BMWは2026年9月30日、第8世代となる新型「3シリーズ」を発表しました。
半世紀以上にわたりBMWを代表するスポーツセダンとして進化を続けてきた3シリーズですが、今回のフルモデルチェンジでは、電気自動車の新型i3と共通する新世代デザインを採用しながら、ガソリンエンジン搭載車もしっかりと存続しています。
しかも単に内燃機関を残しただけではありません。M340i xDriveの後継となる「M350 xDrive」は、3.0リッター直列6気筒エンジンを大幅に強化し、最高出力は443PS相当まで向上。さらに3シリーズのM Performanceモデルとして初めて、四輪駆動車でありながら後輪だけに駆動力を送れる「Drift Moment」まで採用されました。
電動化の流れが加速するなかでも、BMWは3シリーズから「エンジンを積んだFRベースのスポーツセダン」という選択肢を消しませんでした。

新型3シリーズは「ノイエ・クラッセ」のデザインへ

新型3シリーズのエクステリアで最も大きな変化となるのが、BMWの次世代モデル群「ノイエ・クラッセ」と共通するデザイン言語の採用です。
フロントではキドニーグリルとヘッドライト、各種センサーを一体的に見せる構成となり、近年のBMWで見られた大型グリルとは異なる、低く横方向へ広がるフェイスへと変化しました。
一方で、ロングノーズや短いオーバーハング、後方へ配置されたキャビンなど、3シリーズらしいスポーツセダンのプロポーションは維持されています。ボディサイズ自体は先代よりわずかに拡大されているものの、SUV的な方向へ寄せるのではなく、あくまで低く構えたセダンとして仕上げられているのが特徴です。
また、M350 xDriveにはリアスポイラーと4本出しエキゾーストが標準装備されるほか、GTレーシングカーやBMW M Hybrid V8をイメージした「M Yellow Lights」もオプションとして用意されます。
M340iから「M350 xDrive」へ、最高出力は443PS相当に

新型3シリーズで特に注目したいのが、これまでのM340i xDriveに代わって登場するM350 xDriveです。
搭載されるのは3.0リッター直列6気筒ターボエンジンで、48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせます。トランスミッション内部にはスタータージェネレーターが組み込まれ、電気モーターだけでも最大17hpのアシストを行います。
| 項目 | BMW M350 xDrive |
|---|---|
| エンジン | 3.0L 直列6気筒ターボ |
| 電動化 | 48Vマイルドハイブリッド |
| 最高出力 | 約443PS |
| 最大トルク | 約580Nm |
| トランスミッション | 8速ステップトロニック・スポーツ |
| 駆動方式 | xDrive AWD |
| 0-60mph加速 | 3.9秒 |
| 最高速度 | 約250km/h(スポーツタイヤ装着時) |
先代M340i xDriveの最高出力が386hpだったのに対し、新型M350 xDriveでは437hpへと大幅に強化されました。日本で馴染みのあるPSへ換算すると約443PSとなり、もはや一昔前のM3に迫るどころか、世代によっては完全に上回る性能です。
それでもBMWは、このモデルをフルMモデルではなく「M Performance」として位置付けています。
3シリーズ初、「Drift Moment」で完全後輪駆動化

そしてM350 xDriveで非常に興味深いのが、新たに採用された「Drift Moment」です。
通常はBMWのインテリジェントAWDシステム「xDrive」によって四輪を駆動しますが、Drift Momentを選択するとフロントアクスルへの駆動力を切り離し、エンジンのパワーを後輪へ送ることが可能になります。
つまり、普段は高い安定性を持つAWDスポーツセダンとして使用しながら、クローズドコースなどではFRらしい挙動を楽しめるということです。
近年の高性能車では四輪駆動化が進んでいますが、BMWは速さや安定性だけを追求するのではなく、「後輪を駆動してクルマを操る楽しさ」も新しい3シリーズに残しました。
これは新型3シリーズの性格を象徴する装備と言えるでしょう。
330も存続、2.0リッター直4+48Vマイルドハイブリッド
もちろん、新型3シリーズはM350 xDriveだけではありません。
ガソリンモデルのエントリーには「330」と四輪駆動の「330 xDrive」が用意され、2.0リッター直列4気筒ターボエンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせます。
| 項目 | BMW 330 / 330 xDrive |
|---|---|
| エンジン | 2.0L 直列4気筒ターボ |
| 電動化 | 48Vマイルドハイブリッド |
| 最高出力 | 約259PS |
| 最大トルク | 約400Nm |
| トランスミッション | 8速ステップトロニック |
| 0-60mph加速 | 5.9秒 |
| 最高速度 | 約250km/h(スポーツタイヤ装着時) |
エンジンには最新世代のBMW TwinPower Turbo技術に加え、可変バルブ機構「Valvetronic」やミラーサイクルが採用されており、単純に従来型エンジンを継続するのではなく、効率改善も進められています。
さらに330では後輪駆動モデルが引き続き設定されるため、新型3シリーズでも「直列エンジン+FR」というBMW伝統のパッケージを選択できます。
内装は激変、メーターが消え「Panoramic Vision」を採用

