ランチアの伝説的なラリーカー「037」を現代の技術で蘇らせたKimera Automobili(キメラ・アウトモビリ)の「EVO37」が、オークションに登場します。
わずか37台という希少性だけでも十分に特別な存在ですが、今回注目したいのはその予想落札価格です。EVO37は登場当初、およそ45万ユーロからという価格で販売されていましたが、今回出品される個体には95万〜115万ユーロというエスティメートが設定されており、上限では新車価格の2倍を大きく超える計算になります。
しかも今回の個体が完成したのは2025年。EVO37は、わずかな期間でコレクターズカーとして別次元の価値を持ち始めているのかもしれません。
ランチア037を現代に蘇らせた「EVO37」

EVO37のモチーフとなったランチア Rally 037は、グループB時代を代表するラリーカーです。
特に有名なのが1983年の世界ラリー選手権で、四輪駆動のAudi Quattroが台頭していた時代に、後輪駆動の037がランチアにマニュファクチャラーズタイトルをもたらしました。
Kimeraは、その037を単純に復刻するのではなく、当時の雰囲気を残しながら現代の技術によって再構築するという方法を選択しました。
開発にはオリジナルの037に深く関わったセルジオ・リモーネや、ランチアのラリーエンジン開発で知られるクラウディオ・ロンバルディといった人物も関わっており、単なる「037風のレストモッド」とは一線を画す背景を持っています。
スーパーチャージャー+ターボで約500PS

EVO37には2.1リッター直列4気筒エンジンが搭載されますが、非常に興味深いのが過給システムです。
スーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせたツインチャージャー方式を採用し、今回出品される個体は498hp(約505PS)、最大トルク550Nmを発生します。
さらに、そのパワーを6速マニュアルトランスミッションを介して後輪だけに伝えるという構成も、現代の高性能車としては非常に珍しいものです。
| 項目 | Kimera EVO37 |
|---|---|
| エンジン | 2.1L 直列4気筒 |
| 過給方式 | スーパーチャージャー+ターボ |
| 最高出力 | 約505PS |
| 最大トルク | 550Nm |
| トランスミッション | 6速MT |
| 駆動方式 | 後輪駆動 |
| 0-100km/h加速 | 約3秒 |
| 最高速度 | 約310km/h |
| 生産台数 | 37台 |
シャシー側にもÖhlins製ダブルウィッシュボーンサスペンションやBrembo製カーボンセラミックブレーキなどが投入されているため、外観だけをクラシックカー風に仕立てたモデルではなく、現代のスーパーカーに匹敵する性能を持ったマシンとして作り込まれています。
今回出品されるのは37台中「18号車」

今回Broad Arrow Auctionsに出品されるのは、わずか37台が製造されたEVO37のうち18号車にあたる個体です。
完成したのは2025年で、走行距離はわずか237km。ボディには「Kimera Luci del Bosco」と呼ばれるメタリックブラウンが採用されており、このカラーはかつてのランボルギーニ・ミウラなどから着想を得たものとされています。
そこにブロンズ系のホイールを組み合わせ、インテリアには明るいベージュのレザーを採用。カーボンファイバー製バケットシートや露出したシフトゲートに加え、ウッド製シフトノブまで備わるなど、1970〜80年代のイタリア車を思わせる雰囲気と現代的な素材が絶妙に組み合わされています。
45万ユーロから最大115万ユーロへ

そして、このEVO37で最も興味深いのが価格です。
EVO37は登場当初、およそ45万ユーロからという価格で販売されていましたが、今回Broad Arrow Auctionsが設定した予想落札価格は95万〜115万ユーロとなっています。
単純比較では、新車時のスタート価格に対して2倍を超える水準です。
もちろん、これはあくまでオークション会社によるエスティメートであり、実際に115万ユーロで落札されることが保証されているわけではありません。そのため現時点で「EVO37の価値が2倍以上になった」と断定することはできませんが、100万ユーロ前後という評価が与えられていること自体、コレクター市場における注目度の高さを物語っています。
なぜEVO37はこれほど評価されるのか

EVO37の価値を支えているのは、単純な希少性だけではないでしょう。
生産台数はわずか37台であるうえ、現代では珍しくなった軽量ボディ、約500PSのツインチャージャーエンジン、6速MT、そして後輪駆動という組み合わせを採用しています。
さらに、オリジナル037に携わった人物が開発に参加していることも重要で、歴史的な名車を現代風に再解釈するレストモッドが増えるなかでも、EVO37にはランチアのモータースポーツ史との強いつながりがあります。
そして何より、こうしたクルマは大手メーカーが大量生産するスーパーカーとは異なり、今後同じものが簡単に増えることはありません。
「欲しい人はいるのに、市場に出てくるクルマがほとんどない」という状況そのものが、EVO37の価値を押し上げていると考えられます。
EVO37は新たなコレクターズカーになるのか

近年はSingerによるポルシェ911をはじめ、クラシックカーを現代の技術で再構築する高級レストモッドが、一つの市場として確立されつつあります。
EVO37もその流れに位置するモデルですが、37台限定という圧倒的な希少性に加え、ランチア037という強烈なモータースポーツの歴史を背景に持っていることを考えると、今後は単なるレストモッドではなく、一つの独立したコレクターズカーとして評価されていく可能性があります。
今回の18号車は2026年10月9日、ベルギーのKnokke-Heistで開催される「The Zoute Concours Auction」に出品される予定です。
果たして95万〜115万ユーロという予想価格に届くのか。それとも、それをさらに上回る価格が付くのか。
EVO37の落札結果は、この1台の価値だけではなく、近年急速に存在感を高めている「超高級レストモッド」という市場そのものの現在地を示す結果になりそうです。
参考・出典:Carscoops / Broad Arrow Auctions




