中国の自動車大手ジーリー(Geely)が、新型プラグインハイブリッドSUV「MONJARO EM-i(モンジャロ EM-i)」を欧州市場に投入することを発表しました。2026年10月12日に開幕するパリモーターショーで欧州初公開される予定であり、同社が進める欧州市場への本格進出を象徴するモデルとなります。
ジーリーという名前に馴染みのない方もいるかもしれませんが、実はメルセデス・ベンツと深い関係を持つ自動車グループです。メルセデスと共同で「smart(スマート)」ブランドを展開しているだけでなく、ジーリー創業者の李書福(リー・シューフー)氏はメルセデス・ベンツ・グループの主要株主でもあります。
さらに、ボルボやロータス、ポールスターといった欧州ブランドも傘下に収めており、今回のモンジャロ投入は、すでに欧州自動車産業に大きな影響力を持つジーリーが、自社ブランドでも存在感を高めようとする動きとして注目されます。

新型モンジャロ EM-iとは?欧州を狙うフラッグシップSUV

今回発表されたモンジャロ EM-iは、ジーリーがグローバル市場向けに展開するDセグメントのプラグインハイブリッドSUVです。
中国では2021年から「星越L(Xingyue L)」として知られるSUVが販売されてきましたが、欧州向けのモンジャロ EM-iでは、電動化技術と快適性を重視したフラッグシップモデルとしての位置付けが強調されています。
新型車には、電動車向けに開発された「GEA-Evo」アーキテクチャーを採用。さらに、電子制御システムには「GEEA 3.0」を組み合わせることで、車内空間の効率的な利用や高度な車両制御、安全性の向上を図っています。
パワートレインには独自の「EM-i Super Hybrid」を搭載し、電気モーターによる効率的な走行と、内燃機関を組み合わせた長距離移動への対応を両立させる方針です。
モンジャロ EM-iの主要スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | Geely MONJARO EM-i |
| ボディタイプ | DセグメントSUV |
| パワートレイン | プラグインハイブリッド |
| プラットフォーム | GEA-Evo |
| 電子アーキテクチャー | GEEA 3.0 |
| ハイブリッドシステム | EM-i Super Hybrid |
| システム最高出力 | 欧州仕様未発表 |
| バッテリー容量 | 未発表 |
| EV航続距離 | 未発表 |
| 欧州初公開 | 2026年10月12日予定 |
| 欧州販売価格 | 未発表 |
現時点では欧州仕様の詳細な性能や価格は公表されていませんが、ジーリーが重視しているのは、電動化技術だけでなく、室内の広さや装備の充実度も含めた総合的な商品力です。
欧州では中国メーカーによる競争力の高いSUVが増えているだけに、モンジャロがどのような価格設定で登場するのかが、今後の注目点となるでしょう。
ジーリーとメルセデス・ベンツの関係とは?

ジーリーとメルセデス・ベンツの関係を理解するうえで重要なのが、資本関係とsmartブランドを通じた事業提携という2つの側面です。
ジーリー創業者はメルセデスの主要株主
2018年、ジーリーの創業者である李書福氏は、当時のダイムラーAGの株式約9.69%を取得しました。
メルセデス・ベンツ・グループが公表している2026年6月時点の株主情報でも、李氏は投資会社Tenaciou3 Prospect Investment Limitedを通じて9.69%の株式を保有する主要株主として記載されています。
ただし、これはメルセデス・ベンツがジーリーの傘下に入ったことを意味するものではありません。両社は独立した自動車メーカーでありながら、資本面でつながりを持つ関係にあります。
smartはメルセデスとジーリーの共同事業
さらに両社の関係を象徴するのが、コンパクトカーで知られるsmartブランドです。
2019年、当時のダイムラーとジーリーはsmartを共同で運営する合弁事業を発表し、メルセデス・ベンツとジーリーがそれぞれ50%を出資する体制を構築しました。
新世代smartでは、メルセデス側がデザイン面で強みを発揮する一方、ジーリー側は中国を拠点とする開発・生産ネットワークを活用しています。
つまり、メルセデスのブランド価値やデザイン力と、ジーリーの電動車開発・生産能力を組み合わせることで、従来のsmartとは異なるグローバルな電動車ブランドへの転換を進めているのです。
もっとも、今回発表されたモンジャロ EM-iはジーリーブランド独自のモデルであり、メルセデスとの共同開発車として発表されたわけではありません。この違いは押さえておく必要があります。
ボルボ、ロータス、ポールスターも傘下に持つ巨大グループ

