Audi A4 e-tronが2029年へ延期、BMWとメルセデスに「3年」の先行を許す

Audiが投入を計画している次世代EV「A4 e-tron」の登場が、当初の予定より遅れる見通しとなりました。

A4 e-tronはBMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスに相当する重要なミドルクラスEVとして期待されていますが、最新の報道では生産開始が2029年3月以降になるとされています。

当初は2028年半ばの生産開始が想定されていたため約9カ月の延期となりますが、問題は単純な「9カ月」という数字だけではありません。

BMWとメルセデス・ベンツはすでに次世代の電動ミドルクラスへ動き始めており、Audiが本格参戦する頃にはライバルが約3年間の経験を積んでいる可能性があります。

目次

原因はA4ではなく「SSP」にある

今回の延期に大きく関係しているとされるのが、Volkswagen Groupが開発している次世代EVプラットフォーム「SSP(Scalable Systems Platform)」です。

SSPは将来的にグループ内の幅広いEVをカバーする非常に重要なアーキテクチャで、現在VolkswagenのEVで使われているMEBや、Audi A6 e-tron、Q6 e-tronなどが採用するPPEの先を担う存在として開発されています。

しかしSSPでは技術的な問題に加えてグループ内での調整、コスト削減など複数の要因が重なり、開発スケジュールそのものが後ろ倒しになっていると報じられています。

当初Volkswagenは2026年にもSSP採用車を市場投入する構想を示していましたが、A4 e-tronが2029年となれば、当初計画から約3年遅れることになります。

12Vから48Vへの変更も影響か

SSPをめぐっては、車両の電気システムを従来想定していた12Vから48Vへ変更することも開発に影響したと報じられています。

一見すると単純な電圧変更に思えますが、車両全体の電子部品や制御システムだけでなく、部品を供給するサプライヤー側にも対応が必要となるため、巨大な自動車グループでは非常に大きな変更になります。

さらにVolkswagen GroupはSSPについて、当初想定していた8種類のバリエーションを4種類へ集約したとも報じられており、次世代EV戦略そのものを整理しながら開発を進めている状況が見えてきます。

BMWとメルセデスはすでに先へ

Audiにとって気になるのは、最大のライバルであるBMWとメルセデス・ベンツの動きです。

BMWはNeue Klasse(ノイエ・クラッセ)を軸とした次世代EV戦略を進めており、電動セダンのi3もこの新世代アーキテクチャを採用します。

一方のメルセデス・ベンツも電動Cクラスを展開し、プレミアムミドルクラスのEV市場へ本格的に参入します。

つまりA4 e-tronが2029年に登場する頃には、BMWとメルセデスはすでに数年間にわたって次世代EVを販売している可能性があります。

Audiにとっては単純に販売台数を奪われるだけではなく、その間にライバルが実際のユーザーから大量の走行データやフィードバックを集め、ソフトウェアや充電性能、電費などを改良できることも無視できません。

A4はEVとして復活する

そもそもAudi A4をめぐる状況は、ここ数年で少し複雑になっています。

長年BMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツ Cクラスと競ってきたA4ですが、Audiは一時期「奇数を内燃機関、偶数をEV」というネーミング戦略を採用し、従来のA4に相当する内燃機関モデルをA5へ移行しました。

その後この命名ルール自体が見直されたため、A4という伝統的な名前がEVとして復活する計画になっています。

次期A4 e-tronではセダンだけでなく、Audiを象徴するステーションワゴンのAvantも設定されるとみられています。

デザインはConcept Cから影響を受ける可能性

A4 e-tronの具体的なデザインはまだ公開されていませんが、Audiが発表した「Concept C」から影響を受けた新しいデザイン言語が採用されるとみられています。

Audiは今後「Radical Next」と呼ばれる新しいデザインの方向性を量産車へ展開する計画で、A4 e-tronはその重要なモデルのひとつになる可能性があります。

インテリアについてもデジタル化一辺倒ではなく、物理ボタンやロータリーコントローラーなどを組み合わせる方向性が示されており、現在のAudiとはかなり異なる世代へ進化することになりそうです。

遅れて登場するからこそ完成度が問われる

2029年というタイミングは、Audiにとって決して楽なものではありません。

BMWとメルセデス・ベンツが次世代EVを数年間販売した後に市場へ投入する以上、A4 e-tronには「Audiだから選ばれる」というブランド力だけでなく、航続距離、充電速度、ソフトウェア、走行性能、インテリア品質といった部分で高い完成度が求められます。

一方で、後発であることが必ずしも不利だけとも限りません。

EV技術は現在も急速に進化しており、2029年まで開発期間を確保できれば、バッテリーや電費、電子アーキテクチャなどで先行モデルを研究したうえで製品を投入できる可能性もあります。

A4は長年にわたりAudiを代表してきたモデルのひとつです。その名前がEVとして復活するとき、単なる「電気自動車版A4」になるのか、それともAudiの次世代を象徴するモデルになるのか。

約3年というライバルとの差を埋められるだけの完成度を実現できるかが、A4 e-tron最大の注目点になりそうです。

参考・出典:Autoblog / electrive

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

目次