新型3シリーズではインテリアも大きく変わりました。
最大の特徴は「BMW Panoramic iDrive」で、従来のステアリング奥に配置されていた一般的なメーターパネルは姿を消し、フロントウインドウ下部の横方向へ情報を投影する「BMW Panoramic Vision」がその役割を担います。
さらに中央にはドライバー側へわずかに傾けられた17.9インチの大型Central Displayを配置し、オプションとしてBMW 3D Head-Up Displayも選択可能です。
操作システムにはAndroid Open Source Projectをベースとする「BMW Operating System X」が採用され、Apple CarPlayとAndroid Autoのワイヤレス接続にも標準対応します。
またAmazon Alexa+を活用した生成AI技術も組み込まれ、従来より自然な音声対話によって車両機能やナビゲーション、エンターテインメントなどを操作できるようになります。
デザインだけを見ると非常に未来的になりましたが、センターコンソールにはパーキングブレーキやハザード、オーディオ音量などの物理操作系も残されており、すべてをタッチパネルへ集約したわけではありません。
アメリカでは約5万ドルから、M350は6万5,900ドル
米国で発表された車両価格は以下の通りです。なお、いずれも1,350ドルのデスティネーションチャージが別途必要となります。
| モデル | 米国ベース価格 |
|---|---|
| BMW 330 | 49,900ドル |
| BMW 330 xDrive | 51,900ドル |
| BMW M350 xDrive | 65,900ドル |
| BMW i3 50 xDrive | 61,500ドル |
興味深いのは、443PS相当の直列6気筒エンジンを搭載するM350 xDriveが、463hpを発生する電気自動車のi3 50 xDriveよりも高く設定されていることです。
ただし、これはあくまで米国仕様の価格であり、日本仕様のラインアップや価格については日本での正式発表を待つ必要があります。
EVのi3とガソリン3シリーズは似ていても中身は別物
今回のモデルチェンジで少し分かりにくいのが、ガソリン3シリーズと電気自動車のi3との関係です。
両車は同じ新世代3シリーズファミリーとして共通したデザインを採用していますが、その車両アーキテクチャは同一ではありません。
新型i3はBMWがEV向けに新開発した「Neue Klasse」アーキテクチャを採用する一方、内燃機関を搭載する3シリーズはガソリンエンジンに対応した異なる車両構造を採用しており、そのためホイールベースやオーバーハング、車体寸法にも違いがあります。
見た目は近づけながら、その下ではEVとエンジン車にそれぞれ適した設計を採用するというのが、今回の3シリーズにおけるBMWの考え方です。
電動化しても「3シリーズらしさ」は捨てなかった
新型3シリーズを見ると、BMWがかなり慎重に「新しさ」と「伝統」のバランスを取ったことが分かります。
デザインやインフォテインメントはノイエ・クラッセ世代へ一気に進化し、同じ3シリーズファミリーには本格的なEVであるi3も用意されました。
しかし、その一方でガソリンモデルには直列4気筒と直列6気筒を残し、330では後輪駆動を選択でき、M350 xDriveにはあえて完全な後輪駆動状態を作り出すDrift Momentまで与えています。
つまりBMWは、3シリーズを単純に「電動化時代のセダン」へ作り替えたのではなく、50年以上にわたって培ってきたスポーツセダンとしての性格を、新しい時代へどう持ち込むかを考えたように見えます。
特に443PS相当まで強化された直列6気筒のM350 xDriveは、電動化が進む2027年モデルの新型車としては、かなり異色の存在になるかもしれません。
EVのi3を本気で開発しながら、その隣に強力な直列6気筒エンジンを搭載した3シリーズも並べる――。
どちらか一方へ急激に舵を切るのではなく、ユーザーに選択肢を残すというBMWの姿勢が、今回の新型3シリーズには非常に色濃く表れています。
参考・出典:Motor1 / BMW Group




