アルファロメオとマセラティが手を組み、富裕層やコレクターに向けた特別なクルマ作りを本格化させています。
その中心となるのが「BOTTEGAFUORISERIE(ボッテガ・フォーリセリエ)」です。
ボディカラーや内装素材を選ぶだけの一般的なオーダーメイドとは異なり、特別仕様車の開発や高度なパーソナライゼーション、クラシックカーのレストア、さらにはパフォーマンス開発までを担うプロジェクトで、アルファロメオとマセラティという2つのイタリアンブランドの個性をさらに際立たせる役割を担います。
しかし、興味深いのは「お金さえ払えば何でも作ってもらえる」というサービスではないことです。
アルファロメオとマセラティが共同で展開する「BottegaFuoriserie」

BottegaFuoriserieは、アルファロメオとマセラティの伝統、デザイン、エンジニアリングを融合させた特別なプロジェクトです。
アルファロメオ公式も、この取り組みについてカスタマイズ車両だけでなく、レストレーション、体験型プログラム、研究、パフォーマンス開発などを手掛けるものと説明しており、単なる「高級オプション部門」よりもかなり広い役割を持っています。
その考え方を理解するうえで象徴的なのが、アルファロメオ「33 Stradale」です。
現代版33 Stradaleはわずか33台のみが製造され、オーナー自身が製作プロセスに関わりながら仕様を決定するという、通常の量産車とはまったく異なる手法が採用されました。
つまりBottegaFuoriserieは、こうした極めてパーソナルなクルマ作りを、アルファロメオとマセラティの世界でさらに発展させようという取り組みだと考えられます。
「好きな色にしてください」が必ず通るわけではない
では、十分な予算さえあれば、自分の好きなアルファロメオを何でも作ってもらえるのでしょうか。
どうやら答えは「ノー」です。
CarBuzzによれば、BottegaFuoriserieでは顧客の希望をそのまま受け入れるのではなく、その仕様がブランドの価値観に合っているかどうかも重視されます。
その象徴として紹介されているのが、かなり極端な「ピンクのアルファロメオ」です。
たとえ顧客が希望したとしても、ブランドのアイデンティティにそぐわない仕様であれば認められない可能性があるというわけです。
これは一見すると不思議にも感じられます。高額な費用を支払う顧客であれば、自由に仕様を決められてもよさそうだからです。
しかしアルファロメオ側から見れば、BottegaFuoriserieで生み出されるクルマそのものがブランドを代表する作品になります。
そのため「顧客が欲しいものを作る」のではなく、「顧客とアルファロメオが一緒に、そのブランドにふさわしい一台を作る」という考え方なのでしょう。
フェラーリやポルシェとも異なる「ブランド側が選ぶ」カスタマイズ
近年、高級車メーカーにとってパーソナライゼーションは非常に重要なビジネスになっています。
フェラーリやランボルギーニ、ポルシェ、ベントレー、ロールス・ロイスなども、通常のカタログには存在しないカラーや素材、専用装備を用意し、顧客一人ひとりに合わせたクルマを製作しています。
BottegaFuoriserieも同じ流れに位置していますが、アルファロメオにとって特に重要なのは「ブランドらしさを守る」という部分でしょう。
何でも自由に選択できることよりも、完成した一台を見たときに誰もが「これはアルファロメオだ」と感じられることを優先する。
そう考えれば、カスタマイズに制限があること自体がBottegaFuoriserieの価値なのかもしれません。
そして気になる「マニュアルトランスミッション」の可能性
今回の話で、クルマ好きにとってさらに興味深いのがマニュアルトランスミッションです。
CarBuzzは、BottegaFuoriserieのような特別プロジェクトであれば、MT仕様が検討される可能性についても触れています。
もちろん、現時点で「MTのアルファロメオが発売される」と正式発表されたわけではありません。
しかし、ボディカラーのような表面的な変更だけでなく、クルマそのもののキャラクターに関わる部分まで特別仕様として検討できるのであれば、MTという選択肢は非常に面白いものになります。
特にアルファロメオは、本来ドライバーとクルマとの一体感を大切にしてきたブランドです。
現在の自動車業界ではATやDCTが主流となり、電動化によってトランスミッションそのものを持たないクルマも増えていますが、だからこそ少量生産の特別なアルファロメオにMTを組み合わせることには大きな意味があります。
ジュリア・クアドリフォリオのMTが復活したら面白い
個人的に想像したくなるのが、ジュリア・クアドリフォリオのMT仕様です。
ジュリア・クアドリフォリオには市場によって6速MTが設定されていた時期がありましたが、現在は8速ATが中心となっています。
2.9リッターV6ツインターボという強烈なエンジンを、自分自身でギアを選びながら操るという体験は、現在のスポーツセダン市場では極めて希少です。
通常モデルとしてMTを復活させるのは、開発コストや需要を考えれば簡単ではありません。しかし数十台規模、あるいはさらに少数のBottegaFuoriserie作品として成立させるのであれば、話は変わってきます。
効率や販売台数ではなく、「そのクルマを作る意味」が優先されるからです。
最初の成果のひとつが「Giulia Quadrifoglio Luna Rossa」

BottegaFuoriserieが単なる構想ではないことを示しているのが、「Giulia Quadrifoglio Luna Rossa」です。
アルファロメオとイタリアのセーリングチーム「Luna Rossa」のパートナーシップから生まれたモデルで、世界限定10台という極めて希少な仕様です。
ベースとなるジュリア・クアドリフォリオには2.9リッターV6ツインターボエンジンが搭載され、最高出力は520PS。さらにLuna Rossaのヨットに使用されるフォイルから着想を得た特徴的なデュアルプロファイル・リアウイングなどが採用されています。
これは単に既存車へ特別な塗装を施したモデルではなく、デザインや空力にまで踏み込んだプロジェクトです。
BottegaFuoriserieが今後どこまで大胆なクルマを生み出せるのか、その方向性を示す存在と言えるでしょう。
「何でもできない」からこそ価値がある
BottegaFuoriserieについて最も興味深いのは、カスタマイズの自由度そのものではありません。
むしろ「できないことがある」という点です。
顧客から高額な注文を受けても、アルファロメオとして認められないものは作らない。一方で、そのブランド哲学に合致するのであれば、通常の量産モデルでは実現しにくいアイデアにも踏み込んでいく可能性があります。
もしその延長線上でMT仕様の特別なアルファロメオが誕生するのであれば、単なる懐古趣味ではなく、電動化が進む時代だからこそ成立する「最後の贅沢」のひとつになるかもしれません。
BottegaFuoriserieが目指しているのは、選択肢を無限に増やすことではなく、アルファロメオやマセラティでしか作れないクルマを生み出すことなのでしょう。
今後、この部門からどのようなワンオフモデルや少量生産車が登場するのか、そして本当にMTを搭載した特別なアルファロメオが実現するのか注目です。
参考・出典:CarBuzz / Alfa Romeo
