ポルシェが、911よりも上位に位置する新たなミッドシップスーパーカーを検討している可能性が明らかになりました。
ポルシェは10月7日に開催したCapital Markets Dayで、2035年を見据えた新戦略「Sportwagenschmiede ’35」を発表。その中では、販売台数だけを追うのではなく、ブランド価値と収益性を重視した高付加価値モデルへ重点を移していく方針が示されています。
そして今回、特に気になるのが「911より上」の存在です。
MOTION & TIMEでは9月22日、ポルシェが社内で「S1」と呼ばれる新型ハイパーカーを検討しており、水平対向8気筒、いわゆる「フラット8」を搭載する可能性があるとお伝えしました。

当時の記事では、10月7日のCapital Markets Dayで新たな情報が出てくる可能性にも触れていましたが、実際にその日を迎え、ポルシェの将来計画から911を超える新たなミッドシップスポーツカーの存在が浮かび上がってきました。
もちろん、この新型車と「S1」が同じプロジェクトであることは確認されていません。それでも、これまで断片的に報じられてきた次世代フラッグシップ構想と今回の発表を重ね合わせると、918 Spyder以来となるポルシェ最高峰モデルへの期待は、以前よりも高まったと言えそうです。
ポルシェが発表した「Sportwagenschmiede ’35」
今回の発表を理解するうえで重要なのが、ポルシェの新戦略「Sportwagenschmiede ’35」です。
ポルシェは近年、中国市場の低迷やEV需要の変化、米国の関税など複数の問題に直面しており、2025年には利益が大幅に減少しました。
そのため現在は「Value over Volume(量より価値)」を重視し、単純に販売台数を拡大するのではなく、ポルシェだからこそ成立する高付加価値な商品を増やす方向へ戦略を修正しています。
これは単なるコスト削減策ではありません。
モデルラインアップの複雑化を抑えながら、911をはじめとするスポーツカーや高価格帯モデル、限定車、さらに顧客一人ひとりに合わせた特別仕様車などへ経営資源を集中させ、ブランド価値と収益性を同時に高めようという考え方です。
911より上に「ミッドシップスーパーカー」
その象徴となる可能性があるのが、今回浮上した新型ミッドシップスポーツカーです。
Car and Driverによれば、ポルシェの将来計画には、911より上位に位置する可能性を持ったミッドシップスーパーカーが含まれており、「Mission S」と呼ばれるコンセプトがその可能性を示す存在になるとされています。
911はポルシェの絶対的な中心モデルですが、歴史を振り返れば、959、Carrera GT、918 Spyderといった「911よりさらに上」のフラッグシップが存在してきました。
こうしたモデルは販売台数を稼ぐためのクルマではなく、その時代におけるポルシェの技術力や思想を示す役割を担っています。
918 Spyderの生産終了からすでに長い時間が経過したことを考えると、新たなフラッグシップを投入する意味は十分にあるでしょう。
9月に報じられた「S1」とつながるのか
ここで非常に興味深いのが、以前から報じられているコードネーム「S1」の存在です。
MOTION & TIMEでは9月22日、ポルシェが911をベースとしない独立したハイパーカー「S1」を検討している可能性について詳しくお伝えしました。
当時の報道では、S1は911とは異なる独自プラットフォームを採用し、価格は約50万ユーロからになる可能性があるとされていました。
さらに最大の注目点となったのが、水平対向8気筒「フラット8」の存在です。
ポルシェは過去に718 Caymanのシャシーへ5.0リッター水平対向8気筒ツインターボを搭載した試作車を開発しており、そのエンジンは約750hp、最大トルク約1,000Nm、最高回転数9,000rpmという非常に刺激的なスペックだったとされています。
今回明らかになった「911より上位」「ミッドシップ」という方向性は、少なくともS1を巡ってこれまで報じられてきた情報と無関係とは言い切れないほど興味深い一致を見せています。
「S1=今回の新型車」と断定するのはまだ早い
ただし、ここは慎重に見ておく必要があります。
現時点でポルシェが、今回示されたミッドシップスーパーカーとS1が同一プロジェクトだと認めたわけではありません。
さらに、フラット8の搭載についても正式発表された情報ではなく、S1そのものについても依然として報道段階の情報です。
つまり現状では、「S1に関する過去の情報」と「ポルシェが今回示した将来計画」の間に共通点が増えてきた、と捉えるのが適切でしょう。
