英国のスーパーカーメーカー、マクラーレンが、主力モデル「750S」の生産を2027年に終了すると発表しました。すでに最終受注の受付が始まっており、2017年に登場した720Sから続く高性能V8スーパーカーの系譜が、約10年の歴史に幕を下ろそうとしています。
750Sは、マクラーレンが長年追求してきた軽量構造と圧倒的な走行性能を象徴するモデルですが、今回の生産終了は単なるモデルチェンジにとどまらず、同社が進める次世代ラインアップへの転換を示す動きとも考えられます。
さらに日本市場では、世界的な生産終了に先立って750Sの生産が終了しているという事情もあり、国内の購入希望者にとっては見逃せないニュースとなっています。
750Sが2027年に生産終了、最終受注がスタート
マクラーレンは2026年10月、750Sの生産を2027年中に終了することを正式に明らかにしました。具体的な生産終了月や世界全体の最終受注期限は示されていませんが、すでに最後の注文を受け付ける段階に入っています。
2023年に発表された750Sは、先代720Sの基本構造を継承しながら、構成部品の約30%を新設計または変更した進化型モデルです。
4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンの最高出力を750PSまで高める一方、軽量化やサスペンションの改良、トランスミッション制御の最適化などを実施し、720Sが持っていた卓越した運動性能をさらに磨き上げました。
その750Sがわずか数年で生産を終えることは意外にも映りますが、720Sから数えれば基本プラットフォームは約10年にわたって使用されており、マクラーレンにとって次の世代へ移行する時期が訪れたともいえるでしょう。
750PSを誇る750S、その圧倒的な性能とは
750Sの魅力は、単純な最高出力の大きさだけではありません。カーボンファイバー製モノコックを中心とする軽量構造と、ドライバーの操作に忠実に反応するシャシー性能こそが、このモデルを特別な存在にしています。
| 項目 | マクラーレン750S |
|---|---|
| エンジン | 4.0L V型8気筒ツインターボ |
| 最高出力 | 750PS |
| 最大トルク | 800Nm |
| トランスミッション | 7速デュアルクラッチ |
| 駆動方式 | 後輪駆動(RWD) |
| 0-100km/h加速 | 2.8秒 |
| 最高速度 | 332km/h |
| 乾燥重量 | 1,277kg |
| ボディタイプ | クーペ/スパイダー |
750Sは、電子制御技術を積極的に採用しながらも油圧式パワーステアリングを維持しており、路面から伝わる情報やステアリング操作の自然な感覚を重視している点も特徴です。
近年のスーパーカーでは電動化によって高出力を実現する例が増えていますが、750Sは比較的軽量な車体と純粋な内燃機関を組み合わせることで、独自のドライビング体験を提供してきました。
日本ではすでに生産終了、その理由は安全基準の変更
今回のニュースで日本の読者が特に注意したいのは、750Sの世界的な生産終了時期と、日本市場向けモデルの生産終了時期が異なることです。
マクラーレン東京の案内によれば、日本国内の衝突被害軽減ブレーキに関する保安基準改正を受け、750SとGTSの日本市場向け生産は2026年6月末生産分をもって終了しています。
つまり、海外では2027年に向けて最終受注が進められているものの、日本向けの新規生産枠についてはすでに終了していることになります。
ただし、国内で新車を購入する可能性が完全になくなったわけではなく、販売店によっては一部の新車や認定中古車が案内可能とされています。
購入を検討している場合には、海外の最終受注情報だけで判断せず、日本国内の正規販売店に在庫状況を確認する必要があるでしょう。
720Sから750Sへ、マクラーレンを支えた10年間
今回の生産終了は、750Sという単一モデルの終焉であると同時に、2017年に登場した720Sから続くスーパーカー世代の一区切りでもあります。
