アストンマーティンと英国の名門モーターサイクルブランド「Brough Superior(ブラフ・シューペリア)」が、新型「AMB 002 Roadster」を発表しました。
これまで両社は「AMB 001」と「AMB 001 Pro」というサーキット専用モデルを送り出してきましたが、今回のAMB 002は大きく異なります。
アストンマーティンとブラフ・シューペリアのコラボレーションとして、初めて公道走行を可能にしたモーターサイクルです。
しかも単純にAMB 001を公道仕様へ変更したわけではありません。
AMB 002は完全な新設計モデルとして開発され、1083cc Vツインエンジン、わずか5kgのチタン製フレーム、カーボンファイバー製ボディなど、スーパーカーにも通じる素材と技術が惜しみなく投入されています。
世界限定300台という希少性も含め、これは「アストンマーティンのバイク」というより、2輪で表現されたアストンマーティンの世界観そのものと言えるかもしれません。
アストンマーティンがついに「公道」を走るバイクを作った

アストンマーティンとブラフ・シューペリアの協業は2019年に発表された「AMB 001」から始まりました。
その後、2022年にはさらに性能を追求した「AMB 001 Pro」が登場しています。
しかし、この2台はいずれもサーキット専用モデルでした。
今回登場したAMB 002 Roadsterは、ヘッドライトやミラーなど公道走行に必要な装備を備えた、両社初のロードリーガルモデルとなります。
しかもAMB 001をベースにした派生モデルではなく、既存部品の流用を避け、ゼロから設計・開発された完全な新型です。
心臓部は新開発1083cc Vツイン

AMB 002 Roadsterに搭載されるのは、新開発の1083cc 4ストローク水冷V型2気筒エンジンです。
最高出力は130bhp、最大トルクは110Nm。
数字だけを追い求めた高回転型エンジンではなく、公道で扱いやすく、なおかつ刺激的な走りを実現するため、低~中回転域で力強いトルクを発生するようにチューニングされています。
エンジンはフランス・トゥールーズにあるブラフ・シューペリア本社で設計から機械加工、組み立てまで行われます。
エンジンケースにも削り出し材をCNC加工するなど、量産バイクとは明確に異なる製造方法が採用されています。
AMB 002 Roadster スペック
| 項目 | AMB 002 Roadster |
|---|---|
| エンジン | 4ストローク水冷V型2気筒 |
| 排気量 | 1,083cc |
| 最高出力 | 130bhp |
| 最大トルク | 110Nm |
| 車両重量 | 190kg |
| フレーム | 削り出しチタン製バックボーンフレーム |
| フレーム重量 | 約5kg |
| 前後重量配分 | 50:50 |
| フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン式Fiorフォーク |
| ボディ | カーボンファイバー |
| 生産台数 | 世界限定300台 |
| デリバリー開始 | 2027年第3四半期予定 |
わずか5kg。削り出しチタンフレームを採用

AMB 002を象徴する技術のひとつが、チタン製フレームです。
ソリッドビレットから削り出されたフレームは、ブラフ・シューペリア独自のバックボーン構造を形成し、その重量はわずか約5kg。
一般的な構造と比較して大幅な軽量化を実現しています。
さらにカーボンファイバー製のボディパネルや燃料タンクを組み合わせることで、車両重量は190kgに抑えられています。
重量物を車体中央付近へ集めるマスの集中化も徹底され、前後重量配分は50:50を実現しました。
130bhpという最高出力だけを見ると現代のリッタースーパースポーツほど過激ではありません。
しかし190kgという軽量な車体と110Nmのトルクを組み合わせることで、公道では十分以上に刺激的なパフォーマンスが期待できます。
普通のフロントフォークではない「Fior式」

フロントサスペンションにもAMB 002ならではの特徴があります。
一般的なモーターサイクルに採用されるテレスコピックフォークではなく、ダブルウィッシュボーン構造の「Fiorフォーク」を採用しています。
このシステムはAMB 001 Proに採用された技術をさらに発展させたものです。
ステアリング入力とブレーキングによる力を分離できるため、フロントエンドのジオメトリーをより正確に維持できます。
さらにアンチダイブ特性によって、強いブレーキング時にも車体姿勢の変化を抑えることが可能です。
特にコーナリング中のブレーキングでは高い安定性が期待され、高速コーナーでの正確なステアリング性能と俊敏性にも貢献します。
デザインは完全に「アストンマーティン」

技術面をブラフ・シューペリアが担う一方、AMB 002の造形にはアストンマーティン・デザインスタジオの思想が色濃く反映されています。
カーボンファイバー製燃料タンクからサイドフェアリングへ続く滑らかなラインは、まるで磨き上げられた小石のような有機的なフォルムです。
サイドには三日月型のエアベントが設けられ、エンジン冷却と空気の流れを整える機能を担っています。
さらにアストンマーティンのスポーツカーを象徴する「サイドストレーキ」も、モーターサイクル用に再解釈されています。
単にアストンマーティンのエンブレムを取り付けたバイクではなく、四輪車で培われてきたデザイン言語そのものを二輪へ落とし込んでいる点がAMB 002の面白いところです。
世界限定300台、価格は約12万ユーロ
AMB 002 Roadsterは世界限定300台のみが製造されます。
海外報道では価格は税・輸送費別で約12万ユーロと報じられており、単純換算でも2000万円を超える領域に入る超高級モーターサイクルです。
もちろん一般的なバイクと価格を比較するモデルではありません。
削り出しチタンフレーム、カーボンファイバー、独自サスペンション、ハンドビルドによる生産、そしてアストンマーティンとブラフ・シューペリアという2つのブランドを考えれば、コレクターズアイテムとしての意味合いも非常に強いモデルです。
すでに注文受付は開始されており、最初のデリバリーは2027年第3四半期から予定されています。
まとめ|「アストンマーティンを所有する」新しい方法
AMB 002 Roadsterで興味深いのは、単純に高性能なバイクを作ろうとしていないことです。
最高出力130bhpという数字だけなら、さらに強力な市販モーターサイクルはいくらでも存在します。
しかしAMB 002が重視しているのは、軽量な車体、低重心、50:50の重量配分、独自のFior式フロントサスペンション、そしてアストンマーティンらしいデザインを組み合わせた「体験」です。
これはスペック競争のためのスーパーバイクではなく、公道で操る楽しさを徹底的に追求したラグジュアリー・スポーツバイクなのでしょう。
そして何より、これまでサーキットの中だけに存在していた「2輪のアストンマーティン」が、ついにナンバープレートを付けて公道へ出てきます。
世界限定300台。
街中でAMB 002と遭遇する可能性は極めて低いでしょう。
だからこそ、アストンマーティンのスポーツカー以上に珍しい「アストンマーティン」が誕生したと言ってもよさそうです。
参考・出典:Aston Martin / Brough Superior / Motor1