とはいえ、9月時点では噂の色合いが強かったS1に対して、その後ポルシェ自身が911より上位のスポーツカーを検討する方向性を示したことは見逃せません。
もし両者が同じプロジェクトを指しているのであれば、S1という存在は一気に現実味を帯びてきます。
Mission XではなくMission S? 次期フラッグシップの方向性に変化

もうひとつ気になるのが「Mission X」との関係です。
ポルシェは2023年、次世代ハイパーカーを示唆するMission Xを発表しました。
Mission Xは完全電動ハイパーカーとして構想され、959、Carrera GT、918 Spyderに続く次世代フラッグシップになることが期待されていました。
しかし、その後の自動車市場は大きく変化しています。
ポルシェ自身もEV一辺倒ではなく、内燃機関やハイブリッドを含めた複数のパワートレインを長期的に展開する方向へ戦略を修正しており、今回の計画でもEVと内燃機関/ハイブリッドを組み合わせた商品構成が重視されています。
さらに今回、「Mission S」という新たなコンセプトがミッドシップスーパーカーの可能性を示す存在として浮上したことで、かつてMission Xが担うと思われていた次期フラッグシップ構想が、別の方向へ発展している可能性も考えられます。
もしフラット8なら、ポルシェらしい「別の答え」になる
現在のハイパーカー市場では、1,000PSを超えるハイブリッドやEVが珍しくなくなりました。
だからこそ、仮にポルシェがS1でフラット8を採用するのであれば、単純な最高出力競争とは違った意味を持つことになります。
高回転まで回る水平対向エンジン、低い重心、ミッドシップレイアウト、そして可能な限りドライバーを中心に据えた設計。
こうした方向性なら、電動化によって圧倒的な加速性能を追求するハイパーカーとは異なる「運転することそのものに価値があるフラッグシップ」を作ることもできます。
Carrera GTがV10、918 SpyderがV8+ハイブリッドという明確な個性を持っていたように、次世代モデルを象徴する技術が「フラット8」になれば、ポルシェの歴史に残る一台になるでしょう。
718はEV、911は内燃機関、そしてその上には?
一方、ポルシェのスポーツカーラインアップそのものも再構築されていきます。
718 Boxster/Caymanの後継モデルは電気自動車として2027年に登場する計画で、その上では911が引き続きブランドの中心を担います。
そして、そのさらに上に今回のミッドシップスーパーカーが加われば、「718 EV」「911」「次世代フラッグシップ」という明確な階層が生まれます。
すべてのモデルを同じパワートレインへ統一するのではなく、それぞれの役割に合わせてEV、内燃機関、ハイブリッドを使い分けるのであれば、現在の市場環境を考えても現実的な戦略と言えるでしょう。
ポルシェは再び「憧れ」を売るメーカーへ
今回の発表で個人的に最も興味深いのは、新型スーパーカーそのもの以上に、ポルシェが「何を売る会社なのか」を改めて明確にしようとしている点です。
カイエンやマカンによって販売台数を大きく伸ばし、タイカンでは電動化にも積極的に取り組んできましたが、ポルシェというブランドの根底にあるのは、やはりスポーツカーです。
今回の「Sportwagenschmiede ’35」では、高価格帯モデルだけでなく、Exclusive ManufakturやSonderwunschによる特別仕様車、さらにはCarrera GTのような過去の名車をメーカー自身が再生する取り組みまで拡大していく方針が示されています。
つまり、単純に多くのクルマを販売するのではなく、「ポルシェだから欲しい」と思わせる価値そのものを、もう一度強くしようとしているように見えます。
9月にS1の情報が報じられた時点では、フラット8を搭載した新型ハイパーカーという話にはまだ大きな「噂」の要素がありました。
しかし、その記事で注目していた10月7日を迎え、実際にポルシェから911より上のミッドシップスポーツカーにつながる新たな材料が出てきたことは非常に興味深い展開です。
S1と今回の計画は本当に同じクルマなのか。そして、9,000rpmまで回るフラット8という夢のようなエンジンが市販車として復活するのか。
まだ答えは出ていませんが、918 Spyder以来となる新たなフラッグシップへ向けて、これまで点だった情報が少しずつ線になり始めているのかもしれません。
参考・出典:Car and Driver / Porsche AG / MOTION & TIME




