近年の新型車では、大型ディスプレイにエアコンや車両設定などの機能を集約するデザインが急速に広がっています。
ボルボもその流れを積極的に取り入れてきたメーカーのひとつですが、ここへ来て方向性を少し変えようとしているようです。
ボルボのデザイン責任者トーマス・インゲンラート氏が、今後のモデルでは物理ボタンを再び増やしていく方針を明らかにしました。
ただし、かつてのようにセンターコンソールを大量のスイッチで埋め尽くすわけではありません。ボルボが目指しているのは、タッチスクリーンと物理操作それぞれの長所を生かした、新しいインターフェースです。
ボルボも進めてきた「スクリーン中心」のインテリア
近年のボルボを見ると、センターディスプレイを中心に据えた非常にシンプルなインテリアが特徴となっています。
特にEX30やEX90などの新世代モデルでは、従来ならスイッチやダイヤルで操作していた機能の多くがディスプレイ内へ移され、車内から物理ボタンが大幅に減少しました。
見た目はすっきりとしており、ソフトウェアアップデートによって機能を追加・改善できるメリットもありますが、一方で運転中に操作する機能まで画面内に入れてしまうと、目的の機能を探すために視線をディスプレイへ向ける必要があります。
そこでボルボは、すべてをスクリーンに集約するのではなく「物理操作の方が適している機能」を改めて見直そうとしています。
「すべてをボタンに戻す」わけではない
今回の方針で興味深いのは、ボルボが単純に昔のインテリアへ戻ろうとしているわけではないことです。
インゲンラート氏は、昔のクルマのように何列ものボタンを並べるのではなく、タッチスクリーンが得意な操作はスクリーンに任せながら、常にアクセスする必要がある機能などについては物理操作を活用する考えを示しています。
つまり、
「スクリーンか、ボタンか」ではなく「どちらがその操作に適しているのか」
という考え方です。
これは今後の自動車インテリアを考えるうえで、非常に重要なポイントになりそうです。
物理ボタンそのものを「高級感」に利用
さらに面白いのが、ボルボが物理スイッチを単なる操作装置として考えていないことです。
インゲンラート氏は高級カメラのライカを例に挙げ、スイッチを押したときの感触や音、素材の質感、さらに機能ごとに異なる形状や操作方法を採用することで、物理操作そのものを上質な体験にできると説明しています。
クリックするスイッチ、上下に動かすトグル、回転させるダイヤルなど、それぞれの機能に適した操作方法を与えれば、ドライバーは視覚だけではなく指先でも機能を認識できます。
高級車にとってこれは重要なポイントで、巨大なディスプレイを搭載するだけでは表現しにくい「機械を操作している感覚」を、スイッチやダイヤルによって演出することもできます。
2027年にはボルボ創立100周年
今回の方向転換は、ボルボのデザインそのものが大きく変わろうとしているタイミングとも重なります。
ボルボは2027年に創立100周年を迎える予定で、それに合わせて次世代のデザインを示すコンセプトカーを発表する計画です。
さらに2030年末までには世界で13車種の新型モデルを投入する計画も報じられており、今回示された新しいインテリア思想が、これらのモデルへ段階的に反映されていく可能性があります。
単なる「ボタン復活」というニュースではなく、今後のボルボがどのようなクルマを作っていくのかを示す、ひとつの転換点と見ることもできそうです。
タッチスクリーン全盛時代は終わるのか
テスラの登場以降、自動車業界では大型ディスプレイへの機能集約が急速に進みました。
画面に機能をまとめればインテリアをシンプルにできるだけでなく、ソフトウェアによる変更も容易になります。その一方で、運転中に頻繁に使用する機能まで画面の中へ移すことが、本当に使いやすいのかという議論も続いています。
ボルボの新しい考え方は、デジタル化そのものを否定するものではありません。
むしろタッチスクリーンの便利さを残しながら、物理スイッチにしかできない直感的な操作や触感を組み合わせようとしている点がポイントです。
まとめ
ボルボが目指しているのは、単純な「物理ボタンへの回帰」ではなく、デジタルとアナログの再配置と言った方が近いでしょう。
ナビゲーションや情報表示などスクリーンとの相性が良い機能はデジタルに任せ、一方で頻繁に操作する機能には、触っただけでも分かるスイッチやダイヤルを用意する。
さらに、そのスイッチ自体の素材やクリック感、操作音までデザインすることで、高級車らしい質感につなげていくという考え方です。
ディスプレイの大型化やボタンレス化が進んできた自動車業界ですが、これからは「どれだけボタンを減らしたか」ではなく、デジタルと物理操作をどれだけ自然に組み合わせられるかが、インテリア設計の新しい競争軸になっていくのかもしれません。
参考・出典:Motor1 / Volvo Cars / Autocar


