F1世界王者フェルナンド・アロンソのコレクションに、またとんでもない1台が加わりました。
今回アロンソが手に入れたのは、ブガッティ・ヴェイロン・グランスポーツ・ヴィテッセ。ただし、一般的なヴィテッセではありません。
シャシーナンバー「8100」とされるこの個体は、削り出したアルミニウムを磨き上げた特殊なボディを持つワンオフモデルで、これまでに製造されたヴェイロンの中でも「最も高価な1台」とされています。
シルバー塗装ではない。アルミそのものが輝いている

写真を見ると、まず目を奪われるのが鏡のように輝くボディです。
一見するとクロームラッピングのようにも見えますが、この輝きはラッピングや塗装によるものではありません。
このヴェイロンでは、ボディパネルに磨き上げられたアルミニウムが使用されています。
さらに驚くべきなのが、その製造方法です。
オーナーの要求に応えるため、それぞれのパネルを大きなアルミニウムの塊から削り出して製作したとされ、その工程では20トン以上ものアルミニウム素材が必要だったと伝えられています。
完成した車両が20トンあるわけではなく、大量の素材から必要な形状だけを削り出していった結果です。
効率とは正反対にあるような製造方法ですが、だからこそ現代の量産車ではまず実現できない、究極のワンオフモデルとなっています。
一度はブガッティも製作を拒否

この特別なヴェイロンが誕生した背景も興味深いものです。
最初のオーナーは、2007年に登場した「ヴェイロン 16.4 ピュール・サン」にインスピレーションを受け、アルミニウムを前面に押し出したグランスポーツ・ヴィテッセの製作をブガッティへ依頼しました。
しかし、あまりにも製造コストが高くなることから、ブガッティは当初この要求を断ったとされています。
それでもオーナーは譲らず、ほかに注文していた複数のブガッティをキャンセルする可能性まで示したことで、最終的にプロジェクトが承認されました。
つまりこのヴェイロンは、通常のオプションを組み合わせただけの特別仕様ではなく、ひとりの顧客のためにブガッティが製造方法そのものを変えて作った1台なのです。
内装は鮮烈なレッド

鏡面仕上げのアルミニウムボディとは対照的に、インテリアには鮮やかなレッドレザーが採用されています。
以前はヘッドレストやフューエルキャップなどに「Kaq」の文字が入る専用仕様となっていたほか、フロントのホースシューグリルにも同様のデザインが施されていました。
しかしアロンソが購入するまでに、一部は標準的なデザインへ戻されたとみられています。
派手なカラーリングに頼るのではなく、素材そのものをデザインとして見せる外装と鮮烈なレッドインテリアの組み合わせは、現在のブガッティでもなかなか見られないものです。
1,200PSのW16クワッドターボ
もちろん、ベースとなったグランスポーツ・ヴィテッセ自体も特別なモデルです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | Bugatti Veyron Grand Sport Vitesse |
| エンジン | 8.0L W16 クワッドターボ |
| 最高出力 | 1,200PS |
| 駆動方式 | AWD |
| ボディ | オープントップ |
| シャシー | 8100 |
| 特徴 | 磨き上げられたアルミニウム製ボディパネル |
| インテリア | レッドレザー |
8.0リッターW16エンジンに4基のターボチャージャーを組み合わせ、最高出力は1,200PS。
ヴェイロンのオープントップモデルとして究極ともいえる性能を持つグランスポーツ・ヴィテッセですが、シャシー8100の場合、そのパフォーマンス以上にボディそのものが大きな価値を持っています。
「史上最も高価なヴェイロン」
この車両はドイツのスペシャリスト「Mechatronik」を通じて販売されていた個体で、その特殊な製造工程から史上最も高価なヴェイロンとも呼ばれています。
一般的なヴェイロンの限定仕様とは異なり、アルミニウムボディを実現するためだけでも莫大なコストがかかったとされています。
そして2026年9月、モナコでこのヴェイロンを運転するアロンソの姿が確認されました。
博物館に置かれていてもおかしくないほど希少な個体ですが、アロンソは実際に公道へ連れ出しているようです。
アロンソのコレクションがさらに異次元へ
フェルナンド・アロンソといえば、F1マシンだけでなくロードカーのコレクターとしても知られています。
そして2026年5月には、ワンオフのパガーニ・ゾンダ・ディアマンテ・ヴェルデを手に入れたことも報じられました。
そこからわずか数カ月で、今度は世界に1台とされるアルミニウムボディのヴェイロンです。
単純に価格の高い最新ハイパーカーを購入するのではなく、CLK GTRやゾンダ、そして今回のヴェイロンのように、歴史的価値やストーリーを持つモデルを選んでいるところにもアロンソらしさを感じます。
20トンのアルミから生まれた「究極のヴェイロン」
ヴェイロンはもともと、採算や効率よりも「世界最高の自動車を作る」という思想から誕生したクルマでした。
そしてシャシー8100は、そのヴェイロンの中でもさらに常識から外れた存在です。
たった1台のために大量のアルミニウムを用意し、それを削り出してボディパネルを製作する。
現代の自動車産業から見れば非効率そのものですが、だからこそ二度と同じものが作られない可能性もあります。
そんな「究極のヴェイロン」を手に入れたのが、F1で長年トップカテゴリーを戦い続けてきたフェルナンド・アロンソというのも、このクルマの物語をさらに面白くしています。
参考・出典:Carscoops / Mechatronik



