先日、ニュルブルクリンクで開発テストを行う姿が目撃され、その巨大なエアロパーツやサイドエキゾーストから「歴代最強クラスのBlack Seriesになるのではないか」と期待が高まっていた次期メルセデスAMG GT Black Series。
しかし、その開発現場から思わぬ続報が入ってきました。
ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでテストを行っていたプロトタイプが、走行を終えた直後に右側から出火。幸いドライバーに怪我はありませんでしたが、AMGが限界領域まで性能を追い込んでいる最中に発生した火災だけに、次期Black Seriesの開発状況にも注目が集まっています。

ホットラップを終えた直後、車体右側から炎

今回火災を起こしたのは、カモフラージュされた次期AMG GT Black Seriesのプロトタイプです。
海外メディアによると、車両はニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでホットラップを行った直後だったとされ、サーキットを離れた後、右側のサイドエキゾースト付近から炎が上がっている様子が確認されました。
ドライバーはそのまま約2.5km離れたAMGのテストセンター方向へ走行したとされており、入口付近に到着する頃には炎が車体右側へ広がっていたようです。
現場ではメルセデスAMGのスタッフに加え、近隣にいたManthey Racingのスタッフも消火に協力し、合計5本の消火器を使って鎮火。その後、車両はGクラスによって牽引され、施設内へ運び込まれたと報じられています。
何より幸いだったのは、ドライバーが無事だったことです。
原因はサイドエキゾーストの熱なのか

現時点でメルセデスAMGから火災原因について正式な発表はなく、パワートレインやブレーキ、電装系などを含め、何が直接的な原因だったのかは分かっていません。
ただし、今回のプロトタイプには車体側面から排気するサイドエキゾーストが装着されており、Carscoopsはホットラップによって非常に高温となった排気系周辺から、近接する部品へ熱の影響が及んだ可能性を指摘しています。
実際に炎が確認された位置も右側のサイドエキゾースト付近であり、次期Black Seriesが極めて高い熱負荷の中でテストされていたことは間違いなさそうです。
もっとも、これはあくまで現段階で考えられている可能性のひとつであり、原因が排気系にあったと断定することはできません。
むしろプロトタイプだからこそ起きたトラブルとも考えられる
市販を目前にした高性能車のプロトタイプが炎上したとなれば不安を感じるニュースですが、今回については「開発中の車両」である点を考慮する必要があります。
ニュルブルクリンクで行われる開発テストは、一般道ではまず経験しない速度域と負荷を連続して車両へ与え、エンジンやトランスミッションだけでなく、ブレーキ、冷却、空力、タイヤ、そして排気系まで限界領域で検証するためのものです。
特にBlack Seriesは通常のAMG GTよりさらにサーキット性能へ振ったモデルであり、AMG自身も次期モデルを「これまでで最もラディカルなBlack Series」と位置付けています。
今回のトラブルは決して好ましいものではありませんが、市販後に問題が発覚するよりも、こうした開発段階で弱点を洗い出し、原因を突き止めて対策することこそプロトタイプテストの目的でもあります。
前回目撃された“異様なAMG GT”が今回の車両
前回お伝えした通り、次期AMG GT Black Seriesのプロトタイプは、通常のAMG GTとは明らかに異なる姿でニュルブルクリンクを走行しています。
巨大なリアウイングや大幅に拡張された空力パーツに加え、サイドエキゾーストなどモータースポーツ色の強い装備が確認されており、同時開発されている次世代AMG GT3レーシングカーとの関係も非常に深いとみられています。
パワートレインについては、CLE 646 Spezialanfertigungにも採用されたフラットプレーンクランクの4.0リッターV8ツインターボをベースとする可能性が報じられており、CLE 646の646PSを上回ることはもちろん、先代AMG GT Black Seriesが発生した730PSを超える可能性も取り沙汰されています。
ただし、現時点では次期Black Seriesの最高出力を含む詳細なスペックは正式発表されていないため、今後のAMGからの発表を待つ必要があります。
開発は一時中断、車両はアファルターバッハへ
Carscoopsによれば、火災を起こしたプロトタイプは修理と原因調査のため、メルセデスAMGの本拠地であるアファルターバッハへ戻され、今回の仕様によるテストはいったん中断されたとされています。
ここで気になるのが、市販モデルの発表時期への影響です。
次期AMG GT Black Seriesについては2027年初頭の登場が予想されていますが、火災原因が単純な部品の問題なのか、それとも排熱設計など車両構造に関係する問題なのかによって、今後の開発スケジュールへの影響は変わってくるでしょう。
現段階で発売延期が決まったという情報はなく、今回の火災だけを理由に登場が遅れると判断することはできません。
ニュル最速を狙うからこそ、限界まで追い込まれる
次期AMG GT Black Seriesで特に注目したいのが、ニュルブルクリンクでのラップタイムです。
先代AMG GT Black Seriesは2020年、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで6分48秒047という驚異的なタイムを記録し、当時の市販車最速記録を樹立しました。
しかし現在ではさらに高性能なモデルが登場しており、Ford Mustang GTD Competitionも6分40秒835を記録しています。
次期Black Seriesがどこまでニュルでのタイムを意識して開発されているのかは正式には明らかになっていませんが、巨大なアクティブエアロやサイドエキゾースト、GT3レーシングカーとの並行開発という背景を考えれば、AMGが単に「AMG GTの高出力仕様」を作ろうとしているわけではないことは明らかです。
むしろ目指しているのは、再び世界最高峰のサーキット性能を持つロードカーを作り上げることなのでしょう。
炎上は痛手、それでもBlack Seriesへの期待は変わらない
ニュルブルクリンクでプロトタイプが炎上するという出来事は、メルセデスAMGにとって決して歓迎できるものではありません。
一方で、Black Seriesというモデルの性格を考えれば、完成した市販車を安全な条件で走らせているのではなく、まだ完成していない車両を限界まで追い込み、問題点を発見するための開発が続けられている最中でもあります。
前回のプロトタイプ目撃によって、その異様なまでのエアロダイナミクスとGT3レーシングカーを思わせる姿が明らかになり、今回はさらに、そのマシンがどれほど過酷な条件でテストされているのかが別の形で浮き彫りになりました。
原因究明と対策が行われれば、再びニュルブルクリンクへ戻ってくるはずです。
次にこのプロトタイプが姿を現したとき、今回火災が発生したサイドエキゾースト周辺に何らかの変更が加えられているのか。そこも、次期AMG GT Black Seriesの開発を追いかけるうえで注目したいポイントになりそうです。
参考・出典:Autoblog / Carscoops / Car and Driver




