アメリカを代表するスポーツカー、シボレー・コルベットは、長年にわたって「欧州スーパーカーに匹敵する性能を、より現実的な価格で手に入れられるクルマ」として独自のポジションを築いてきました。
しかし、2027年モデルとして登場した「Corvette Grand Sport X(コルベット・グランドスポーツX)」では、オプションの選び方次第で、その“手の届くスーパーカー”というイメージが大きく変わってしまうようです。
AutoblogがChevroletのコンフィギュレーターでGrand Sport Xに多数のオプションを追加したところ、完成価格はなんと18万6,138ドルとなりました。
1ドル=150円で単純換算すると約2,792万円となり、Grand Sport Xとしては驚くほど高額な1台です。
Grand Sport Xとは?
Grand Sport Xは、2027年型コルベットに設定された高性能ハイブリッドモデルで、従来のE-Rayに近い役割を担いながら、さらに強力なパワートレインを採用しています。
ミッドシップに搭載されるのは、新開発の6.7リッター自然吸気V8「LS6」。このエンジンだけで535PSを発生し、さらにフロントアクスルを駆動する電気モーターが186PSを加えることで、システム最高出力は721PSに達します。
電気モーターによって前輪も駆動するeAWDを採用しており、0-60mph(約96km/h)加速はわずか2.4秒、1/4マイルは10.4秒という、もはや“中間グレード”とは呼びにくいほどの性能を備えています。
| 項目 | Corvette Grand Sport X |
|---|---|
| エンジン | 6.7L V8自然吸気 LS6 |
| エンジン最高出力 | 535PS |
| フロントモーター最高出力 | 186PS |
| システム最高出力 | 721PS |
| 駆動方式 | eAWD |
| トランスミッション | 8速DCT |
| バッテリー容量 | 1.9kWh |
| 0-60mph加速 | 2.4秒 |
| 1/4マイル | 10.4秒 |
つまりGrand Sport Xは、単純にGrand Sportへモーターを追加したモデルではなく、自然吸気大排気量V8の魅力を残しながら、電動化によって加速性能とトラクションを大幅に引き上げたコルベットなのです。
問題はオプション価格
Grand Sport Xそのものが極端に高価というわけではありません。
ところがAutoblogが上級グレードの3LTを選択し、そこからオプションを追加していくと状況が大きく変わります。
ボディカラーだけでも有料色は500〜995ドル、カーボン仕上げのナセルは1,295ドルとなっており、さらにホイールは仕様によって995ドルから、最高ではなんと1万5,500ドルにも達します。
そのほかにも、ペイントされたブレーキキャリパーが795ドル、ボディストライプが1,295ドル、カーボンフラッシュメタリックのリアウイングが2,095ドルなど、一つひとつを見るとスーパーカーとして珍しくない価格設定ではあるものの、それらを積み重ねれば当然ながら総額は一気に膨らみます。
さらに面白いのが、コルベット博物館で自分のクルマを受け取る「Museum Delivery」で、こちらにも1,695ドルが必要です。
こうした装備を次々と追加した結果、Autoblogが作成したGrand Sport Xは13万ドル前後から18万6,138ドルまで上昇し、オプションだけで5万5,993ドル、1ドル=150円換算なら約840万円が追加された計算になります。
それでもZR1Xとは別世界
「18万6,138ドルなら、もうZR1Xを買った方がいいのではないか」と考えたくなりますが、ここには少し注意が必要です。
Chevrolet公式サイトでは、2027年型ZR1Xの現在のスタート価格は22万7,800ドルと案内されており、Grand Sport Xのフルオプション仕様との差額は約4万1,600ドルあります。
1ドル=150円なら約624万円ですから、Grand Sport Xをフル装備にしたからといって、本当にZR1Xと同価格になるわけではありません。
しかもZR1Xは、1,250PSという桁違いのシステム最高出力を誇り、0-60mph加速1.89秒、1/4マイル8.99秒というハイパーカー級の性能を持っています。
| モデル | 最高出力 | 0-60mph |
|---|---|---|
| Grand Sport X | 721PS | 2.4秒 |
| Z06 | 670PS | 2.6秒 |
| ZR1 | 1,064PS | 2.3秒 |
| ZR1X | 1,250PS | 1.89秒 |
したがって、Grand Sport XとZR1Xは価格が近づいたとしても、性能面では明確に異なるモデルです。
約2,800万円のGrand Sport Xに価値はあるのか
ここが今回もっとも興味深いところです。
コルベットの魅力は、フェラーリやランボルギーニ、ポルシェといった欧州の高性能車に匹敵するパフォーマンスを、比較的リーズナブルな価格で提供してきたことにあります。
Grand Sport Xも基本的にはその哲学を受け継いでおり、721PS、AWD、0-60mph加速2.4秒という性能を考えれば、標準状態でのコストパフォーマンスは依然として非常に高いと言えるでしょう。
しかし、約840万円分ものオプションを投入して総額約2,800万円まで引き上げてしまうと、話は変わります。
この価格帯になると、単純な性能だけではなく、ブランド、内外装の質感、希少性、リセールバリューなども含めて欧州製スポーツカーと比較されることになり、コルベット最大の武器だった「圧倒的な性能対価格比」が少しずつ薄れていきます。
むしろGrand Sport Xは、必要な装備だけを厳選して購入する方が、このクルマ本来の魅力を味わえるのかもしれません。
“庶民のスーパーカー”も選び方次第では超高級車に
C8世代でミッドシップ化したコルベットは、もはや欧州スーパーカーの代用品ではなく、それ自体が世界トップクラスのスポーツカーへと成長しました。
そしてGrand Sport Xは、6.7リッター自然吸気V8という現代では非常に貴重なエンジンに電動AWDを組み合わせ、日常性と圧倒的なパフォーマンスを両立した、現在のコルベットを象徴するモデルのひとつと言えます。
一方で、今回の18万6,138ドルという価格は、コルベットにも本格的な“オプション沼”が存在することを示しています。
ベースの完成度が高いだけに、Grand Sport Xはフルオプションにすることが必ずしも正解ではありません。むしろ装備を厳選し、価格を抑えながら721PSのパフォーマンスを楽しむことこそ、かつてから続く「コルベットらしい買い方」なのではないでしょうか。
参考・出典:Autoblog / Chevrolet / General Motors




