BMWは2026年10月7日、SUVクーペ「X4」の後継モデルとなる新型「iX4」を正式発表しました。
従来のX4は2025年に生産を終了しましたが、今回登場したiX4は、BMWの次世代EVプラットフォーム「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」を採用した完全電気自動車として復活を果たします。
最大の特徴は、米国仕様で約689kmという長い航続距離と、最大612PSに達する高性能な電動パワートレインです。さらに、最大400kWの急速充電や新世代のデジタルコックピットも採用されており、BMWが次世代EVに求める性能と技術を凝縮したモデルとなっています。
生産終了したX4が電気自動車として復活

BMW X4は、X3をベースにクーペのような流麗なルーフラインを組み合わせたSUVとして登場し、実用性とスポーティーなデザインを両立するモデルとして独自の市場を築いてきました。
しかし、2025年に従来型X4の生産が終了したことで、その後継モデルがどのような形で登場するのか注目されていました。
今回発表されたiX4は、従来のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載するモデルではなく、電気自動車専用の新世代アーキテクチャを採用しています。
ベースとなるのは新型iX3で、フロント部分には共通するデザイン要素が見られるものの、後方に向かってなだらかに下降するルーフラインによって、従来のX4が持っていたSUVクーペらしい個性を継承しています。
また、空気抵抗係数はCd値0.23を実現しており、iX3の0.24をわずかに下回ります。こうした空力性能の向上は、高速走行時の電力消費を抑えるうえでも重要な要素です。
航続距離は最大689km、欧州仕様では828kmに到達

新型iX4の中心となる「50 xDrive」には、前後に電気モーターを配置した四輪駆動システムが採用され、米国仕様では最高出力約469PS、最大トルク645Nmを発揮します。
0-96km/h加速は4.7秒と発表されており、SUVとしての実用性を確保しながら、スポーツカーに匹敵する加速性能を備えています。
さらに注目したいのが航続距離で、米国仕様ではEPA方式に基づくBMWの暫定推定値として最大428マイル(約689km)、欧州仕様ではWLTP方式で最大828kmとされています。
両者の数値には大きな違いがありますが、これは主に測定方法の違いによるものであり、欧州仕様だけが特別に大容量のバッテリーを搭載しているわけではありません。
新型BMW iX4の主要スペック
| 項目 | iX4 50 xDrive | iX4 M60 xDrive |
|---|---|---|
| 駆動方式 | 電動4WD | 電動4WD |
| 最高出力 | 469PS | 612PS |
| 最大トルク | 645Nm | 875Nm |
| 0-100km/h加速 | 約4.9秒 | 約3.9秒 |
| 最高速度 | 210km/h | 240km/h |
| 航続距離(WLTP) | 最大828km | 最大777km |
| 急速充電最大出力 | 400kW | 400kW |
| 電気アーキテクチャ | 800V | 800V |
※出力・加速性能・航続距離は欧州仕様の公表値を基本としています。航続距離など一部の数値は暫定値です。
10分間の充電で約296km走行可能に

新型iX4には、BMWが開発した第6世代の高電圧バッテリー技術が採用されています。
従来の角形セルから新しい円筒形セルへと変更することで、エネルギー密度を向上させるとともに、800Vの高電圧アーキテクチャによって充電性能も大幅に強化されました。
最大400kWに対応する急速充電設備を利用した場合、理想的な条件下ではわずか10分間で最大184マイル(約296km)分の航続距離を回復でき、バッテリー残量10%から80%までの充電も約21分で完了するとされています。
もちろん、実際の充電速度は設備の出力やバッテリー温度などによって変動しますが、これほどの充電性能が一般的になれば、長距離移動におけるEVの利便性は大きく改善することになります。
特に高速道路を利用した長距離移動では、航続距離の長さだけでなく、短時間でどれだけ走行可能距離を回復できるかが重要です。その点において、iX4は従来のEVが抱えていた課題に対するBMWの回答ともいえるでしょう。
高性能モデル「M60」は最高出力612PS

