フェラーリが「トリプルチャージド」エンジンを開発?新特許が示す次世代ICE

電動化が急速に進む自動車業界ですが、フェラーリは内燃機関の可能性をまだ諦めていないようです。

新たに公開された特許から明らかになったのは、大型ターボチャージャー1基と2基の電動コンプレッサーを組み合わせるという非常にユニークな過給システムで、低回転域でのレスポンスと高回転域での大出力という、ターボエンジンが長年抱えてきた相反する課題を解決しようとしています。

単純にターボを3基搭載する「トリプルターボ」とは異なり、それぞれの過給機に明確な役割を持たせていることが、このシステム最大のポイントです。

目次

フェラーリが新たな過給システムを特許出願

今回明らかになった特許は「Engine assembly for a motor vehicle and control method thereof(自動車用エンジンアセンブリおよびその制御方法)」と呼ばれるもので、米国では「US20260266230A1」として2026年9月10日に公開されています。

優先日は2024年9月18日、米国での出願日は2025年9月12日となっており、発明者としてSilvio Rabbolini氏の名前が記載されています。

項目内容
特許公開番号US20260266230A1
出願者Ferrari S.p.A.
優先日2024年9月18日
米国出願日2025年9月12日
公開日2026年9月10日
主な構成大型ターボ1基+電動コンプレッサー2基
主な狙い低回転レスポンスと高回転時の大流量を両立

一般的なターボエンジンでは、大型ターボを採用すると大量の空気を送り込めるため最高出力を高めやすい一方、低回転域では十分な排気エネルギーが得られず、過給圧が立ち上がるまでに時間がかかります。

反対に小型ターボはレスポンスに優れるものの、高回転域で必要となる空気量には限界があります。

フェラーリの新しいアイデアは、この問題を電動コンプレッサーによって解決しようというものです。

低回転では2基の電動コンプレッサーが活躍

このシステムで特に興味深いのが、低回転域を担当する2基のコンプレッサーです。

一般的なターボチャージャーのように排気ガスによって駆動するのではなく、電気モーターによってコンプレッサーを直接回転させるため、エンジン回転数や排気量が少ない状況でも素早く過給を開始できます。

アクセルを踏んだ瞬間から必要な空気をエンジンへ送り込み、大型ターボが本格的に仕事を始めるまでの領域をカバーすることで、いわゆる「ターボラグ」を大幅に抑えられる可能性があります。

特にフェラーリのようにアクセル操作に対するレスポンスが重要なスポーツカーでは、大きなメリットとなるでしょう。

高回転では大型ターボ1基が主役になる

エンジン回転数が上昇して排気エネルギーが十分になると、今度は大型ターボチャージャーが主役になります。

大型ターボは高回転域で大量の空気をエンジンへ供給できるため、大きな最高出力を狙うことが可能で、その段階では電動コンプレッサーをバイパスし、より効率的な吸気経路へ切り替える仕組みが想定されています。

つまり、

低回転域 → 2基の電動コンプレッサー

高回転域 → 1基の大型ターボチャージャー

という役割分担です。

さらに電動コンプレッサーを完全に停止させるのではなく、必要に応じて回転状態を維持する制御も想定されており、エンジン回転数が低下した際には再び素早く過給を補助できる可能性があります。

「トリプルターボ」とは少し違う

「3つの過給機」と聞くと、ターボチャージャーを3基搭載したエンジンを想像するかもしれませんが、今回のシステムは少し異なります。

排気ガスによって駆動される一般的なターボチャージャーは1基で、残りの2基は電動モーターによってコンプレッサーを駆動します。

そのため厳密には「トリプルターボ」というより、3つの過給装置を組み合わせた「トリプルチャージド」と表現する方が近いでしょう。

単純にターボの数を増やして出力を高めるのではなく、それぞれの得意な回転域を使い分けることでレスポンスと最高出力を両立させようとしている点が、この特許の面白さです。

フェラーリはすでに電動ターボ技術を実用化

もっとも、フェラーリにとって電気とターボチャージャーを組み合わせる考え方そのものは新しいものではありません。

F80に搭載される3.0リッター120度V6「F163CF」はエンジン単体で900cvを発生し、フロントの電動アクスルとリアMGU-Kを組み合わせてシステム全体では1,200cvを実現しています。

F80にはF1由来の技術も投入されており、排気エネルギーを利用するMGU-Hの考え方を応用した専用eターボシステムが採用されています。

つまりフェラーリはすでに、電気の力を利用してターボエンジンの性能を引き出す技術を市販車へ投入しているのです。

今回の特許は、その考え方をさらに発展させる研究のひとつと見ることもできます。

内燃機関の進化はまだ終わらない

電動化というと、エンジンをモーターへ置き換えることばかりが注目されがちですが、フェラーリの技術開発を見ると少し違った方向性も見えてきます。

電気モーターを車輪の駆動だけではなく、内燃機関そのものの弱点を補うために利用するという考え方です。

大型ターボによる圧倒的な高回転性能を残しながら、低回転域では電動コンプレッサーによってレスポンスを補うことができれば、大排気量自然吸気エンジンに近い鋭い反応と、現代のターボエンジンならではの大出力を両立できる可能性があります。

もちろん特許が公開されたからといって、このシステムがそのまま次期フェラーリに搭載されるとは限りません。

しかしF80でも高度な電動過給技術を実用化していることを考えると、フェラーリが電動化と内燃機関を対立するものとしてではなく、互いの長所を引き出す技術として研究していることは非常に興味深いところです。

将来フェラーリのエンジンルームに「大型ターボ1基+電動コンプレッサー2基」という独創的なシステムが収まる日は来るのでしょうか。

内燃機関の時代は終わりに向かっているのではなく、電気の力を借りながら新たな進化を始めているのかもしれません。

参考・出典:CarBuzz / US Patent / Ferrari

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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