メルセデス・ベンツが2026年に投入した新世代ラグジュアリーMPV「VLE」に、内燃機関を組み合わせたモデルが加わる可能性が一段と高まってきました。
欧州で目撃されたテスト車両は、一見するとすでに登場している電気自動車(EV)のVLEとほぼ同じ姿をしています。しかし、フロントには冷却用とみられる開口部を備えたグリルが設けられ、さらに車体左右には給油口・充電口と思われる2つのリッドが確認されており、電動化された内燃機関を搭載する開発車両である可能性が高いとみられています。
VLEはメルセデス・ベンツが「グランドリムジン」として位置付ける新世代MPVであり、これまでEVとしての先進性が大きく打ち出されてきました。それだけに、今回の内燃機関モデルの存在は、メルセデスの今後の電動化戦略を考えるうえでも非常に興味深い動きです。
EV版VLEとほぼ同じ姿、しかしフロントには大きな違い

今回目撃されたプロトタイプは、ボディそのものについてはEV版VLEとほぼ共通しているように見えます。
一方で大きく異なるのがフロントグリルです。EVでは大きな冷却用開口部を必要としませんが、テスト車両には内燃機関の冷却を目的としていると思われる開口部が設けられています。
さらに注目したいのが左右のリアフェンダー付近です。EV版では充電ポートが設置されていますが、今回の車両では反対側にもリッドが確認されており、燃料タンクと充電ポートを併用するハイブリッドシステムである可能性を示しています。
リア下部には排気系と思われる部品も確認されている一方、マフラーエンドは目立たないよう処理されており、外観上はEV版との差を最小限に抑える方向性になりそうです。
ガソリンハイブリッドか、それともディーゼルか
現時点で、メルセデス・ベンツはVLEの内燃機関モデルに搭載するエンジンを正式発表していません。
海外では、新型CLAにも採用される1.5リッター直列4気筒エンジンと電気モーターを組み合わせた電動パワートレインが候補として挙げられています。CLAでは8速DCT内部にモーターを組み込んだシステムが採用されているため、同様の技術をVLEへ展開する可能性は考えられます。
その一方で、別の情報ではメルセデスのOM654M系4気筒ディーゼルと9G-TRONICを組み合わせたマイルドハイブリッドになるとの見方も出ています。
VLEは乗用車としてだけではなく、ホテル送迎やVIPシャトルなど長距離を走る用途も想定されるモデルです。そのため、航続距離や給油時間を重視するユーザーにとってディーゼルとの相性は良く、従来のVクラスからの乗り換えを考えれば十分に現実的な選択肢でしょう。
したがって現段階では、「内燃機関+電動化」という方向性はかなり濃厚になってきたものの、ガソリンなのかディーゼルなのか、あるいは市場によって両方を展開するのかについては、正式発表を待つ必要があります。
VLEは最大409PS、EV版は700km超の航続距離
すでに発表されている電気自動車版VLEは、メルセデスが新世代バンの象徴として開発したモデルです。
| 項目 | VLE(EV) |
|---|---|
| ボディタイプ | ラグジュアリーMPV |
| 乗車定員 | 最大8名 |
| 最高出力 | 最大415PS(305kW) |
| 駆動方式 | 4MATIC設定あり |
| 航続距離 | WLTP 700km超 |
| 電気システム | 800V |
| Cd値 | 0.25 |
| 後席ディスプレイ | 最大31.3インチ・8K |
| OS | MB.OS |
最高出力は最大415PSに達し、4MATICも用意されます。また、800V電気システムを採用することで長距離移動と急速充電の両立を狙っており、従来の「電気自動車のミニバン」という枠を超え、Sクラスにも通じる移動空間を目指したモデルとなっています。
だからこそ、内燃機関版が登場するとしても単純な廉価版VLEになるとは限りません。パワートレインが違っても、MB.OSや豪華な後席装備を含め、VLEのプレミアム性そのものは基本的に維持される可能性が高いでしょう。
実はメルセデスは最初から内燃機関を捨てていなかった
今回のテスト車両を見ると「EV戦略からの方針転換」にも見えますが、VLEに内燃機関モデルが加わること自体は、必ずしも突然決まった話ではありません。
メルセデス・ベンツは新世代バン向けアーキテクチャについて、EV用の「VAN.EA(Van Electric Architecture)」だけでなく、内燃機関用の「VAN.CA(Van Combustion Architecture)」も用意することを以前から明らかにしています。
さらに重要なのは、VAN.EAとVAN.CAで約70%の部品を共通化し、同じ生産ラインで製造できるよう設計していることです。
つまりメルセデスは、EVか内燃機関かのどちらか一方に将来を賭けるのではなく、市場の需要に応じて生産比率を柔軟に変更できる仕組みを最初から用意していたことになります。
「EV一本足打法」を避けるメルセデスの現実的な戦略
ここが今回のニュースで最も重要なポイントかもしれません。
大型MPVはセダンやコンパクトSUV以上に、航続距離や充電時間が使い勝手へ直結するカテゴリーです。家族での長距離旅行はもちろん、空港送迎やホテル、ハイヤーなどのビジネス用途では、充電のために長時間車両を止めること自体がデメリットになる場合があります。
700kmを超えるWLTP航続距離や800V急速充電を実現したVLEであっても、数分で給油して再び数百km走れる内燃機関車の利便性が完全になくなったわけではありません。
そのため、EV版を技術的なフラッグシップとして位置付けながら、内燃機関を電動化したモデルも用意する戦略は、むしろVLEの販売対象を広げるうえで合理的です。
しかもVAN.EAとVAN.CAで約70%の部品を共有できるのであれば、メルセデス側にとっても需要の変化へ対応しやすくなります。
Vクラスの後継として日本市場でも注目したい

日本市場で考えると、この内燃機関版VLEはEV以上に注目すべき存在になるかもしれません。
現行Vクラスは、大型輸入MPVという非常に限られたカテゴリーで長年独自のポジションを築いてきました。一方、日本の高級MPV市場ではトヨタ・アルファード/ヴェルファイアが圧倒的な存在感を持っており、電気自動車のみではVクラスの既存顧客をすべて取り込むことは難しいでしょう。
そこで、VLEの先進的な内外装と従来型パワートレインの使いやすさを組み合わせることができれば、「EVにはまだ踏み切れないが、新型VLEには魅力を感じる」というユーザーにとって非常に有力な選択肢になります。
特にディーゼル系パワートレインが設定されれば、現在のVクラスユーザーにとって乗り換えのハードルは大幅に下がりそうです。
VLEは「EVの高級ミニバン」からパワートレインを選べるグランドリムジンへ
2026年3月にワールドプレミアされたVLEは、当初その800Vシステムや700km超の航続距離など、EVとしての性能に注目が集まりました。
しかし今回確認された内燃機関搭載プロトタイプと、メルセデスが以前から公表しているVAN.CA構想を合わせて考えると、VLEというモデルの本当の狙いがより鮮明になってきます。
メルセデスが目指しているのは「EVのVクラス」を作ることではなく、EVでも内燃機関でも成立する新世代のラグジュアリーMPVを構築することなのでしょう。
電動化への移行速度が地域によって大きく異なる現在、ひとつのボディと世界観を維持しながら複数のパワートレインへ対応できるVLEは、今後のメルセデス・ベンツの商品戦略を象徴する存在になるのかもしれません。
内燃機関版VLEの正式なエンジン構成や発売時期、そして日本への導入について、今後の正式発表に注目です。
参考・出典:CarBuzz / Mercedes-Benz Group / Mercedes-Benz Media / Carscoops / JESMB




