在しています。そのため、Audiというブランド単体の数字だけを見て、Volkswagen Group全体の研究開発力まで判断することはできません。

つまり「BMWが2,350件でAudiが199件だから、BMWにはAudiの約12倍の技術力がある」という意味ではないのです。

Teslaが303件という数字も興味深い

特許件数と技術的な影響力が必ずしも一致しないことを考えるうえで、興味深いのがTeslaです。

今回のランキングでTeslaは303件にとどまり、順位は12位となっています。Toyotaの2,389件と比較すれば約8分の1であり、BMWやMercedes-Benzとも大きな差があります。

しかし、TeslaがEVの普及だけでなく、OTAアップデートやソフトウェアを中心とした自動車開発などを通じて業界に大きな影響を与えてきたことを考えれば、特許の「件数」と市場における技術的な存在感を単純に結びつけることが難しいことも分かります。

その意味ではAudiの199件についても、「技術のAudiではなくなった」と結論付ける材料というより、各メーカーの研究開発や知的財産戦略の違いを示す一つの指標として見るべきでしょう。

それでもBMWとMercedes-Benzの勢いは無視できない

とはいえ、BMWが2,350件、Mercedes-Benzが2,050件という規模で特許を積み上げている事実は無視できません。

これからの自動車は、エンジンやトランスミッションだけで性能差を生み出す時代から、バッテリー、モーター、インバーター、充電、AI、ソフトウェア、センサー、運転支援、インフォテインメントといった複数の技術を組み合わせて価値を生み出す時代へと移りつつあります。

だからこそ各社は自社が開発した技術を守るために知的財産を確保する必要があり、今回のランキングで多くのメーカーが前年を大幅に上回っていることも、こうした競争環境と無関係ではないでしょう。

BMWとMercedes-Benzがこれほど多くの特許を積み上げている一方で、Audiが199件にとどまっているという差については、今後も注目していく必要がありそうです。

「技術のAudi」は件数ではなく市販車で証明できるか

Audiにとって本当に重要なのは、特許ランキングでBMWやMercedes-Benzを上回ることではないでしょう。

quattroが評価されたのは特許件数が多かったからではなく、その技術を実際の自動車へ搭載し、ユーザーが価値を体感できるものへと仕上げたからです。LEDやマトリクスLEDについても同様で、Audiは新しい技術を単なる研究成果で終わらせるのではなく、デザインや走行性能と結びつけることで「Audiらしさ」へ変えてきました。

今回のランキングでは14位・199件、さらに前年比3.9%減という意外な結果になりましたが、それだけで「技術のAudi」というブランドイメージが失われたとはいえません。

むしろ問われるのは、EVとソフトウェアが自動車の価値を大きく左右する次の時代に、Audiが再びquattroのような「この技術こそAudi」と呼べるものを生み出せるのかということです。

BMWとMercedes-Benzが猛烈な勢いで知的財産を積み上げている今、「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」という言葉を次の時代にどう体現していくのか。Audiの本当の勝負は、特許の件数ではなく、これから登場する市販車の中にあるのかもしれません。

参考・出典:CarBuzz

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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