世界に1台だけ。あのブルネイ王室が注文したマットブラックのフェラーリ Enzoが販売へ

フェラーリの歴史を代表するハイパーカー「Enzo Ferrari(エンツォ・フェラーリ)」。

ただでさえ世界中のコレクターが探し求める希少なモデルですが、その中でも文字通り「世界に1台」しか存在しない特別なEnzoが売りに出されました。

今回RM Sotheby’sに登場したのは、2004年製のFerrari Enzo。

ボディを覆うのは、妖しい雰囲気を放つマットブラック。

しかし、これは後からラッピングやカスタムを施したEnzoではありません。

フェラーリがマラネロのファクトリーで正式に「Matte Nero Opaco(マット・ネロ・オパコ)」に仕上げた、唯一のEnzoです。

そして、この特別すぎる1台を新車でオーダーしたのが、クルマ好きなら聞いただけで納得してしまう「あのブルネイ王室」でした。

目次

フェラーリが作った唯一の「マットブラックEnzo」

現在では、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにマットカラーを選択することは、それほど珍しくありません。

しかし、このEnzoが製造された2004年当時は事情が大きく異なります。

EnzoのボディカラーといえばRosso Corsa(ロッソ・コルサ)が圧倒的に有名で、Giallo Modena(ジャッロ・モデナ)、Nero(ネロ)なども存在しました。

さらに一部の特別な顧客には、ブルーやシルバー、ホワイトなどの希少色も製造されています。

しかし、マットカラーとなると話は別です。

RM Sotheby’sによれば、新車時からマットカラーを指定されたEnzoは、この1台のみ。

ボディカラーの正式名称は「Matte Nero Opaco」。

つまり、後年になってオーナーがマットブラックへ塗り替えたEnzoではありません。

マラネロから正式にこの仕様で送り出された、本物のワンオフです。

しかも、フェラーリのハイパーカーとして初めてファクトリーからマットブラックで納車された個体でもあります。

オーダーしたのは「あのブルネイ王室」

そして、このEnzoをさらに特別な存在にしているのが、その来歴です。

世界に1台しかないマットブラックのEnzoをフェラーリにオーダーしたのは、ブルネイ王室のメンバーでした。

「ああ、あのブルネイか」と思ったクルマ好きも多いのではないでしょうか。

ブルネイ王室といえば、世界の自動車史に残るほど巨大かつ異次元のカーコレクションで知られる存在です。

フェラーリ、マクラーレン、ベントレー、ロールス・ロイス、アストンマーティンなど、世界を代表する名門メーカーのクルマを数多く所有。

しかも、単に市販されている高級車やスーパーカーを大量に購入していたという話ではありません。

一般には販売されなかった特別仕様車や、メーカーへ直接依頼して製作されたワンオフモデルまで数多く存在するとされ、そのコレクションは現在でも世界中の自動車ファンを魅了しています。

