Mercedes-AMGのコンパクト・パフォーマンスモデルが、大きな転換点を迎えました。
新型「Mercedes-AMG CLA 45 4MATIC+」は、これまでの2.0リッター4気筒ターボエンジンではなく、完全な電気自動車(EV)として登場します。
しかし、単なる電動化ではありません。
最高出力は500kW(680PS)、最大トルクは1,759Nm。0-100km/h加速はわずか2.7秒という、少し前までならスーパーカーの領域だった性能を実現しています。
そして興味深いのは、圧倒的なEV性能を手に入れながら、Mercedes-AMGがあえて「エンジン車らしさ」を残そうとしていることです。
新型CLA 45は、これからのAMGを占ううえでも非常に重要な一台になりそうです。
3モーターで最高出力680PS

新型Mercedes-AMG CLA 45 4MATIC+最大の特徴は、そのパワートレインです。
フロントに1基、リアに2基、合計3基のアキシャルフラックスモーターを搭載します。
システム最高出力は500kW(680PS)、最大トルクは1,759Nm。
従来のMercedes-AMG CLA 45 S 4MATIC+が421PSだったことを考えると、同じ「45」の名を持つモデルとは思えないほどの大幅な性能向上です。
0-100km/h加速はわずか2.7秒。
もはや「コンパクトAMG」という言葉から想像する性能を大きく超えています。
さらにAMG Performance 4MATIC+によって前後の駆動力を可変配分し、リアでは左右それぞれのモーターによって駆動力を緻密に制御します。
単純に大出力のモーターを搭載するだけではなく、「そのパワーをどう路面へ伝えるのか」という部分までAMGらしく作り込まれています。
ニュルブルクリンクで7分32秒070

新型CLA 45の性能を象徴するのが、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで記録したタイムです。
そのタイムは「7分32秒070」。
Mercedes-AMGによると、同セグメントにおける新記録となります。
680PSという数字だけを見ると、EV特有の強烈な直線加速に注目してしまいがちです。
しかし、ニュルブルクリンクでこのタイムを記録したという事実は、新型CLA 45が単なる「加速の速いEV」ではないことを示しています。
高出力を受け止めるシャシー、サスペンション、ブレーキ、四輪駆動制御、そして熱マネジメント。
AMGがこれまで高性能車で培ってきた技術が、EVという新しいパワートレインにも投入されています。
EVなのに「変速」する。エンジン音まで再現
新型CLA 45で特に興味深いのが「AMG FORCE S+」です。
一般的なEVには、エンジンの回転上昇も多段変速機によるシフトチェンジも必要ありません。
しかしMercedes-AMGは、それをあえて再現しました。
AMG FORCE S+では、ドライバーディスプレイにレブカウンターが表示され、パドルシフトを使って仮想7速トランスミッションを操作できます。
さらにevoによると、Mercedes-AMGは従来型A 45 Sに13本ものマイクを設置し、回転数やアクセル開度、負荷などの違いから約1,600種類のサウンドを収録したとされています。
しかも、単に車内スピーカーから音を流すだけではありません。
シートには振動を発生させる機構も組み込まれ、内燃機関が生み出していた振動や共鳴まで再現します。
合理性だけを考えれば、EVには必要のない機能です。
しかし、そこにこそMercedes-AMGが考える「AMGらしさ」が表れているのかもしれません。
AMGは「速さ」だけでは成立しない
EVはモーターとバッテリー技術の進歩によって、驚異的な加速性能を実現できるようになりました。
0-100km/h加速が3秒を切るという数字そのものも、以前ほど珍しいものではなくなりつつあります。
だからこそ、これからのAMGに求められるのは「何馬力あるのか」だけではないのではないでしょうか。
従来のCLA 45の魅力は、コンパクトなボディに強烈なエンジンを搭載し、音、振動、変速、四輪駆動によるトラクションなど、さまざまな要素が一体となって生み出す刺激にありました。
新型CLA 45の興味深いところは、Mercedes-AMG自身もその重要性を理解しているように見える点です。
だからこそ、EVになって本来必要なくなったはずの「音」や「変速」を、新しい技術によってあえて復活させています。
これは単なる演出なのでしょうか。
それとも、EV時代のAMGに必要な新しいドライビング体験なのでしょうか。
実際にステアリングを握ってみなければ答えは出ませんが、少なくともMercedes-AMGが電動化を「エンジンをモーターに置き換えるだけ」とは考えていないことが伝わってきます。
航続距離670km超、330kW急速充電にも対応

