BMWが中国メーカーの手法を採用へ。高級車の常識を変える「脱・専用部品」とノイエ・クラッセの新戦略

ドイツを代表するプレミアムブランドのBMWが、中国自動車メーカーの成功手法を取り入れ、車両開発と生産のあり方を大きく変えようとしています。

その中心にあるのは、BMW専用に設計された部品への依存を減らし、複数のメーカーで使用できる標準化部品を積極的に採用するという戦略です。これまで独自技術や専用設計によってブランド価値を高めてきたBMWにとって、大きな方向転換といえるでしょう。

背景には、中国メーカーの急速な技術革新と価格競争力の向上があり、次世代車両戦略「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」を本格展開するBMWは、開発効率と収益性を同時に改善する必要に迫られています。

しかし、部品の共通化を進めることで、本当にBMWらしい走りや品質を維持できるのでしょうか。

目次

BMWが進める「脱・専用部品」とは

BMWが新たに打ち出した方針では、これまで車種ごとに独自開発してきた部品の一部を、サプライヤーが提供する標準化部品へ置き換えることで、開発費用と製造コストの削減を目指します。

BMWの年間部品調達予算は約800億ユーロに達するとされ、同社は2032年までに標準化部品を調達額の最大構成要素とする一方、専用設計部品の使用を半減させる方針です。

自動車メーカーが部品を共通化すること自体は珍しくなく、現在でもセンサーや電子制御モジュール、機械部品などは複数車種で共有されています。しかし、今回の戦略が従来と異なるのは、BMWグループ内での共通化にとどまらず、他メーカーも利用できる業界標準の部品を積極的に取り入れようとしている点です。

例えば、特定の車種だけに使用する電子部品を専用開発する場合、設計や検証に多額の費用が必要になりますが、すでに市場で実績のある標準部品を採用すれば、開発期間を短縮できるだけでなく、大量生産による調達価格の低減も期待できます。

BMWは、こうした効率化によって生まれた経営資源を、走行性能や独自技術など、ブランドの競争力を左右する領域へ集中させようとしています。

なぜBMWは中国メーカーの手法を取り入れるのか

今回の方針転換を理解するうえで重要なのが、中国自動車メーカーの競争力です。

BYDや吉利汽車(Geely)をはじめとする中国メーカーは、部品の共通化やサプライチェーンの効率化、開発工程の短縮などを通じて、先進的な装備を備えた車両を競争力のある価格で市場へ投入してきました。

特にEV市場では、バッテリー性能や充電速度、車載ソフトウェア、運転支援機能などが商品価値を大きく左右するようになっており、従来のブランド力だけで高価格を正当化することは難しくなりつつあります。

こうした環境変化はBMWにも影響しており、2025年の中国市場におけるBMWの販売台数は前年比約12.5%減少しました。メルセデス・ベンツやアウディも同様に苦戦していることから、中国市場ではドイツのプレミアムブランド全体が厳しい競争に直面しているといえます。

かつて中国メーカーが欧州ブランドの技術や品質を追いかけていた時代とは異なり、現在では欧州メーカーが中国企業の開発速度や生産効率を学ぶという、興味深い逆転現象が起きています。

ノイエ・クラッセはBMW再建の重要な柱

BMWのコスト改革と密接に関係しているのが、次世代車両技術群であるNeue Klasseです。

ノイエ・クラッセは、単に新しいEVを投入するためのプロジェクトではなく、電動パワートレイン、電子制御アーキテクチャ、車載ソフトウェア、インターフェースなどを刷新し、BMWの将来を支える技術基盤として位置づけられています。

その代表例が新型BMW iX3であり、第6世代の電動パワートレインや、車両の走行制御を統合する「Heart of Joy」、新世代の「BMW Panoramic iDrive」などが採用されています。

BMWはこれらの技術を今後さまざまな車種へ展開する方針ですが、すべての構成部品を独自開発していては、開発費用が膨らむだけでなく、新型車を市場へ投入するまでの時間も長くなってしまいます。

そこで、車両の基本的な電子部品や汎用性の高い構成要素については標準化を進める一方、走行制御やユーザー体験などBMWらしさを生み出す領域に開発資源を集中することで、効率と独自性の両立を目指しているのです。

車種削減や組織改革も進行。収益性の回復を目指す

BMWの改革は部品調達だけにとどまりません。

2026年9月30日に発表された経営方針では、商品ラインアップの見直しや地域別の生産体制強化、AIを活用した開発効率の改善など、企業全体にわたる構造改革が示されました。

主な改革内容は以下のとおりです。

改革項目主な内容
部品調達標準化部品の採用拡大
専用部品使用を半減する方針
車種構成モデル・バリエーションを整理
2シリーズ アクティブツアラー後継モデルを設定しない方針
組織改革部門数と管理職ポストを約20%削減
中国市場現地生産・現地開発を拡大
開発体制AIによる効率化と開発期間短縮

BMWは2028年の自動車部門営業利益率を3〜5%、2030年代初頭には長期目標である8〜10%へ回復させることを目指しています。

また、中国市場では2030年までに、現地で生産する車両のうち、中国の顧客ニーズに合わせて開発したモデルの割合を少なくとも95%へ引き上げる方針です。

これは、中国市場向けにドイツで開発した車両を単純に販売する従来型の事業構造から、現地の需要や技術環境に合わせて商品そのものを開発する体制へと移行することを意味しています。

部品の共通化でBMWの品質は低下するのか

今回の改革で気になるのは、コスト削減が車両の品質や高級感に影響する可能性です。

BMWは標準化部品の採用拡大について、品質や性能、ブランドとしての独自性を損なうものではないと説明しています。

実際、自動車の品質は必ずしも専用部品の多さによって決まるわけではなく、信頼性の高い標準部品を採用したうえで、車両全体の設計や制御技術によって高い完成度を実現することも可能です。

一方で、プレミアムブランドに求められる価値は、単なるスペックだけではありません。スイッチの操作感や車内の静粛性、ステアリングを通じて伝わる感覚、乗り心地の質感など、数値では表しにくい部分も購入動機を左右します。

仮に共通化によってこうした領域まで画一化が進めば、BMWを選ぶ理由が薄れてしまう可能性もあるでしょう。

重要なのは、どの部品を共通化するかではなく、どの領域に独自性を残すかという判断であり、今回の改革はBMWのブランド価値そのものを再定義する取り組みとも考えられます。

中国メーカーに学ぶBMWは、高級車の新しい形を示せるか

今回の動きで注目したいのは、BMWが単純な価格競争に参加しようとしているわけではないという点です。

中国メーカーの強みである効率的な開発・生産体制を取り入れながら、BMWが長年培ってきた走行性能やブランド体験を維持できれば、従来より合理的なコスト構造を持つプレミアムカーを実現できる可能性があります。

反対に、コスト削減が優先されすぎれば、価格に見合った特別感を失い、競争力を高めるどころかブランドの魅力を弱める結果にもなりかねません。

特にノイエ・クラッセ世代のBMWでは、EVとしての性能だけでなく、ソフトウェアや電子制御によってどこまで独自のドライビング体験を提供できるかが重要になるでしょう。

中国メーカーから効率性を学びながら、BMWにしか作れないクルマを生み出せるのか。

今回の部品戦略は、BMWが次の時代もプレミアムブランドであり続けられるかを占う、大きな転換点になりそうです。

参考・出典:CarBuzz / BMWBLOG / BMW Group / Reuters / CarNewsChina

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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