トヨタが北米市場向けに発表した2027年モデルの「クラウン」が、意外な理由で注目を集めています。
今回の改良では、従来のハイブリッドシステムから最新の第5世代トヨタ・ハイブリッド・システム(THS 5)へと進化しました。本来であれば燃費性能や出力の向上が期待されるところですが、実際にはシステム最高出力が据え置かれたうえ、燃費性能が従来モデルを下回るという結果になっています。
世界的に電動化技術をリードしてきたトヨタに、いったい何が起きたのでしょうか。
第5世代ハイブリッド採用も、最高出力は236馬力のまま

2027年モデルのクラウンでは、北米仕様のXLE、Limited、Nightshadeの3グレードに、第5世代のハイブリッドシステム「THS 5」が新たに採用されました。
このシステムは2023年型プリウスから導入された新世代の技術であり、モーターや電力制御の最適化によって、より滑らかで効率的な走行を実現することを目的としています。
しかし、今回のクラウンでは2.5リッター直列4気筒エンジンと電気モーターを組み合わせる基本構成が継続され、システム最高出力も従来と同じ236hp(約239PS)に据え置かれました。
さらに、0-60mph(約96.6km/h)加速についても、メーカー公表値は従来と同じ7.6秒となっています。
つまり、カタログ上の動力性能に目立った向上は見られないのです。
燃費は約17.4km/Lから17.0km/Lへ悪化
今回、最も注目すべき変更点が燃費性能です。
米国EPAの燃費評価によると、2027年モデルのクラウンは市街地燃費こそ従来と同等ですが、高速道路燃費と総合燃費が悪化しています。
2026年型と2027年型の燃費比較
| 項目 | 2026年型 | 2027年型 |
|---|---|---|
| 市街地燃費 | 約17.9km/L | 約17.9km/L |
| 高速道路燃費 | 約17.4km/L | 約16.2km/L |
| 総合燃費 | 約17.4km/L | 約17.0km/L |
| システム最高出力 | 約239PS | 約239PS |
| 0-60mph加速 | 7.6秒 | 7.6秒 |
※燃費は米国EPA方式のmpgをkm/Lに換算した参考値で、日本のWLTCモードとは測定条件が異なります。
総合燃費の低下幅は約2.4%と決して大きなものではありませんが、最新世代のハイブリッドシステムを採用したにもかかわらず、数値上の効率が後退したことは興味深い結果です。
特に高速道路燃費は41mpgから38mpgへと低下しており、市街地よりも高速巡航時の変化が目立ちます。
なぜ最新ハイブリッドで燃費が悪化したのか?
トヨタは第5世代ハイブリッドシステムについて、従来よりも応答性に優れ、滑らかなパワー伝達と効率的な走行を実現すると説明しています。
一方、海外の報道によると、今回の燃費悪化についてメーカーから具体的な技術的説明は得られておらず、その理由は明らかになっていません。
考えられる要因のひとつは、ハイブリッドシステムの制御変更です。
燃費を最優先するのではなく、アクセル操作に対する応答性や加速時の自然なフィーリングを重視した場合、走行条件によっては燃料消費量が増える可能性があります。
また、車両仕様や燃費認証条件の変更が数値に影響した可能性も考えられますが、現時点でこれらが原因と確認されたわけではありません。
重要なのは、カタログ燃費が低下したからといって、ハイブリッドシステムそのものの技術水準が後退したとは限らないという点です。
実際の走行では、加速の滑らかさや静粛性、アクセル操作への応答など、燃費数値だけでは判断できない性能もあります。
ただし、効率向上を掲げる新世代システムとしては、数値上の変化についてより詳しい説明が求められるでしょう。
新たにパドルシフトを採用、走りの楽しさを強化
今回の改良では、XLE、Limited、Nightshadeにパドルシフトが標準装備されました。
これらのグレードには電気式無段変速機(e-CVT)が採用されているため、一般的な多段式ATのように物理的なギアを切り替えるわけではありません。
それでも、ステアリングから手を離さずに変速操作に相当する制御を行えることで、ドライバーが積極的に走りを楽しめる仕様となっています。
従来のクラウンは、快適性や上質な移動性能を重視したモデルという印象が強かったものの、今回の変更からは運転する楽しさにも重点を置こうとするトヨタの姿勢がうかがえます。
上級グレードは340馬力の「HYBRID MAX」を継続
一方、最上級グレードのPlatinumには、従来と同じ2.4リッターターボエンジンを搭載した「HYBRID MAX」が引き続き採用されています。
こちらは6速ATを組み合わせた高性能ハイブリッドシステムで、最高出力340hp(約345PS)、最大トルク約542Nmを発揮します。
0-60mph加速は5.7秒と、2.5リッターハイブリッド搭載モデルを大きく上回る性能を実現しており、快適性と力強い加速を両立した仕様です。
北米仕様2027年型クラウンの主要スペック
| 項目 | THS 5 | HYBRID MAX |
|---|---|---|
| エンジン | 2.5L直列4気筒 | 2.4L直列4気筒ターボ |
| システム最高出力 | 約239PS | 約345PS |
| 最大トルク | 非公表 | 約542Nm |
| トランスミッション | e-CVT | 6速AT |
| 駆動方式 | AWD | AWD |
| 総合燃費(EPA換算) | 約17.0km/L | 約12.8km/L |
| 0-60mph加速 | 7.6秒 | 5.7秒 |
※最高出力は米国表記のhpからPSへ換算。加速性能はメーカー公表値です。
デザインや装備も改良、上質感をさらに強化
2027年モデルではパワートレイン以外にも、外装や内装に複数の変更が加えられています。
エクステリアではリアバンパーの形状が見直されたほか、新色としてブラック系の「Inked」が追加されました。
Platinumではレッドブレーキキャリパーが標準装備となり、ツートーンカラーの塗り分けも変更されています。
インテリアではLimitedとPlatinumにサドルタンの内装色が設定され、クラウンらしい上質な雰囲気をさらに強めています。
また、Limitedにはパノラミックビューモニターやデジタルキー、渋滞時運転支援機能などが標準装備され、安全性と利便性の向上も図られました。
トヨタのハイブリッド戦略に変化?燃費だけでは測れない進化
今回のクラウンの改良は、ハイブリッド車の進化が必ずしも最高出力や燃費数値の向上だけを意味するわけではないことを示しています。
トヨタは長年にわたり、燃費性能の改善をハイブリッド技術の大きな強みとしてきました。しかし、電動化技術が成熟するにつれて、今後はドライバビリティや静粛性、加速時の質感といった要素の重要性がさらに高まる可能性があります。
もっとも、今回の燃費悪化がそうした性能との引き換えに生じたものなのかについては、トヨタから明確な説明がないため断定できません。
新しい技術を採用しながら、最高出力は据え置き、燃費はわずかに悪化するという2027年型クラウン。数値だけを見れば不可解な改良ですが、実際の走行性能や乗り味にどのような変化が生まれているのかが、今後の評価を左右することになりそうです。
なお、今回の内容は北米市場向けクラウンに関するものであり、日本仕様のクラウンへの同様の変更が発表されたわけではありません。
参考・出典:MotorTrend / Toyota USA Newsroom / Toyota USA