驚くべきは、これほどのパフォーマンスを持ちながら、実用性もしっかりと考えられている点です。
Mercedes-AMGによると、セダンのWLTP航続距離は670km以上。
さらに800V電気システムを採用し、最大330kWの急速充電に対応します。
条件が整えば、10%から80%までの充電時間は約22分。
10分間の充電で270km以上の航続距離を追加できるとされています。
ただし、ここで注意したいのが日本仕様です。
現時点では、この最大330kWという充電性能が日本市場でも利用できるかどうかは明らかになっていません。
日本と欧州では急速充電を取り巻く環境や規格が異なるため、日本仕様では充電性能や対応方法が変更される可能性があります。
また、今後OTA(Over-the-Air)アップデートによって対応範囲が拡大する可能性も考えられますが、現段階では正式な発表はありません。
680PSという圧倒的なパフォーマンスだけでなく、日本の充電環境でその性能をどこまで活かせるのか。
日本導入時には、車両価格とともに注目したいポイントのひとつです。
BMW M3より高出力で低価格、日本での価格設定にも注目
今回特に注目しているのが、新型CLA 45の価格設定です。
英国での価格はセダンが£66,750から、シューティングブレークが£67,750からとされており、680PSという最高出力を持ちながら、英国市場ではBMW M3よりも低い価格設定となっています。
もちろん、内燃機関を搭載するBMW M3と完全EVのCLA 45では、クルマとしてのキャラクターが大きく異なるため、価格や最高出力だけで単純に比較することはできません。
それでも、これまで上級スポーツセダンが担ってきたパフォーマンス領域にCLAが到達したことは、新型モデルを象徴するポイントのひとつと言えるでしょう。
一方、ドイツではCLA 45 4MATIC+セダンが79,039ユーロ(税込)から、シューティングブレークが80,408ユーロ(税込)からと発表されています。
そこで気になるのが、日本での販売価格です。
3モーターによる680PSのシステム出力、800Vアーキテクチャ、そしてニュルブルクリンクでの実績を考えれば、従来の「コンパクトAMG」とは異なる価格帯になる可能性もあります。
日本仕様の装備や充電性能とあわせて、どのような価格設定で導入されるのか注目したいところです。
MOTION & TIMEの視点|EVになってもAMGはAMGなのか

新型CLA 45を見て感じるのは、Mercedes-AMGが単に「EVでも速いクルマを作れる」ことを証明しようとしているわけではないということです。
680PSや0-100km/h加速2.7秒という数字だけなら、今後さらに速いEVが登場するでしょう。
重要なのは、その先です。
ステアリングを握った瞬間にAMGだと感じられるのか。
アクセルを踏み込んだときに高揚感があるのか。
コーナーを抜け、パドルを操作し、もう一度アクセルを踏み込んだときに「また運転したい」と思えるのか。
エンジンサウンドや仮想変速、さらにはシートの振動まで作り込んだのは、その答えをMercedes-AMG自身も探しているからなのかもしれません。
内燃機関のCLA45を知る人ほど、このアプローチには賛否が分かれるでしょう。
「本物のエンジンではないのに、そこまで再現する必要があるのか」と感じる人もいるはずです。
一方で、静かでシームレスなだけのEVではなく、ドライバーが積極的に操作して楽しめるEVを作ろうとしている点には、AMGらしいこだわりも感じられます。
EVになったからこそ、改めて問われる「AMGとは何か」。
新型Mercedes-AMG CLA 45 4MATIC+は、その答えを探すうえで非常に重要な一台になりそうです。
参考・出典:Mercedes-Benz / Mercedes-AMG / evo




