【続報】メルセデスを巻き込む米国「15%ルール」に見直しの動き、中国車規制はどう変わる?

米国で進められている中国系自動車メーカーへの規制強化が、思わぬ形でメルセデス・ベンツに影響を及ぼす可能性が浮上しています。

問題となっているのは、米議会で審議されている「Connected Vehicle Security Act(コネクテッド・ビークル・セキュリティ法案)」です。中国など米国が懸念する国と関係の深い自動車やソフトウェア、ハードウェアを米国市場から排除することを狙ったものですが、その規制基準のひとつとして設けられた「15%」という数字によって、ドイツを代表する自動車メーカーであるメルセデス・ベンツまで対象になる可能性が出てきました。

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なぜメルセデス・ベンツが「中国車規制」に引っかかるのか

一見すると、中国メーカーを対象とした規制とメルセデス・ベンツには、それほど大きな関係がないように思えます。

しかし問題となるのが株主構成です。

メルセデス・ベンツには中国の北京汽車集団(BAIC)が9.98%を出資しているほか、Geely(吉利汽車)創業者の李書福氏も約9.7%を保有しており、両者を合わせると中国系の持ち分は約20%に達します。

一方、現在検討されている法案では、完成車メーカーなどについて中国を含む対象国の企業・個人などによる所有または支配が15%を超える場合、「foreign entity of concern(懸念される外国事業体)」に該当する可能性があります。

つまりメルセデス・ベンツは、中国企業だから問題になるのではなく、「中国系株主の保有比率が基準を超えている」という理由によって規制に巻き込まれる可能性があるのです。

本来の目的は「中国製コネクテッドカー」の排除

そもそも米国がこうした規制を進める背景には、現代の自動車が巨大な情報端末へと変化していることがあります。

現在の自動車には通信機能をはじめ、位置情報、カメラ、各種センサー、音声認識、運転支援システムなどが搭載されており、車両から取得できるデータは以前とは比較にならないほど増えています。

米国政府は、中国やロシアと関係する企業が開発したコネクテッドカー向けソフトウェアや通信機器について、安全保障上のリスクが存在すると判断しており、米商務省はすでに2025年1月、一定の中国・ロシア関連技術を搭載したコネクテッドカーを規制する最終規則を発表しています。

今回の法案は、こうした規制を法律としてさらに強固なものにする意味合いを持っています。

上院議員も「メルセデスを禁止するつもりはない」

しかし、15%という基準をそのまま適用すると、本来の標的とは考えにくいメルセデス・ベンツまで米国市場から締め出される可能性があります。

そこで法案を推進する共和党のバーニー・モレノ上院議員は、Reutersに対して「われわれがメルセデス・ベンツ車を米国で禁止することは、当然ながらない」と明言しています。

実際、法案を迅速に成立させようとする動きは一旦停滞しており、議員らはメルセデス・ベンツなどを意図せず規制対象にしてしまう問題を解決するため、例外規定や基準の変更などを検討しています。

Reutersによれば、法案は7月に上院商務委員会を通過したものの、ランド・ポール上院議員がメルセデス・ベンツを不当に対象とする可能性を問題視したことなどから、最終的な審議は11月の中間選挙後へ持ち越される見通しです。

モレノ議員も、最終的な法案ではメルセデス・ベンツが米国で販売禁止にならないようにすると説明しています。

メルセデスだけの問題ではない

今回の問題で重要なのは、単にメルセデス・ベンツが例外扱いされるかどうかではありません。

自動車メーカーの資本関係は、すでに国籍だけでは簡単に分類できないほど複雑になっています。

中国のGeely傘下にあるVolvo Carsは米商務省から認可を得て米国での販売を継続できる一方、同じGeelyグループとの関係が深いPolestarは認可を得られず、2027年モデル以降の新車販売ができない状況となっています。

つまり米国政府にとっても、「中国と資本関係がある」という一点だけで判断するのか、それとも企業統治やデータ管理、ソフトウェア開発体制などまで個別に確認するのかという難しい線引きが求められているのです。

中国車排除とグローバル企業の現実、その境界線が問われる

米国が中国製コネクテッドカーを警戒する背景には、国家安全保障と個人情報保護に対する強い懸念があります。その一方で、自動車産業ではメーカー、株主、サプライヤー、ソフトウェア企業が国境を越えて複雑につながっており、単純な出資比率だけで企業を分類すれば、今回のメルセデス・ベンツのようなケースが生まれます。

さらにメルセデス・ベンツは米国内にも大きな事業基盤を持っているため、同社を米国市場から排除することになれば、中国メーカーへの規制という当初の目的とは異なる影響が米国内にも及びかねません。

その意味で今回の議論は、メルセデス・ベンツ1社だけの問題ではなく、「中国との関係をどこから規制対象とみなすのか」という米国の自動車政策そのものを映しています。

上院側がメルセデス・ベンツを販売禁止にしない意向を明確にしていることを考えると、今後は15%という基準そのものの変更、一定条件を満たしたメーカーへの免除、あるいは単純な出資比率ではなく実質的な経営支配やデータ管理体制を重視する仕組みなどが焦点になりそうです。

中国メーカーの台頭を警戒する米国と、すでに中国資本が深く入り込んだ世界の自動車産業。その二つの現実をどこで線引きするのか、今回のメルセデス・ベンツを巡る議論は、その難しさを象徴する出来事と言えるでしょう。

参考・出典:Autoblog / Reuters / U.S. Department of Commerce / U.S. Congressional Record

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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