ポルシェが、911をも超える新たなフラッグシップモデルの開発を進めている可能性が浮上しました。
ドイツ紙Handelsblattの情報をもとにAutoblogなどが報じたところによると、ポルシェは社内で「S1」と呼ばれる新型ハイパーカーを検討しており、その心臓部には非常に珍しい水平対向8気筒(フラット8)エンジンが採用される可能性があるといいます。
これまで次期フラッグシップについては、フォルクスワーゲングループ内のアウディやランボルギーニの技術を活用する可能性も報じられていましたが、今回の情報が事実なら、ポルシェはより独自性の高い道を選ぶことになります。
コードネーム「S1」、911とは別物のハイパーカーか

報道によると、S1は911をベースにした高性能仕様ではなく、独立したプラットフォームを持つハイパーカーになる可能性があります。
さらに興味深いのが、10月7日に予定されているポルシェのCapital Markets Dayで、投資家に向けて何らかの形で披露される可能性があるという点です。
予想価格は約50万ユーロからとされ、単純換算でもかなり高額なモデルになりますが、このクラスでは価格以上に「どのような技術を投入するのか」が重要になります。
そして、その最大の注目点がフラット8です。
ポルシェが過去に開発していた「5.0Lフラット8」

実はポルシェにとって、水平対向8気筒エンジンというアイデア自体は初めてではありません。
過去には718 Caymanのシャシーへ、5.0L水平対向8気筒ツインターボエンジンを搭載する試作車が存在していたことが明らかになっています。
そのスペックは驚くべきものでした。
| 項目 | 過去に開発されたフラット8試作エンジン |
|---|---|
| エンジン | 5.0L 水平対向8気筒 |
| 過給方式 | ツインターボ |
| 最高出力 | 約750hp |
| 最大トルク | 約1,000Nm |
| 最高回転数 | 9,000rpm |
| 駆動方式 | 後輪駆動 |
| トランスミッション | マニュアル |
718 Caymanという比較的コンパクトな車体に、このエンジンとマニュアルトランスミッションを組み合わせていたというだけでも非常に刺激的ですが、当時は市販化に至りませんでした。
しかし現在のポルシェが、この構想をハイパーカーとして復活させるのであれば話は大きく変わってきます。
まさかの「後輪駆動+MT」も?
今回のS1について、具体的なパワートレイン構成はまだ明らかになっていません。
過去のフラット8試作車が後輪駆動+マニュアルだったことから、Autoblogは新型ハイパーカーでも同様の方向性を想像していますが、これは現時点で確認された仕様ではありません。
それでも、近年のハイパーカーが1,000psを大きく超える電動化パワートレインや四輪駆動へ向かうなか、もしポルシェが高回転型フラット8と後輪駆動、さらにMTという組み合わせを実現すれば、単純な最高出力競争とはまったく異なる存在になるでしょう。
最高速や0-100km/h加速だけではなく、エンジン音やレスポンス、シフト操作など「運転することそのもの」を中心に据えたハイパーカーになる可能性があります。
アウディ/ランボルギーニとの共有案から一転?
少し前まで、ポルシェの次期フラッグシップには別のシナリオも報じられていました。
それが、アウディの新型スーパーカー「Nuvolari」に関連する技術を利用するというものです。
Nuvolariはランボルギーニ Temerarioとの技術共有が噂されるモデルで、約1,001hpを発生すると報じられていました。ポルシェがこのプラットフォームを利用すれば、開発コストを抑えながら新型スーパーカーを投入できるという考え方です。
しかし今回の情報では、ポルシェはそうしたグループ内の技術共有とは異なり、独自プラットフォームとフラット8によるS1を開発している可能性が示されています。
これが事実なら、S1は単なるグループ内の兄弟車ではなく、ポルシェ独自の技術を象徴する特別な一台になりそうです。
919 Streetの思想が復活する可能性も
もうひとつ思い出されるのが「Porsche 919 Street」です。
919 Streetは、ル・マン24時間レースを制した919 Hybridの技術やデザインを公道へ持ち込むことを狙ったプロジェクトで、実物大のクレイモデルまで製作されましたが市販化には至りませんでした。
その後ポルシェは963をベースにした「963 RSP」を製作しており、レーシングカーとロードカーの境界を近づける試みを続けています。
S1が919 Streetや963の思想をどこまで受け継ぐのかは不明ですが、911とは完全に切り離された専用ハイパーカーになるのであれば、モータースポーツ由来の技術が投入される可能性にも注目したいところです。
Mission Xとはどうなる?
ポルシェは2023年に、次世代ハイパーカーを示唆する「Mission X」を発表しています。
Mission Xは電動ハイパーカーとして構想されていましたが、その後ポルシェは内燃機関やハイブリッドモデルの展開を長期化する方向へ戦略を修正しており、2026年にはCEOのMichael Leiters氏も911より上位に位置するモデルを検討していることを示唆しています。
つまりS1が実現する場合、Mission Xをそのまま市販化するのではなく、現在の市場環境に合わせて内燃機関を中心とした別のアプローチへ変化している可能性も考えられます。
918 Spyder以来のフラッグシップとなるか
ポルシェの歴代フラッグシップを振り返ると、その時代ごとにブランドを象徴する技術が投入されてきました。
959では先進的な四輪駆動技術、Carrera GTではモータースポーツ由来のV10、918 SpyderではV8と電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムが採用されています。
そして次の一台が「フラット8」になるとすれば、これもまたポルシェらしい選択と言えるでしょう。
現在のところS1やフラット8搭載についてポルシェから正式な発表はなく、あくまで報道段階の情報です。
それでも、911より上位に位置する新たなフラッグシップモデルをポルシェ自身が検討していることはすでに明らかになっており、10月7日のCapital Markets Dayで新たな情報が出てくるのか注目されます。
918 Spyderの登場から長い時間が経った今、ポルシェが次の時代を象徴するハイパーカーとしてどのような答えを出すのか。そしてそれが本当に9,000rpmまで回るフラット8を積んで登場するのか、期待せずにはいられません。
参考・出典:Autoblog / Porsche




