Mercedes-AMGが開発を進めている次期「AMG GT Black Series」について、新たな情報が明らかになってきました。
MOTION & TIMEでは以前、次期Black Seriesが新世代Mercedes-AMG GT3レーシングカーと並行して開発され、2027年の登場が予想されていることをお伝えしましたが、その後も開発は着実に進んでいるようです。

当時はまだ詳細なスペックがほとんど明らかになっていなかったものの、最新の開発車両からはその姿が徐々に見え始めています。なかでも注目したいのが、800馬力を超える可能性を秘めたV8エンジンとDRSを備えた巨大なリアウイング、そしてPHEVによる大出力ではなく、軽さを重視したパワートレインとなる可能性です。
ライバルとして強く意識されるPorsche 911 GT3 RSに対し、Mercedes-AMGはV8ならではの圧倒的なパワーと高度な空力性能でどのような答えを出すのでしょうか。今回は、前回の記事からさらに具体的になってきた次期AMG GT Black Seriesの最新情報を詳しく見ていきます。
開発が進み、Black Seriesの姿が見えてきた

前回お伝えした段階でも、次期AMG GT Black Seriesが単なる「AMG GTの高出力版」ではないことは明らかになっていました。
新世代AMG GT3レーシングカーと密接な関係を持ち、公道を走れるモデルでありながらモータースポーツの技術を色濃く反映した一台になるとみられていますが、今回の続報では、その思想を実現するための具体的なメカニズムが少しずつ見えてきています。
特に注目されているのが、新世代4.0リッターV8ツインターボ、DRS付きの大型リアウイング、サイドエグゾースト、サーキット走行を重視したサスペンションなどです。
これらが市販モデルにも採用されれば、現行AMG GT 63やGT 63 PROとは明確に異なる、GT3レーシングカーに限りなく近いロードカーが誕生することになります。
V8は800馬力を超える可能性も

