トヨタ・ハイラックスといえば、世界各地の過酷な環境で使われてきたピックアップトラックであり、その耐久性は長年にわたってブランドを象徴する特徴のひとつとなっています。
そんな「壊れないハイラックス」の伝説を、トヨタが最新の電気自動車で再現しました。
英国トヨタは新型ハイラックスBEVの上空約9.1mから、重量760kgのキャンピングトレーラー(キャラバン)を落下させるという極端な耐久テストを実施。屋根へ強烈な衝撃を受けたハイラックスはボディに損傷を負ったものの、電源を入れることができ、そのまま自走して現場を離れました。
単なる派手なPR企画にも見えますが、その背景には、今から23年前に世界中のクルマ好きへ強烈な印象を残した、英国の自動車番組『Top Gear』による伝説的な企画があります。
2003年、「ハイラックスは本当に壊れないのか」をTop Gearが検証

2003年、『Top Gear』は中古のトヨタ・ハイラックスを用意し、「どこまでやれば壊れるのか」という常識外れの耐久テストを行いました。
海水に沈めるだけでなく、建物へ衝突させたり、重量物を落としたり、さらには23階建ての建物の屋上へ置いた状態で建物そのものを爆破解体するなど、通常の自動車試験では到底考えられない扱いを受けました。
それでもハイラックスは、専門的な設備による大掛かりな修理を行うことなくエンジンを再始動。この企画によって、以前から知られていたハイラックスの耐久性は世界的な「伝説」として広まることになります。
そして2026年、トヨタ自身がその伝説を最新モデルで再現することになりました。
Redditユーザーが選んだ「760kgのキャラバン落下」

今回のテスト方法を決めたのは、実はトヨタだけではありません。
英国トヨタはRedditのコミュニティに対して、新型ハイラックスBEVへ「1トンの鉄球を繰り返し衝突させる」か、「キャラバンを上空から落下させる」かという2つの選択肢を提示し、ユーザー投票を実施しました。
その結果、圧倒的な支持を集めたのがキャラバン落下でした。
舞台となったのは英国サフォーク州のベントウォーターズ飛行場で、重量760kgのキャラバンをクレーンによって約30フィート(約9.1m)まで吊り上げ、その真下に新型ハイラックスBEVを配置。
そしてキャラバンをそのまま落下させました。
キャラバンは粉砕、それでもハイラックスEVは自走
落下したキャラバンはハイラックスのキャビンを直撃し、衝突の瞬間に大きく破壊されました。
当然ながらハイラックス側も無傷ではなく、ルーフの変形やフロントガラスのひび割れ、荷台部分の変形などが確認されています。
しかし、衝撃が収まったあとにエンジニアが車両を確認すると、ハイラックスBEVはその場でシステムを起動。そのまま自力で走行し、現場から離れることができました。
見た目には大きなダメージを受けているため、これだけで「事故後も安全に使用できる」という意味ではありませんが、少なくとも今回の衝撃によって駆動システムが即座に機能を失わなかったことは、新型ハイラックスの頑丈さを印象付ける結果となりました。
EVになっても「ハイラックスらしさ」は残せるのか
今回の企画で重要なのは、テストされた車両がディーゼルモデルではなく、バッテリーEVだったことです。
ピックアップトラックをEV化する場合、大容量の駆動用バッテリーを車体下部へ搭載する必要があるため、悪路走行時の衝撃や浸水、車体へ強い力が加わった際のバッテリー保護は重要な課題となります。
トヨタによると、新型ハイラックスBEVの開発では深い水場での走行や荒れた路面でのテストに加え、バッテリーを完全に水へ浸す試験なども実施されており、過酷な環境でバッテリーを保護するための専用設計も採用されています。
つまり今回のキャラバン落下は、単に「クルマの屋根が強い」という話だけではなく、電動化してもハイラックスが長年築いてきた耐久性のイメージを維持できることを示すための企画だったと考えられます。
新型ハイラックスはBEVとディーゼル48Vを設定
新型ハイラックスには、バッテリーEVだけでなくディーゼル48V仕様も用意されています。
用途やパワートレインによって数値は異なるものの、最大積載量は最大1,065kg、牽引能力は最大3.5トンとされており、単なる乗用EVではなく、これまで通り「働くクルマ」としての能力を重視して開発されています。
また、ハイラックスはこれまで世界累計2,700万台以上が販売されており、舗装道路だけではなく、鉱山や農場、建設現場、砂漠地帯など極めて厳しい環境でも使用されてきました。
だからこそ、電動化によって航続距離や充電性能だけが向上しても、耐久性や積載能力といった本来の強みが失われれば、ハイラックスとしては成立しません。
今回のテストには、電動化という大きな変化を迎えても「ハイラックスはハイラックスである」というトヨタのメッセージが込められているのでしょう。
これはまだ「ウォームアップ」にすぎない
そして興味深いことに、今回のキャラバン落下で企画は終わりません。
トヨタは今回使用した新型ハイラックスBEVを『Top Gear』のYouTubeチャンネルへ引き渡しており、今回のテストについても「ウォームアップ」にすぎないとしています。
2003年の企画では海水への水没や鉄球による攻撃、さらには建物の爆破解体まで行われただけに、最新の電動ハイラックスが今後どのような試練を受けるのかは気になるところです。
自動車が急速に電動化するなか、メーカー各社は航続距離や充電速度、最高出力といった数字を競っています。しかしハイラックスに求められてきたのは、それだけではありません。
世界のどこへ持っていっても仕事をこなし、多少手荒に扱われても走り続けること。
760kgのキャラバンを約9m上空から落とすという少々やりすぎにも思える今回の実験は、23年前に生まれた「壊れないハイラックス」という伝説を、EV時代にも受け継ごうとするトヨタらしい方法だったのかもしれません。
参考・出典:CarBuzz / Toyota UK / Carscoops



