世界でも屈指のスーパーカーが集まる街、ロンドン。
フェラーリやランボルギーニ、ブガッティといった超高級車を目撃することも決して珍しくありませんが、今回目撃された1台は、その中でも別格と言える存在です。
ロンドンの公道を走っている姿が撮影されたのは、鮮やかなパパイヤオレンジに塗られたマクラーレン F1 LM(McLaren F1 LM)。
生産されたのは、わずか5台。
現在ではその価値が2,000万ドル級とも考えられる、まさに「走る自動車史」と呼べる1台です。
ロンドンの街中にマクラーレンF1 LMが出現
今回のF1 LMは、ロンドンの街中を走行しているところを目撃されました。
現代のハイパーカーでさえ霞んでしまいそうな存在感ですが、驚くべきは、このクルマが博物館やコンクール・デレガンスではなく、実際に一般道を走っていたことです。
The Supercar Blogによると、今回目撃されたパパイヤオレンジの個体はシャシー#2(LM2)とみられています。
F1 LMはコレクターズカーとして極めて高い価値を持つため、こうした車両をロンドンの交通の中で目撃できる機会は非常に珍しいと言えるでしょう。
マクラーレンF1 LMとは?
マクラーレンF1 LMは、1995年のル・マン24時間レースにおけるマクラーレンF1 GTRの歴史的成功を記念して生み出されたモデルです。
1995年のル・マンではF1 GTRが総合優勝を達成。
そのレーシングマシンの思想を公道へ持ち込んだ、究極のF1とも言える存在がF1 LMです。
市販されたF1 LMはわずか5台。
これとは別にプロトタイプの「XP1 LM」が存在し、こちらはマクラーレンが保有しています。
つまり、F1 LMはプロトタイプを含めても極めて限られた台数しか存在しない、マクラーレン史上最も希少なロードカーのひとつです。
6.1リッター自然吸気V12は約680馬力
F1 LMに搭載されるのは、BMW M社が開発した6.1リッター自然吸気V12エンジン。
通常のマクラーレンF1をベースとしながら、LMではレーシングカーに近い仕様へと変更されています。
McLaren F1 LM スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| エンジン | 6.1L V型12気筒 自然吸気 |
| 最高出力 | 約680PS(約671hp) |
| 最大トルク | 約705Nm(約520lb-ft) |
| 駆動方式 | MR/後輪駆動 |
| トランスミッション | 6速MT |
| 車両重量 | 約1,062kg |
| 乗車定員 | 3名 |
| ドライビングポジション | センターシート |
| 生産台数 | 5台+プロトタイプXP1 LM |
| 特徴 | ハイダウンフォース仕様/固定式リアウイング |
現在では1,000馬力を超えるハイパーカーも珍しくありません。
しかしF1 LMの凄さは、単純な最高出力だけではありません。
約1,062kgという非常に軽量なボディに、大排気量の自然吸気V12と6速MTを組み合わせています。
電動化やターボ化が進んだ現代では、二度と同じ思想で作ることが難しいクルマとも言えるでしょう。
巨大なリアウイングを備えた「ハイダウンフォース」仕様
通常のマクラーレンF1との大きな違いのひとつが、エアロダイナミクスです。
F1 LMにはハイダウンフォース仕様のエアロパーツが装着されており、大型の固定式リアウイングを採用。
フロント部分も変更され、フロントフェンダー上部にはエアを抜くためのルーバーが設けられています。
さらに5スポークのセンターロックホイールを装着するなど、その姿はロードカーというよりF1 GTRに近いものです。
それでもナンバーを装着し、公道を走ることができる。
そこにF1 LM最大の魅力があります。
パパイヤオレンジにも特別な意味がある
今回目撃された車両で特に印象的なのが、鮮やかなパパイヤオレンジです。
このカラーは単なる派手なボディカラーではありません。
パパイヤは1960年代からマクラーレンのレーシングカーに使用されてきた、ブランドを象徴するカラーです。
マクラーレン自身も、1968年にワークスマシンへパパイヤカラーを採用し、その後F1やCan-Am、インディカーなどでマクラーレンを象徴するカラーになったと説明しています。
そのためF1 LMのパパイヤオレンジは、ブルース・マクラーレンとマクラーレンのモータースポーツ史へのオマージュでもあるのです。
「2,000万ドル級」のマクラーレンF1
マクラーレンF1の市場価値は、この数十年間で驚異的な上昇を続けています。
その象徴的な出来事のひとつが、2019年に開催されたRM Sotheby’sのオークションでした。
ここで落札されたのは、通常のF1として製造された後、マクラーレン自身によってLM仕様へアップグレードされた非常に特別な個体です。
落札価格は1,980万7,500ドル。
当時のマクラーレンF1として最高クラスの取引となりました。
重要なのは、この車両は今回ロンドンで目撃された「5台しか製造されなかった純正F1 LM」とは別物だという点です。
それでも約2,000万ドルという価格が付いたことを考えれば、本物のF1 LMが現在市場へ出てきた場合、どれほどの評価を受けるのか想像するだけでも興味深いところです。
なぜマクラーレンF1はこれほど特別なのか
マクラーレンF1が誕生したのは1990年代。
設計を率いたのは、名エンジニアのゴードン・マレーです。
センタードライビングポジション、その左右後方に2名分の助手席を配置した独特の3シーターレイアウト。
BMW製自然吸気V12。
カーボンファイバー製モノコック。
そして6速マニュアルトランスミッション。
現代のハイパーカーのように巨大なバッテリーもモーターも、複雑なハイブリッドシステムもありません。
軽量な車体、大排気量自然吸気エンジン、そしてドライバー自身が操作するマニュアルトランスミッション。
F1 LMは、そのマクラーレンF1をさらにレーシングカーへ近づけたモデルです。
だからこそ30年以上が経過した現在でも、その価値はむしろ上昇を続けています。
約30億円のクルマを「走らせる」という贅沢
2,000万ドルを現在の為替水準で単純換算すれば、日本円では約30億円規模になります。
普通なら温度や湿度まで管理されたガレージに保管し、走行距離を増やしたくないと考えてしまいそうな金額です。
しかし今回のF1 LMは、ロンドンの街を実際に走っています。
マクラーレンF1 LMは、美術品として生まれたわけではありません。
6.1リッターV12をドライバーの背後で回し、6速MTを操作しながら走るために作られたクルマです。
世界に5台しかないF1 LMが、ショーケースの中ではなく公道を走っている。
その光景こそ、今回のニュースで最も魅力的な部分なのかもしれません。
参考・出典:The Supercar Blog / McLaren / Top Gear



