アルファードそっくり? パキスタン発「Nora EV Metro」はわずか5馬力の小型EVだった

一目見ただけなら、「小さくしたトヨタ・アルファード?」と思ってしまうかもしれません。

パキスタンの新興EVメーカー「Nora EV」が発表した「Metro」は、大型のフロントグリルや縦方向を強調したクローム加飾など、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアを強く連想させるデザインを採用した小型電動MPVです。

ところが、その堂々とした外観とは対照的に、ボディの全長はわずか3,900mm。そして、搭載されるモーターの最高出力は4kW、馬力換算すると約5.4PSにすぎません。

高級ミニバンを思わせるルックスと、超小型モビリティに近いパワートレイン。この強烈なギャップこそ、Nora EV Metro最大の特徴といえそうです。

目次

パキスタンから登場した小型電動MPV「Metro」

Nora EVは2025年にNousheen Azhar氏とAli Raza氏によって設立されたパキスタンのEVメーカーです。

同社は単純に海外から完成車に近いノックダウンキットを輸入して組み立てるのではなく、ボディパネルや灯火類などをパキスタン国内で生産する体制の構築を進めており、Metroも南アジアの道路環境に合わせてシャシーを再設計したとしています。

Metroは5人乗りのコンパクトMPVで、全長は3,900mm。アルファードのような堂々としたスタイルをまとっていますが、実際には日本のコンパクトカーに近いサイズです。

足元には14インチホイールを装着し、最低地上高は210mmを確保。大柄な高級ミニバンというよりも、道路事情の厳しい地域でも使いやすい実用的なシティコミューターとして設計されています。

これは「アルファードのパクリ」なのか?

そして、どうしても気になるのがそのデザインです。

結論からいえば、Nora EV Metroがトヨタ・アルファード/ヴェルファイアから強い影響を受けていることは否定しにくいでしょう。

特にフロントを見ると、大型グリルを中心に据え、その左右に縦方向の開口部とクローム加飾を配置する構成は、現行アルファードやヴェルファイアをかなり強く連想させます。

さらに、ボディ側面の面構成や垂直に近いテールゲート、ルーフスポイラー、三角形を取り入れたリアコンビネーションランプなど、クルマ全体からトヨタの高級ミニバンに似た雰囲気が漂っています。

CarscoopsもMetroについて、アルファードとヴェルファイアのデザイン要素を組み合わせたようなモデルとして紹介しています。

両車を並べれば偶然の一致だけで説明するのは難しいほど似た印象を受けるでしょう。

高級車に対する憧れを低価格車のデザインへ取り込む手法は新興国向けモデルでしばしば見られますが、Metroの場合、そのモチーフとして日本を代表する高級ミニバンであるアルファード/ヴェルファイアが選ばれたと考えると、このデザインの狙いも見えてきます。

見た目はアルファード、しかし最高出力はわずか約5.4PS

さらに驚かされるのが、そのパワートレインです。

Metroにはリアに4,000W(4kW)の電気モーターが搭載されており、これを日本で一般的なPSに換算すると最高出力は約5.4PSとなります。

見た目だけなら200PSや300PS級のパワートレインを搭載していても不思議ではありませんが、実際にはその数十分の1です。

項目Nora EV Metro
ボディタイプ5ドア電動MPV
乗車定員5名
全長3,900mm
駆動方式後輪駆動
モーターリアモーター
最高出力4kW(約5.4PS)
バッテリーLFP
バッテリー容量9kWh/15kWh/23.1kWh
最大航続距離250〜300km(メーカー公称)
最低地上高210mm
ホイール14インチ

もっとも、Metroを日本の一般的な乗用車と同じ基準で評価するのは適切ではありません。

最高速度や加速性能を競うモデルではなく、都市部を低速で移動することを想定した電動モビリティとして考えれば、極端に小さなモーターを採用する理由も見えてきます。

一方、23.1kWhという比較的小容量のLFPバッテリーで250〜300kmという航続距離については、どの試験基準による数値なのかが明確ではないため、日本のWLTCモードなどと単純比較することは避けた方がよさそうです。