RM Sotheby’sも、このEnzoについて「あのブルネイ王室」の特別な影響力があったからこそ実現できた仕様であることを示しています。

そんな伝説的なコレクションの一角を担っていたのが、今回のマットブラックEnzoなのです。

2004年に「マットブラック」を選んだ先見性

今でこそ珍しくなくなったマットブラックですが、このEnzoの製造が始まったのは2004年6月8日。

完成したのは同年10月でした。

今から20年以上も前の話です。

しかもベースとなったのは普通のフェラーリではありません。

創業者エンツォ・フェラーリの名前をそのまま与えられた、当時のフェラーリ最高峰モデルです。

そのEnzoを「Matte Nero Opacoで作ってほしい」とオーダーする。

いかにも「あのブルネイらしい」1台ではないでしょうか。

インテリアもボディに合わせてNero(ブラック)のレザーを採用。

ブラックで統一された室内に、Rosso(レッド)のメーターが強烈なアクセントを加えています。

さらに大型サイズのシートも指定されました。

完成後はロンドンへ。「幻のEnzo」として目撃される

完成したマットブラックEnzoは、ブルネイへ直行したわけではありません。

最初に置かれたのは、ブルネイ王室が所有するロンドンの邸宅でした。

そしてハムステッド、メイフェア、ナイツブリッジといったロンドンの街中に、時折その姿を現していたといいます。

想像してみてください。

時は2004年。

ただでさえ見ることのできないFerrari Enzoがロンドンの街中を走っている。

しかも色は、見慣れたロッソ・コルサではなく漆黒のマットブラック。

そして、その正体はフェラーリが製造した世界唯一のファクトリー・マットブラック仕様です。

当時このクルマを目撃した人にとっては、まさに「謎の黒いEnzo」だったのかもしれません。

その後、このEnzoはアジア太平洋地域へ移されています。

2022年、11万ユーロ以上をかけて復活

長い年月を経て、このEnzoは2022年にヨーロッパへ戻ってきます。

そこで大規模なリフレッシュを担当したのが「Carrozzeria Zanasi」です。

ZanasiはフェラーリのハイパーカーやIconaシリーズ、Tailor Madeプログラムなどにも携わるスペシャリストとして知られています。

作業費用は合計11万ユーロ以上。

経年劣化したインテリアのスイッチ類をはじめ、前後ライトやリアボンネットガラスなどが交換されました。

そしてボディも、オリジナルと同じ「Matte Nero Opaco」で再塗装されています。

そのため、現在の塗装そのものが2004年当時から残されているわけではありません。

しかし、フェラーリがこのEnzoのために選んだオリジナルカラーを忠実に再現しています。

走行距離はわずか5,763km

驚くのは、その走行距離です。

今回のカタログ掲載時点で、オドメーターが示す数字はわずか5,763km。

20年以上前のクルマであることを考えると、極めて少ない走行距離です。

さらに2022年にはFerrari Classicheの認定も取得しています。

オリジナルのシャシー、エンジン、ギアボックス、ボディワークを保持していることも、この個体の価値を大きく高めています。

2024年8月には走行5,742kmの時点で整備が行われ、クラッチや左右の燃料ポンプなどを交換。

そこから今回の出品まで、ほとんど距離を伸ばしていません。

Ferrari Enzo|主要スペック

車名Ferrari Enzo
年式2004年
エンジン6.0L V型12気筒 自然吸気
最高出力約660PS(485kW)
最大トルク約657Nm
トランスミッション6速F1シーケンシャル
駆動方式MR(後輪駆動)
0-100km/h加速約3.6秒
最高速度約350km/h
今回の個体のボディカラーMatte Nero Opaco
インテリアNeroレザー/Rossoメーター
走行距離5,763km(カタログ掲載時)
シャシーナンバーZFFCZ56B000136069
認定Ferrari Classiche認定(2022年)

Enzoそのものがフェラーリ史に残る存在

もちろん、今回の個体が特別なのはボディカラーや来歴だけではありません。

Enzo Ferrariそのものが、フェラーリ史において極めて重要なモデルです。

F40、F50の系譜を受け継ぐスペシャルモデルとして2002年に登場し、車名にはフェラーリ創業者「Enzo Ferrari」の名が与えられました。

ミッドシップに搭載されるのは6.0リッターV型12気筒自然吸気エンジン。

最高出力は約660PSに達し、カーボンファイバー製モノコックやF1由来のテクノロジーを積極的に採用しています。

デザインを手掛けたのは、当時ピニンファリーナに所属していた日本人デザイナー、奥山清行氏。

F1マシンを思わせる鋭いノーズを持つスタイリングは、登場から20年以上が経過した現在でも一目でEnzoと分かる強烈な個性を放っています。

そして、その後のLaFerrari、さらにF80へとつながるフェラーリ最高峰モデルの歴史を語るうえでも欠かすことのできない1台です。

いったいいくらになる?Enzoの価格はすでに異次元へ

気になるのは、やはり今回の価格です。

RM Sotheby’sは予想価格を「Estimate Available Upon Request」としており、具体的な金額を公表していません。

しかし、近年のEnzoの市場価格を見ると、とんでもない世界になっています。

2026年にはRosso Dinoのワンオフカラーを持つEnzoがオンラインオークションで約1,302万ドルで取引されました。

さらに同年、別のEnzoが約1,788万ドルという金額で落札された例もあります。

そして今回の個体には、

・フェラーリが製造した唯一のMatte Nero Opaco仕様
・フェラーリ初のファクトリー製マットブラック・ハイパーカー
・「あのブルネイ王室」が新車でオーダー
・走行わずか5,763km
・Ferrari Classiche認定済み
・オリジナルのシャシー、エンジン、ギアボックス、ボディを保持

という、強烈な条件が揃っています。

もはや通常のEnzoの相場だけで価値を判断できる個体ではないでしょう。

まとめ|「あのブルネイ」が20年以上前に作らせた、世界唯一のEnzo

マットブラックのスーパーカー。

現在なら、それほど驚く組み合わせではないかもしれません。

しかし、このEnzoが完成したのは2004年です。

まだマットカラーがスーパーカーの定番になるはるか以前に、「あのブルネイ王室」はフェラーリへ特別なEnzoをオーダーしていました。

そしてフェラーリも、その要求に応えます。

こうして誕生したのが、世界でたった1台の「Matte Nero Opaco」のEnzoでした。

フェラーリの歴史を代表するV12ハイパーカー。

世界唯一のファクトリーカラー。

5,763kmという低走行。

Ferrari Classiche認定。

そして、その背景にある「あのブルネイ王室」の伝説的なカーコレクション。

単に「珍しい色のEnzo」というだけでは説明できないストーリーが、この1台には詰まっています。

20年以上前、ロンドンの街に時折姿を現していた謎のマットブラックEnzo。

その正体が今、再び世界のコレクター市場に姿を現しました。

果たして、この世界唯一のEnzoにはどれほどの値が付くのでしょうか。

参考・出典:Autoblog / RM Sotheby’s

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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