BMWは2026年10月7日、新世代EVプラットフォーム「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」を採用した電動SUV「iX3」に、ハイパフォーマンスモデルとなる「iX3 M60 xDrive」を追加すると発表しました。
前後に搭載された2基の電気モーターは、システム最高出力612PS、最大トルク875Nmを発生し、0-100km/h加速はわずか3.9秒に到達します。さらに、最大754kmの航続距離と400kWの急速充電性能を確保しており、圧倒的な加速性能と日常的な使いやすさを高い次元で両立させています。
注目したいのは、BMWが単純なモーター出力の引き上げにとどまらず、専用の車両制御システムや足回りの改良によって、電動SUVにBMW Mならではの走行感覚を与えようとしている点です。
最高出力612PSは従来のX3 M Competitionを上回る

新型iX3 M60 xDriveには、BMWの第6世代電動パワートレイン「Gen6 M eDrive」が採用されています。
前後の車軸にそれぞれモーターを配置する電動四輪駆動方式を採用しており、リアには高出力化に対応した新開発の電気励磁式同期モーターを搭載。インバーターの電流容量を従来の300Aから420Aへ引き上げることで、最高出力だけでなく継続的な出力性能も強化しています。
その結果、従来のガソリンエンジン搭載モデル「X3 M Competition」を上回るパワーを獲得しながら、最高速度240km/h、0-100km/h加速3.9秒というスポーツカーに匹敵する性能を実現しました。
BMW iX3 M60 xDrive主要スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| パワートレイン | 前後2モーター |
| 駆動方式 | 電動四輪駆動(xDrive) |
| 最高出力 | 612PS |
| 最大トルク | 875Nm |
| 0-100km/h加速 | 3.9秒 |
| 最高速度 | 240km/h |
| バッテリー容量 | 108.7kWh(使用可能容量) |
| 航続距離 | 最大754km(WLTP) |
| 最大急速充電出力 | 400kW |
| 10分間の充電による航続距離回復 | 最大340km |
| 全長 | 4,782mm |
| 全幅 | 1,895mm |
| 全高 | 1,635mm |
| ホイールベース | 2,897mm |
※数値はBMW発表の暫定値であり、正式認証値や市場別仕様によって変更される可能性があります。
「Heart of Joy」が実現する新しいBMW Mの走り