新型iX4には、標準モデルの50 xDriveに加え、より高い走行性能を追求した「M60 xDrive」も設定されます。
M60の最高出力は612PS、最大トルクは875Nmに達し、0-100km/h加速はわずか3.9秒と、従来のX4 Mを上回る動力性能を実現しています。
さらに、アダプティブMサスペンションや電子制御式Mスポーツディファレンシャルを採用することで、単純な加速性能だけではなく、コーナリング時の安定性や駆動力の制御にも重点が置かれています。
M60には専用のドライブモードやブースト機能も用意されており、BMWが長年培ってきたスポーティーな走行感覚を、電動パワートレインによって再現することが狙いです。
ただし、M60はBMW Mの高性能技術を取り入れたMパフォーマンスモデルであり、従来のX4 Mと完全に同じ位置付けではありません。
それでも、電動化によって従来の高性能ガソリンモデルを超える出力を実現したことは、BMWのスポーツSUVにとって大きな転換点となりそうです。
インテリアには次世代Panoramic iDriveを採用

インテリアには、新型iX3などと共通する「BMW Panoramic iDrive」が採用されています。
従来のメーターパネルとは異なり、フロントガラス下部の広い範囲に走行情報を投影する「Panoramic Vision」を備えることで、ドライバーが視線を大きく移動させることなく必要な情報を確認できるようになりました。
中央には17.9インチの大型ディスプレイが配置され、BMW Operating System Xによってナビゲーションや車両設定、エンターテインメント機能などを統合しています。
また、車両制御には新世代の「Heart of Joy」システムが採用され、駆動力やブレーキなどの制御を高速化することで、より自然で一体感のある運転感覚を追求しています。
こうした技術は単なるデジタル装備の充実にとどまらず、電気自動車であってもドライバーが運転する楽しさを感じられるようにするための取り組みと考えられます。
価格は約993万円から、日本導入にも期待

米国市場における新型iX4 50 xDriveの価格は、66,200ドルからと発表されています。
仮に1ドル=150円で換算すると約993万円となり、同市場で61,500ドルから販売されるiX3よりも高い価格設定です。
| モデル | 米国価格 | 日本円換算 |
|---|---|---|
| BMW iX3 | 61,500ドル~ | 約923万円~ |
| BMW iX4 50 xDrive | 66,200ドル~ | 約993万円~ |
| BMW iX4 M60 xDrive | 未発表 | 未定 |
※日本円は比較用に1ドル=150円で換算した概算です。米国価格は税金や配送関連費用を含まないため、日本国内での販売価格を示すものではありません。
米国では2027年3月に50 xDriveが発売され、その後にM60 xDriveが追加される予定です。
日本市場への導入時期や価格については現時点で正式発表されていませんが、BMWのSUVクーペは国内でも一定の需要があることから、今後の展開が注目されます。
BMWは電動化でも「走る楽しさ」を維持できるのか
今回のiX4で興味深いのは、BMWが電気自動車の性能を航続距離や充電速度だけで評価していない点です。
近年のEV市場では、中国メーカーを中心に高性能かつ価格競争力の高いモデルが次々と登場しており、欧州のプレミアムブランドは技術面だけでなく、ブランドとしての独自性を維持することも求められています。
そのような状況においてBMWは、ノイエ・クラッセを通じて電動化技術を進化させながら、従来から大切にしてきたドライビングプレジャーを維持しようとしています。
iX4もその戦略を象徴するモデルであり、長い航続距離や優れた充電性能を備えつつ、SUVクーペらしいデザインと高い運動性能を組み合わせることで、単なる移動手段以上の価値を提供しようとしているのでしょう。
一方で、約1,000万円に迫る価格帯では、ポルシェ・マカン エレクトリックやアウディQ6 Sportback e-tronなど、魅力的な競合車種も存在します。
EVとしての合理性だけでなく、デザインやブランド、運転感覚まで含めて購入を検討する顧客に対し、BMWがどこまで独自の魅力を示せるのかが重要になります。
内燃機関を搭載したX4の生産終了は、一つの時代の終わりを感じさせる出来事でした。しかし、今回のiX4はその名前とコンセプトを受け継ぎながら、新しい時代に向けたBMWの方向性を明確に示しています。
電気自動車になってもBMWらしい走りの楽しさを実現できるのか。その真価は、2027年の市場投入後に明らかになるでしょう。
参考・出典:BMW Group公式発表 / BMW Group PressClub USA / Autoblog / Car and Driver / BMWBLOG



