ポルシェ944が美しいシューティングブレークに変身、価格は車両代別で約1,800万円

1980年代を代表するポルシェのフロントエンジンスポーツ「944」が、まるで当時のポルシェが密かに開発していたプロトタイプのような姿で蘇りました。

ドイツのポルシェスペシャリスト「Carpoint」が製作した「GT-K44」は、944のルーフを後方へ延長し、大型のテールゲートを組み合わせたシューティングブレークです。しかし、単純にリア部分をワゴン風に作り替えただけのカスタムカーではなく、ルーフやBピラー、リアクォーターパネルまで大幅に作り直す本格的なコーチビルドとなっています。

そして、その完成度と同じくらい驚かされるのが価格です。

コンバージョン費用は税別10万ユーロ。2026年9月30日時点で1ユーロ=約178円として換算すると、約1,780万円に達します。しかも、この金額にベースとなるポルシェ944の車両代は含まれていません。

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944を本格的なシューティングブレークへ

GT-K44で最も印象的なのは、やはりリアへ向かって長く伸びたルーフラインです。

オリジナルの944は大きなガラスハッチを備えていますが、GT-K44ではその特徴的なリアセクションを大幅に変更し、新しいルーフ構造と大型のリアサイドウインドウ、さらに専用のテールゲートを組み合わせています。

変更されるのは外板だけではありません。Bピラーやリアクォーターパネルにも手が加えられ、さらにリアライト周辺も新しいテールゲートに合わせて再設計されるなど、ボディ後半部分はほぼ全面的に作り直されています。

そのため1台を完成させるためには、ボディ製作や塗装を含めて数百時間もの作業が必要になるとされており、一般的なボディキットとはまったく異なる規模のプロジェクトです。

それでも完成したGT-K44から強引な改造車という印象をほとんど受けないのは、944本来のデザインを崩さず、その延長線上にシューティングブレークというボディを成立させているからでしょう。

原点は1980年代に存在した「924 Kombi」

GT-K44のアイデアは、完全に新しいものではありません。

そのルーツにあるのが、ドイツのコーチビルダー、ギュンター・アルツ(Günter Artz)が1980年代初頭に製作した「Porsche 924 Kombi」です。

Carpoint創業者のアンドレアス・フロイント氏は、かつてこの非常に珍しい924を数カ月にわたって実際に運転しており、その経験が数十年後のGT-K44へとつながりました。

ただしCarpointは924 Kombiをそのまま再現するのではなく、デザイナーのミヒャエル・ゼーンゲン氏とともに、よりワイドで力強いボディを持つ944をベースとしてコンセプトそのものを再構築しています。

つまりGT-K44は、1980年代の珍しいコーチビルドを現代にコピーしたモデルというより、その思想を受け継いだ新しい解釈といえるでしょう。

第1号車は944 S2、3.0L自然吸気で211PS

最初に完成したGT-K44のベースとなったのは「ポルシェ944 S2」です。

項目GT-K44 第1号車
ベース車両Porsche 944 S2
エンジン3.0L 直列4気筒 自然吸気
最高出力211PS
ボディシューティングブレーク
ボディカラーオークグリーン
インテリアパシャ柄
コンバージョン価格10万ユーロ(税別)
ドイツ国内価格11万9,000ユーロ(税込)
ベース車両代含まれない

オークグリーンのボディとクラシカルなパシャ柄のインテリアという組み合わせも絶妙で、現代的なレストモッドというより、1980〜90年代のポルシェが実際に少量生産していたモデルのような雰囲気に仕上げられています。

もちろんS2だけが対象ではなく、Carpointでは944 Turboもベース車両として推奨しており、220PS仕様や250PS仕様からGT-K44を製作することも可能です。

マニュアル車とオートマチック車の双方に対応するものの、コンバージョンと同時にトランスミッション形式を変更することはなく、ベース車両がもともと備えている仕様を引き継ぐ形となります。

約1,800万円、それでもベース車両は別料金

そしてGT-K44最大のハードルとなるのが価格でしょう。

Carpointが設定する基本的なコンバージョン費用は税別10万ユーロで、ドイツの19%VATを含めると11万9,000ユーロとなります。

2026年9月30日時点の為替レートを参考にすると、税別価格だけでも日本円で約1,780万円、ドイツ国内の税込価格では約2,120万円という計算です。

しかも、この価格には944そのものが含まれていません。

オーナーがベース車両を用意する必要があり、さらにホイールやサスペンション、エキゾースト、インテリアなどを個別に変更すれば、その費用も追加されます。

一見すると非常に高額ですが、ルーフやピラーを含めてボディ構造そのものを変更し、専用のテールゲートやガラス、内装まで仕立て直したうえで、数百時間をかけて1台ずつ製作されることを考えれば、一般的なカスタムカーとは価格の考え方そのものが異なります。

わずか10台の限定製作

GT-K44は大量生産されるモデルではなく、製作予定台数はわずか10台です。

それぞれの車両はオーナーの希望に合わせて仕立てられ、Carpointではベースとなる944の選定についても相談に応じるとしています。

944は長い間、911と比較すれば比較的手の届きやすいクラシックポルシェとして扱われてきました。しかし、そんな944に車両価格をはるかに上回る可能性がある費用を投じ、わずか10台のコーチビルドモデルを製作するというGT-K44の存在は、944を取り巻く評価そのものが変化していることを象徴しているようにも感じられます。

「存在しなかった純正モデル」のような完成度

GT-K44の魅力は、単に希少で高価な944というだけではありません。

944がもともと持っていた長いノーズと低いウエストライン、張り出したリアフェンダーを残しながらルーフを後方へ伸ばしたことで、スポーツカーらしいプロポーションとシューティングブレークの実用性が非常に自然に融合しています。

とりわけ興味深いのは、「ポルシェが944シューティングブレークを当時市販していた」と言われても、それほど違和感を覚えないことでしょう。

約1,800万円というコンバージョン価格だけを見れば決して安いクルマではありませんが、既存の944を単にレストアするのではなく、歴史上存在しなかったもうひとつの944を現代に生み出すという意味では、GT-K44は非常にユニークなプロジェクトです。

911とは異なる道を歩んだフロントエンジン・トランスアクスル時代のポルシェだからこそ、このロングルーフが驚くほど自然に似合っているのかもしれません。

参考・出典:Carscoops / Carpoint

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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