今回のiX3 M60 xDriveで特に重要なのが、BMWが開発した高性能制御コンピューター「Heart of Joy」です。
このシステムは、駆動力、ブレーキ、ステアリング、エネルギー回生などを統合的に制御するもので、従来システムと比較して最大10倍の処理速度を実現するとBMWは説明しています。
さらに、M専用の「BMW M Dynamic Performance Control」と組み合わせることで、ドライバーの操作に対する車両の反応を緻密に調整し、コーナリング中の姿勢変化やトラクション性能を高めています。
電気モーターは瞬時に大きなトルクを発生できる反面、出力特性が均一になりやすく、内燃機関のような回転数の上昇に伴う感覚的な変化を表現することが難しいという側面があります。
BMWはこの課題に対し、ステアリングのパドル操作によってモーターの応答特性を変化させる仕組みや、車速に応じて変化する専用サウンドを導入しました。
つまり、iX3 M60 xDriveが目指しているのは、単に速いEVではなく、ドライバーが車両を操っている感覚を楽しめるEVなのです。
アダプティブMサスペンションと電子制御デファレンシャルを標準装備
足回りにも、通常のiX3とは異なる専用装備が数多く採用されています。
電子制御ダンパーを備えたアダプティブMサスペンションに加え、可変ギア比のスポーツステアリング、リアの電子制御Mスポーツデファレンシャルを標準装備。さらに、フロントの補強部材や専用スタビライザーリンクによって車体剛性と操舵精度を高めています。
走行モードには専用の「M Sport」と「M Sport Plus」が用意され、選択したモードに応じて駆動力の応答、ステアリング、サスペンションの特性が変化します。
また、減速時には回生ブレーキを積極的に利用することで、日常走行の大部分を機械式ブレーキに頼らずに減速できる設計となっています。
BMWが「Soft Stop」と呼ぶ停止制御も採用されており、スポーティな走りだけでなく、同乗者が不快に感じやすい停止直前の揺れを抑えることにも配慮されています。
最大754kmの航続距離と400kW急速充電を実現
高性能EVでは、モーター出力を高めるほど電力消費や航続距離への影響が懸念されますが、iX3 M60 xDriveは最大754kmというWLTP航続距離を確保しています。
バッテリーには使用可能容量108.7kWhの高電圧パックを搭載し、800V電気アーキテクチャーと組み合わせることで、最大400kWのDC急速充電に対応します。
理想的な充電条件では、わずか10分間で最大340km相当の航続距離を回復できるため、長距離移動における充電時間の短縮も期待できます。
ただし、400kWという充電出力は対応する設備と適切なバッテリー温度などの条件が必要であり、日本国内の一般的な急速充電器で同じ性能を発揮できるわけではありません。
それでも、600PSを超える高性能SUVがこれほどの航続距離を実現したことは、EV技術が新たな段階に入りつつあることを示しているといえるでしょう。
Mイエローライトを採用した専用エクステリア
エクステリアには、BMWのモータースポーツ活動から着想を得た専用デザインが採用されています。
特に印象的なのが、耐久レースに参戦する「BMW M Hybrid V8」をモチーフとした「M Yellow Lights」です。市場によって使用条件は異なるものの、イエローの発光シグネチャーによって、通常のiX3とは明確に異なる存在感を演出しています。
フロントのキドニーグリル周辺にはMカラーをイメージした3本のライトエレメントが配置され、ブラック仕上げのM専用ミラーや大型ホイール、リアディフューザー風のデザインとともに、スポーティな印象を強めています。
標準ホイールは21インチで、オプションとして22インチも選択可能。リアには専用ルーフスポイラーが装着され、空力性能にも配慮されています。
インテリアにはパノラミックiDriveと専用Mデザインを採用

室内には、ノイエ・クラッセ世代のBMWが採用する「Panoramic iDrive」が搭載されています。
フロントウインドウ下部に横長の情報表示エリアを配置し、中央の大型タッチディスプレイと組み合わせることで、ドライバーが必要な情報を自然に把握できる設計となっています。
M60専用のステアリングホイールには赤いセンターマーカーが備わり、M専用グラフィックやスポーツシートによって、通常モデルとの差別化も図られています。
標準インテリアにはVeganzaとM PerformTexを組み合わせたブラック基調の仕様が用意され、オプションではメリノレザーを採用したBMW Individual仕様も選択できます。
2027年春から生産開始、日本導入は未発表
BMW iX3 M60 xDriveは、2027年1月末から受注を開始し、同年春よりハンガリーのデブレツェン工場で生産される予定です。
現時点で日本市場への導入時期や国内販売価格は発表されておらず、今後のBMWジャパンからの案内が待たれます。
BMW Mは電動化時代にも「駆けぬける歓び」を守れるのか
BMW iX3 M60 xDriveの登場は、同社の高性能モデルが本格的に電動化へ進んでいることを象徴しています。
612PSという最高出力や3.9秒の加速性能は確かに魅力的ですが、現在の高性能EV市場では、これらの数字だけで競合モデルに対する優位性を築くことは容易ではありません。
むしろ重要なのは、BMWが長年培ってきたハンドリング性能や、ドライバーと車両の一体感を、電気モーターと高度な電子制御によってどこまで再現できるかという点でしょう。
従来のBMW Mが持っていたエンジンの回転フィールやサウンドは、電動化によって大きく変化します。しかし、操作に対する正確な応答やコーナリング時の自然な挙動、そして意のままに車を操る楽しさは、必ずしも内燃機関だけの特権ではありません。
iX3 M60 xDriveがその答えを示すことができれば、BMW Mの魅力はパワートレインの種類を超えて受け継がれていくはずです。
参考・出典:BMW Group PressClub