720Sは、従来の650Sから大幅な進化を遂げたモデルとして登場し、空力性能、軽量構造、エンジン出力のすべてを高い次元で融合させました。
その後、この基本設計からサーキット走行性能を追求した765LTなどが派生し、さらに750Sへと進化することで、マクラーレンの中核を担うプラットフォームとして長く活躍してきました。
近年には、同系統の技術を発展させた限定モデル「788HS」も登場しており、200台限定という希少性とともに、ひとつの世代の集大成として位置付けられています。
後継モデルはV8ハイブリッドか、それともV6へ移行するのか
750Sの生産終了によって、次に注目されるのが後継スーパーカーの存在です。
現時点でマクラーレンは750Sの直接的な後継モデルについて、車名や正式な性能諸元、発売時期を明らかにしていません。
一方で、次世代のミッドシップモデルに関しては複数の情報が報じられており、V6ハイブリッドを採用する新型車の可能性が取り沙汰される一方、ハイパーカー「W1」に採用された新世代V8ハイブリッド技術が将来のモデルへ展開されるとの見方もあります。
ただし、これらが同一のモデルを指しているとは限らず、750Sの直接的な後継車にどのパワートレインが搭載されるのかは、今後の正式発表を待つ必要があります。
マクラーレンにとって重要なのは、電動化によって出力を引き上げるだけでなく、ブランドの核心である軽量性やドライバーとの一体感をどこまで維持できるかという点でしょう。
SUV参入も視野に、マクラーレンは大きな転換期へ
マクラーレンは現在、従来のミッドシップスーパーカーを中心とする事業構造から、より幅広い高級車市場への進出を模索しています。
その象徴とされているのが、ブランド初となるSUVの開発計画です。
フェラーリがプロサングエ、ランボルギーニがウルスによって高級SUV市場に参入するなか、マクラーレンも従来とは異なる顧客層の獲得を目指しているとみられます。
ただし、SUVに関する具体的な商品計画には未確定の部分も多く、正式な発売時期や仕様については慎重に見極める必要があります。
750Sの生産終了と新たな車種カテゴリーへの進出が同時期に進むことは、マクラーレンがブランドの次の10年に向けて大きく舵を切ろうとしていることを示しているのかもしれません。

750Sは将来、価値の高いスーパーカーになるのか
750Sの生産終了によって気になるのが、今後の中古車市場における評価です。
一般に、高性能な内燃機関を搭載したスポーツカーは、生産終了後に希少性が注目されることがあります。特に750Sは、電動アシストを持たないV8エンジンと軽量な車体、油圧式ステアリングを組み合わせたモデルであり、将来的にこうした特徴が評価される可能性は十分に考えられます。
もっとも、生産終了がそのまま中古車価格の上昇につながるとは限りません。実際の市場価値は流通台数、走行距離、整備履歴、仕様、そして後継モデルの評価などによって大きく左右されます。
特にマクラーレンでは、通常モデルと限定生産モデルで希少性が異なるため、750Sと788HSを同じ基準で評価することも適切ではないでしょう。
それでも、スーパーカーの電動化が進むなかで、750Sのような純粋なV8モデルがひとつの時代を象徴する存在として記憶される可能性はありそうです。
まとめ:750Sの終焉は、マクラーレン新時代の始まり
マクラーレン750Sの2027年生産終了は、2017年の720Sから始まった約10年間の技術的進化に区切りをつける出来事です。
一方で、次世代スーパーカーの開発や電動化技術の展開、さらにはSUV市場への進出など、マクラーレンが目指す将来像は従来よりも大きく広がりつつあります。
750Sが築いた軽量性とドライビング性能の哲学を、次世代モデルがどのように受け継ぐのか。そして、純粋なV8スーパーカーとしての750Sが将来どのような評価を受けるのか。
その両方が、今後のマクラーレンを見ていくうえで重要なテーマとなりそうです。
参考・出典:Autoblog / McLaren Automotive / McLaren Tokyo / Auto Express / Car and Driver / Autocar