今回の情報で特に気になるのが、やはりエンジンです。
次期Black Seriesには、新世代のM177 Evo系4.0リッターV8ツインターボが搭載されるとみられており、フラットプレーンクランクを採用するこのV8には、Black Series専用の大幅なチューニングが施される可能性があります。
evoによれば最高出力は少なくとも720bhp(約730ps)以上が予想され、さらにエンジンそのものには800bhp(約811ps)を超えるポテンシャルがあるとされています。
もちろん、現時点で「800馬力超」が正式に発表されたわけではありませんが、仮に市販モデルでも800bhp級まで引き上げられれば、730psを発生した先代AMG GT Black Seriesを大幅に上回ることになります。
次期AMG GT Black Seriesの予想スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エンジン | 4.0L V8ツインターボ |
| エンジン系統 | M177 Evo系と予想 |
| クランクシャフト | フラットプレーンクランク |
| 最高出力 | 720bhp(約730ps)以上と予想 |
| エンジンのポテンシャル | 800bhp(約811ps)超の可能性 |
| 電動化 | 48Vマイルドハイブリッドの可能性 |
| PHEV | 採用しない可能性 |
| トランスミッション | 未発表 |
| 駆動方式 | 未発表 |
| 発表時期 | 2027年と予想 |
| 英国予想価格 | 約30万ポンド(約6,270万円) |
※現時点では正式スペックは発表されておらず、海外メディアによる予想を含みます。日本円は2026年9月時点の為替をもとにした概算です。
800馬力より気になる「PHEVを使わない」という選択
800馬力という数字は確かに強烈ですが、次期Black Seriesを考えるうえでは、それ以上にパワートレインの構成が重要かもしれません。
現行AMG GTシリーズには、V8エンジンと電気モーターを組み合わせることで非常に大きなシステム出力を実現した「AMG GT 63 S E PERFORMANCE」が存在します。一方、Black Seriesでは重量増につながる大型バッテリーやモーターを搭載せず、V8エンジンを中心とした比較的シンプルな構成になる可能性が伝えられています。
Black Seriesに求められるのは、AMG GTシリーズの中で最も大きな最高出力の数字を掲げることではなく、サーキットで速く走るための総合性能です。
仮に800馬力前後を実現しながらPHEVを避け、車両重量を大幅に抑えることができれば、その意味は単純なパワーアップ以上に大きなものになるでしょう。
巨大リアウイングにはDRSを採用か
そして、今回の開発車両でエンジン以上に強烈な存在感を放っているのが、車幅いっぱいに広がる巨大なスワンネック式リアウイングです。
evoによれば、このリアウイングにはDRS(Drag Reduction System)が組み込まれるとみられており、コーナリング時には大きなダウンフォースを発生させながら、ストレートではウイングの空力特性を変化させてドラッグを低減する仕組みになります。
この考え方はPorsche 911 GT3 RSにも採用されており、両車の戦いではエンジン性能だけでなく、アクティブエアロをどこまで高度に制御できるかも大きなポイントになりそうです。
フロント側にもアクティブエアロ?
興味深いのは、空力制御がリアウイングだけで完結しない可能性があることです。
開発車両のフロントには大型スプリッターが装着されており、こちらにも調整機構が採用される可能性があります。リア側のDRSを作動させれば前後のダウンフォースバランスも変化するため、フロント側も連動して制御することで、車両全体の空力バランスを維持する狙いがあると考えられます。
さらにフロントフェンダー周辺には、ホイールハウス内部に溜まった高圧の空気を排出するための開口部も確認されており、次期Black Seriesでは単に巨大なウイングを装着するのではなく、ボディ全体をひとつの空力デバイスとして利用する思想がさらに強まりそうです。
サイド出しマフラーにも意味がある?
開発車両をよく見ると、通常のAMG GTとは明らかに異なるサイドエグゾーストも確認できます。
見た目のインパクトだけでもBlack Seriesらしい装備ですが、排気系をリアから移動させることができれば、リアディフューザー周辺の設計自由度を高められるでしょう。
次期モデルには巨大なリアディフューザーも確認されているため、リアウイングだけに頼るのではなく、車体下面を流れる空気まで積極的に利用してダウンフォースを生み出そうとしていることがうかがえます。
ロードカーでありながら、空力設計の考え方はGT3レーシングカーにかなり近づいているのかもしれません。
サスペンションも通常のAMG GTとは別物に?
サスペンションについても、現行AMG GTとは異なるアプローチが採用される可能性があります。
通常のAMG GTには高度なアクティブサスペンションが採用されていますが、Black Seriesでは快適性よりもサーキットでのセットアップ自由度を重視し、細かな調整が可能なコイルオーバー式サスペンションが採用される可能性が報じられています。
大径カーボンセラミックブレーキや多段階で調整できるトラクションコントロールなども組み合わされれば、ドライバー自身がタイヤやサーキット、路面状況に合わせてクルマを仕上げていく、レーシングカーに近い楽しみ方ができそうです。
911 GT3 RSだけでなく、GT2 RSの領域へ?
次期AMG GT Black Seriesのライバルとして最も強く意識されるのが、Porsche 911 GT3 RSです。
どちらも巨大なエアロデバイスを備え、最高速よりもサーキットでのラップタイムを重視するという点では共通していますが、両車がそこへ到達するためのアプローチは大きく異なります。
911 GT3 RSが自然吸気フラット6、軽量な車体、そして極めて高度な空力性能を武器とする一方、AMGはツインターボV8による圧倒的なパワーを加えることで対抗するとみられます。
もし次期Black Seriesが本当に800馬力級へ到達するのであれば、パワーだけを見ればGT3 RSよりも、むしろ911 GT2 RSに近い領域です。
ただし、サーキットでは最高出力だけで速さが決まるわけではありません。AMGが今回どこまで軽量化に踏み込み、強大なV8パワーと空力性能をひとつにまとめられるのかが、このクルマを理解するうえで重要なポイントになりそうです。
価格は約30万ポンド、日本円で約6,270万円か
価格についても、少しずつ予想が出始めています。
evoは英国で約30万ポンドになる可能性を挙げており、2026年9月時点の為替で単純換算すると約6,270万円です。
もちろん、日本へ正式導入された場合にそのまま6,000万円台になるとは限らず、為替や税金、日本向け仕様などによって大きく変わる可能性があります。それでも通常のAMG GTとは明確に異なる価格帯となり、Black Seriesの名にふさわしい特別なモデルになることは想像に難くありません。
前回から大きく変わったのは「具体性」
前回MOTION & TIMEで次期Black Seriesを取り上げた際には、AMGがどのような方向性のクルマを目指しているのかが中心でした。
それから開発が進み、今回は800馬力を超える可能性を持つV8、DRS付きリアウイング、フロントエアロ、サイドエグゾースト、そしてサーキット向けサスペンションなど、より具体的な姿が見えてきています。
まだ正式スペックが発表されたわけではないものの、次期Black Seriesが単なる「AMG GT 63 PROのさらに速いモデル」ではないことは、より鮮明になってきました。
新世代GT3レーシングカーとロードカーの境界をどこまで縮められるのか――そこに今回のBlack Series最大の面白さがありそうです。
MOTION & TIMEの視点
前回の記事では、次期Black Seriesが「ナンバープレートを付けたレーシングカー」に近い存在になる可能性について触れましたが、今回見えてきた内容を見ると、その表現は決して大げさではなかったのかもしれません。
特に興味深いのは、単純にPHEVを使って最高出力を引き上げるのではなく、V8を中心としたパワートレインと徹底した空力性能によって速さを追求する可能性があることです。
個人的には「800馬力を超えるか」以上に、最終的な車両重量が気になります。仮に730〜750ps程度に抑えられたとしても、大幅な軽量化と高度な空力性能が組み合わされるのであれば、その方がBlack Seriesという名前には似合うようにも感じます。
そして、最後にどうしても気になるのがニュルブルクリンクです。
先代AMG GT Black Seriesはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで6分48秒047を記録し、当時の市販車最速記録を樹立しました。新型がその後継モデルとして登場する以上、Mercedes-AMGが再びニュルブルクリンクでタイムアタックを行うのか、そして911 GT3 RSをはじめとするライバルに対してどのようなタイムを刻むのかにも注目です。
800馬力級のV8とDRS、GT3レーシングカーと並行して磨き上げられるシャシーと空力性能――次期AMG GT Black Seriesの輪郭は、前回お伝えした時よりも確実にはっきりしてきました。
2027年と予想される正式発表に向け、今後さらに具体的なスペックが明らかになってくるのを楽しみに待ちたいところです。
参考・出典:evo / Mercedes-AMG