ジーリーの存在感は、メルセデスとの関係だけにとどまりません。
親会社の浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Holding Group)は、スウェーデンのボルボ・カーズをはじめ、英国のスポーツカーブランドであるロータス、電動車ブランドのポールスターなど、複数の自動車ブランドをグループ内に抱えています。
| ブランド | ジーリーとの関係 |
|---|---|
| Geely | グループの中核自動車ブランド |
| Volvo Cars | ジーリー傘下の自動車メーカー |
| Polestar | ジーリー系の電動車ブランド |
| Lotus | ジーリー傘下のスポーツカーブランド |
| Zeekr | グループのプレミアム電動車ブランド |
| Lynk & Co | グループ傘下の自動車ブランド |
| smart | メルセデスとの共同事業 |
このように見ると、ジーリーは単なる中国国内の自動車メーカーではなく、欧州ブランドの経営や技術開発にも関与する国際的な自動車グループであることが分かります。
特に興味深いのは、ボルボやロータスなどを通じて欧州市場との接点を築きながら、今度はGeelyという自社ブランドそのものを欧州で拡大しようとしている点です。
メルセデスにとってジーリーは味方か、それともライバルか
メルセデスとジーリーの関係は、単純な協力関係だけでは説明できません。
smartでは共同出資者として協力し、ジーリー創業者はメルセデスの主要株主でもありますが、その一方で、両グループは自動車市場において競争する立場にもあります。
今回のモンジャロ EM-iは、メルセデスのGLCなどが属するミドルサイズSUV市場にも近いカテゴリーに位置するモデルです。ただし、現時点では欧州価格や詳細装備が明らかになっていないため、GLCと直接競合する価格帯になるかどうかは判断できません。
それでも、ジーリーが欧州ブランドとの関係を通じて培ってきた経験を背景に、独自の電動化技術と商品力を前面に押し出していることは見逃せません。
メルセデスにとってジーリーは、電動化を進めるうえでの重要な協力相手であると同時に、将来的にはより幅広い車種で競争する可能性を持つ存在でもあるのです。
欧州進出を加速するジーリー、次の狙いは?
ジーリーは今回のパリモーターショーで、モンジャロ EM-iに加えて、電動コンパクトモデルの「E2」、電動SUVの「E5」、プラグインハイブリッドSUVの「STARRAY EM-i」も展示する予定です。
これは単一モデルの投入にとどまらず、EVとプラグインハイブリッドの両方を展開することで、欧州の幅広い顧客層を取り込もうとする戦略と考えられます。
実際にジーリー・オート・グループの2025年世界販売台数は約302万台に達し、前年比39%増という大幅な成長を記録しました。そのうち新エネルギー車は約169万台を占めており、電動化が同社の成長を支える大きな柱となっています。
こうした販売規模と技術開発力を背景に、欧州市場でどこまでシェアを拡大できるのか。モンジャロ EM-iは、その実力を測る重要な一台になりそうです。
まとめ|メルセデスと深く結び付くジーリーの実力が試される
新型モンジャロ EM-iの欧州デビューは、中国メーカーによる新型SUVの発表というだけでなく、世界的な自動車グループへ成長したジーリーの欧州戦略を象徴する出来事です。
メルセデス・ベンツとのsmart共同事業、創業者によるメルセデス株式の保有、そしてボルボやロータスなどの欧州ブランドを抱える事業構造を考えると、ジーリーはすでに欧州自動車産業と密接に結び付いています。
その一方で、モンジャロ EM-iの投入によって、自社ブランドとして欧州メーカーと競争する動きも強まっています。
かつて中国メーカーは欧州ブランドの技術やノウハウを学ぶ側として見られることが多かったものの、現在は欧州の伝統的な自動車メーカーと協力しながら、自らも世界市場で競争する存在へと変化しています。
メルセデスのパートナーであり、同時に将来の競争相手にもなり得るジーリー。今回のモンジャロ EM-iが欧州市場でどのように評価されるのか、その動向に注目したいところです。
参考・出典:Motor1 / Geely Auto Europe / Mercedes-Benz Group / smart Newsroom / Reuters




