中国の高級EVブランド「AVATR」が2027年に欧州進出へ。マイバッハやロールス・ロイスに挑む新型SUVも登場

中国の高級電動車ブランド「AVATR(アバター)」が、2027年から欧州市場への本格参入を開始することを発表しました。最初の進出先にはノルウェーとスペインが選ばれ、スタイリッシュなシューティングブレーク「06T」と高級SUV「07L」を投入する計画です。

さらに、パリで公開された大型SUVコンセプト「T09」は、メルセデス・マイバッハGLSやロールス・ロイス・カリナンといった超高級SUVを競争相手として意識したモデルであり、中国メーカーが欧州の伝統的な高級車ブランドに真正面から挑もうとしていることを印象づけています。

これまで中国車の強みといえば、比較的手頃な価格と豊富な装備が注目されてきました。しかし、AVATRが目指しているのは単なる価格競争ではなく、デザインや先進技術、快適性を武器に高級車市場で存在感を確立することです。

目次

AVATRとはどのような自動車メーカーなのか

AVATRは、中国の大手自動車メーカーである長安汽車(Changan Automobile)と、世界有数の車載電池メーカーCATLが主要株主となっているプレミアム電動車ブランドです。

2018年に設立され、2021年からブランド展開を開始した比較的新しいメーカーですが、その特徴は自動車製造と電池技術、そして高度なデジタル技術を組み合わせた開発体制にあります。

また、中国のテクノロジー企業Huawei(ファーウェイ)とも技術面で協力関係を築いており、従来の自動車メーカーとは異なる発想で車両開発を進めています。

興味深いのは、中国ブランドでありながらグローバルデザインセンターをドイツ・ミュンヘンに構えている点です。上海のデザインチームとも連携しながら、欧州を含む世界市場で受け入れられるデザインを追求しており、今回の欧州進出も長年準備されてきた戦略の一環といえるでしょう。

2027年からノルウェーとスペインで販売開始

AVATRは2027年にノルウェーとスペインで販売を開始し、今後3年間で欧州市場に複数の新型モデルを投入する方針を明らかにしました。

初期投入モデルとして発表されたのは、シューティングブレークの「06T」と高級SUVの「07L」です。

06Tは、スポーティなルーフラインとワゴンとしての実用性を組み合わせたモデルで、従来のSUVとは異なるスタイルを求めるユーザーを意識しています。一方の07Lは、広い室内空間と先進装備を重視したSUVとして、欧州のプレミアム市場で競争することになります。

ノルウェーでは自動車輸入会社RSAが正規輸入を担当し、2027年第1四半期からの導入を予定しています。

AVATRは現地ディーラーとの協力に加え、補修部品の物流網やロードサービスなども整備する計画であり、販売後のサポート体制まで含めて欧州市場への定着を目指しています。

AVATR 06Tと07Lの特徴

欧州進出を担う06Tと07Lは、いずれもAVATRのデザイン思想を象徴するモデルです。

06Tは低く伸びやかなシルエットが特徴で、シューティングブレークならではの美しさと実用性を両立しています。EV仕様に加えて、発電用エンジンを搭載するレンジエクステンダー仕様も用意されており、充電環境に応じた選択肢を提供できる点も強みとなりそうです。

一方、07Lは全長約4.9mの高級SUVとして位置づけられ、広い車内空間と高出力な電動パワートレインを特徴としています。

欧州市場向けの最終的な仕様はまだ明らかになっていませんが、両モデルとも既存の欧州プレミアムブランドに対抗する重要な役割を担うことになります。

超高級SUV「T09」はマイバッハGLSやカリナンを意識

今回の発表で特に注目したいのが、新型大型SUV「AVATR T09」です。

パリで披露されたT09コンセプトは、ブランドのフラッグシップとなる大型SUVを予告するモデルで、メルセデス・マイバッハGLSやロールス・ロイス・カリナンといった高級SUVを競争相手として意識しています。

中国で明らかになった生産モデルの情報によると、T09には発電用エンジンと電気モーターを組み合わせるレンジエクステンダー方式が採用され、複数のパワートレインが用意される見込みです。

項目T09の中国向け公表・届出情報
ボディタイプフルサイズ高級SUV
駆動方式電動四輪駆動
システムレンジエクステンダーEV
発電用エンジン1.5Lターボ/2.0Lターボ
フロントモーター約245PS
リアモーター約423PS仕様/約308PS×2仕様
バッテリー容量71.24kWh
欧州仕様未発表

※モーター出力は個別の公表値であり、システム総合出力を示すものではありません。

T09が興味深いのは、電気モーターによる静粛性や滑らかな加速性能を生かしながら、発電用エンジンによって長距離移動への不安を軽減しようとしている点です。

高級SUVでは、最高出力だけでなく乗り心地や静粛性、長距離移動時の快適性が重要視されます。そのため、レンジエクステンダー方式は、大型で重量のある高級SUVにとって合理的な選択肢になる可能性があります。

ただし、マイバッハやロールス・ロイスが長年培ってきたブランド価値、内装の仕立て、顧客対応まで含めて競争できるかどうかは、今後の実車評価を待つ必要があるでしょう。

欧州の高級車メーカーにとって新たな脅威となるのか

AVATRの欧州進出は、単に新しい中国ブランドが販売を開始するというニュースにとどまりません。

現在、中国メーカーはEVやプラグインハイブリッド車を中心に欧州市場で存在感を高めており、従来は欧州ブランドが優位だった高級車分野にも進出を始めています。

特に、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディといったメーカーにとって、中国メーカーの技術進歩は無視できない存在となっています。

もっとも、高級車市場では性能や装備の充実だけで購入が決まるわけではありません。ブランドの歴史、販売店での接客品質、故障時の対応、そして数年後の中古車価値まで含めて評価されるため、新興ブランドが欧州の伝統的な高級車メーカーと同じ地位を確立するには時間が必要です。

それでも、AVATRが高い商品力と競争力のある価格を両立できれば、従来の高級車市場に新しい選択肢を生み出すことになるでしょう。

日本市場への進出はあるのか

現時点で、AVATRの日本市場への正式な参入計画は発表されていません。

しかし、同ブランドが世界的な販売網の拡大を進めていることを考えると、将来的に日本が検討対象となる可能性はあります。

日本ではBYDをはじめとする中国メーカーが販売網を広げていますが、高級車市場で確固たる地位を築くためには、車両そのものの完成度に加えて、全国的なサービス網やブランドへの信頼が欠かせません。

また、右ハンドル仕様への対応、国内の充電環境、部品供給体制なども重要な課題になります。

仮にAVATRが日本に参入する場合、価格と装備のバランス次第では、欧州プレミアムブランドのEVを検討するユーザーにとって魅力的な選択肢になるかもしれません。

まとめ:中国の高級EVは新たな競争段階へ

AVATRの欧州進出は、中国の自動車メーカーが価格や装備の競争から、デザインや高級感、ブランド価値を競う段階へと進みつつあることを示しています。

2027年に登場する06Tと07Lに加え、超高級SUV市場を意識したT09がどこまで欧州の消費者に受け入れられるのかは、今後の重要な注目点となるでしょう。

一方で、長い歴史を持つ欧州の高級車ブランドには、新興メーカーが短期間では再現できない価値があります。AVATRが真の競争相手となるためには、スペック上の優位性だけでなく、購入後も含めた総合的な所有体験で評価を獲得する必要があります。

中国の高級EVブランドが欧州の伝統的な高級車市場にどのような変化をもたらすのか、その動向に注目したいところです。

参考・出典:Carscoops / AVATR Global / RSA / Reuters

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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