3分で交換するバッテリースワップも計画

Nora EVが興味深いのは、単に低価格EVを販売するだけではなく、バッテリー交換ネットワークまで構築しようとしている点です。

同社は約3分でバッテリーを交換できる「バッテリースワップ」システムの展開を計画しています。

充電設備が十分に普及していない地域では、充電時間そのものを短縮するより、バッテリーを丸ごと交換してしまう方が合理的なケースもあります。

つまりMetroは、単なる「アルファード風の格安EV」ではなく、パキスタンの交通環境や充電インフラまで考慮した独自のモビリティ構想の一部なのです。

ガソリンで発電するレンジエクステンダー仕様も

さらにNora EVは、Metroにレンジエクステンダー仕様を設定する計画も明らかにしています。

こちらは小型の発電機と3リットルのガソリンタンクを搭載し、バッテリーの電力が少なくなった際に発電することで、さらに150〜180km程度の航続距離を追加できるとされています。

長距離移動では充電設備の有無が大きな問題となるため、EVとして日常利用しながら、必要な場合にはガソリンによる発電で走行を継続できる仕組みは、充電インフラが発展途上にある地域では現実的な解決策になる可能性があります。

インテリアにも「どこかで見たような」高級感

外装だけでなく、インテリアも価格以上に高級に見せることを強く意識しています。

ダッシュボードには横長のブラックパネルが配置され、一見するとメルセデス・ベンツの「MBUXハイパースクリーン」を思わせますが、実際には中央部分に比較的小さなインフォテインメントディスプレイを組み込んだ構造です。

装備についてもBluetooth、USBポート、プッシュスタート、エアコン、パワーウインドウ、バックカメラなどを用意しており、低価格な都市型EVとして必要な機能はひと通り押さえられています。

外装ではアルファード/ヴェルファイア、室内ではメルセデス・ベンツを思わせる要素を採り入れることで、「安いEV」で終わらせず、視覚的な高級感を演出しようとしているのでしょう。

価格は1万1,000ドル以下を予定

Metroの正式な販売価格はまだ発表されていませんが、Nora EVは300万パキスタンルピー以下、米ドル換算で約1万800ドル以下からの販売を予定しています。

もちろん日本の安全基準や装備水準、道路環境とは大きく異なるため、この価格だけを日本車と比較することはできません。

それでも、5人が乗れる電動MPVに最大23.1kWhのLFPバッテリーを搭載し、さらにバッテリースワップやレンジエクステンダーまで構想して1万ドル前後に抑えようとしている点は、新興国におけるEVのひとつの方向性として興味深いところです。

「アルファードのパクリ」だけでは片付けられない一台

Nora EV Metroを最初に見れば、多くの人がアルファードやヴェルファイアを思い浮かべるでしょう。

実際、そのデザインにはトヨタの高級ミニバンから強い影響を受けたと思われる部分が数多くあり、「似ている」という評価そのものを否定するのは難しそうです。

しかし、全長3.9mのコンパクトボディに約5.4PSの小型モーターを組み合わせ、LFPバッテリー、バッテリースワップ、さらにはレンジエクステンダーまで用意するMetroは、日本や欧州のEVとはまったく異なる条件から生まれたクルマです。

アルファードのような「高級車に見えるデザイン」を手頃な価格のEVに与えながら、パキスタンの道路事情や充電インフラに合わせて中身を徹底的に現実路線へ振る。

見た目の既視感には賛否がありそうですが、Nora EV Metroは、新興国における電動化が必ずしも高性能・大容量バッテリーへ向かうわけではないことを示す、なかなか興味深い一台といえるでしょう。

参考・出典:Carscoops / Nora EV

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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