英国を代表する超高級車ブランド、ロールス・ロイスとベントレー。
現在も販売台数ではベントレーが上回っていますが、その差は急速に縮まりつつあります。
2025年の世界販売では、ロールス・ロイス1台に対してベントレーがおよそ1.8台という割合になりました。
2000年代初頭には両ブランドの販売規模にはさらに大きな差がありましたが、ロールス・ロイスは「台数を追わない」という超高級ブランドとしての姿勢を維持しながら販売規模を拡大しています。
その背景には、カリナンやゴースト、そしてブランド初のEVとなったスペクターの成功があります。
かつては大差があったロールス・ロイスとベントレー
両ブランドの現在を理解するうえで重要なのが、2003年です。
この年からロールス・ロイス・モーター・カーズはBMWグループのもとで本格的な事業を開始しました。
一方、ベントレーはフォルクスワーゲングループの傘下となり、両ブランドはそれぞれ異なる道を歩み始めます。
当時の販売規模には大きな差がありました。
| 年 | ベントレー | ロールス・ロイス | 販売台数の差 |
|---|---|---|---|
| 2003年 | 1,017台 | 約300台 | 約3.4倍 |
| 2011年 | 7,003台 | 3,538台 | 約2.0倍 |
| 2019年 | 約1.1万台 | 5,152台 | 約2.3倍 |
| 2024年 | 約10,600台 | 5,712台 | 約1.9倍 |
| 2025年 | ロールス・ロイスの約1.8倍 | 5,664台 | 約1.8倍 |
つまり、販売台数そのものでは依然としてベントレーが上ですが、両社の距離は着実に縮まっていることが分かります。
ロールス・ロイス躍進の大きな転機となった「カリナン」

この差を縮める大きなきっかけとなったのが、2018年に登場したSUV「カリナン」です。
SUV人気が世界的に高まるなか、ロールス・ロイスも従来のファントムやゴーストといったセダン中心のラインアップから市場を拡大しました。
カリナンはロールス・ロイスならではの圧倒的なラグジュアリー性を維持しながら、SUVならではの実用性を組み合わせたモデルです。
その結果、従来のショーファードリブン需要だけではなく、自らステアリングを握るオーナーからも支持を集めました。
現在ではカリナンはロールス・ロイスを代表するモデルのひとつとなっています。
ベントレーは「より幅広いラグジュアリー市場」をカバー
一方のベントレーもSUV市場への参入は早く、2015年にベンテイガを発表しました。
さらにコンチネンタルGT、フライングスパーなど、スポーティなモデルを含めた幅広いラインアップを展開しています。
| ブランド | 主なモデル | 特徴 |
|---|---|---|
| Rolls-Royce | Phantom / Ghost / Cullinan / Spectre | 超高級・希少性・Bespokeを重視 |
| Bentley | Continental GT / Flying Spur / Bentayga | 高級性とスポーツ性能を両立 |
両ブランドは同じ英国の超高級車メーカーとして比較されることが多いものの、現在のポジショニングは少し異なります。
ベントレーがラグジュアリーGTやSUVを含む比較的幅広い市場を狙っているのに対し、ロールス・ロイスはさらに上の価格帯と希少性を重視しています。
スペクターがロールス・ロイスに新たな顧客をもたらした
そして近年のロールス・ロイスを語るうえで欠かせないのが、ブランド初の量産EV「スペクター」です。
ロールス・ロイスにとって電動化は、単なる環境対応だけではありません。
モーターによる静粛性や滑らかな加速は、もともと同社が追求してきた「Magic Carpet Ride」と非常に相性が良いものです。
実際、2024年にはスペクターが欧州市場で最も需要の高いロールス・ロイスとなり、世界でもカリナンに次ぐ人気モデルとなりました。
| 2024年 ロールス・ロイス人気モデル | 順位 |
|---|---|
| Cullinan | 1位 |
| Spectre | 2位 |
| Ghost | 3位 |
EV化によってロールス・ロイスの魅力が失われるどころか、ブランドがもともと持っていた「静かで滑らかな移動空間」という価値をさらに強調する結果になっています。
販売台数だけでは測れないロールス・ロイスの戦略

ここで重要なのは、ロールス・ロイスが単純にベントレーの販売台数を追いかけているわけではないという点です。
ロールス・ロイスはBespokeと呼ばれるオーダーメイドプログラムを非常に重視しています。
ボディカラーや内装素材だけではなく、顧客の希望に応じた極めて高度なカスタマイズを行うことで、1台あたりの価値を高めています。
2024年にはBespokeコンテンツの採用額が過去最高を記録しました。
つまり、「より多くのクルマを売る」というよりも、「1台をより特別な存在にする」という方向へ進んでいるのです。
ベントレーもMullinerによるパーソナライゼーションを強化しており、2024年に販売された車両の約70%が何らかのMullinerコンテンツを装着していました。
販売台数ではベントレー、それでも差は確実に縮まっている

販売台数だけを見ると、現在もベントレーがロールス・ロイスを上回っています。
しかし、約20年前と比較すると状況は大きく変化しました。
かつて3倍以上あった販売規模の差が、2025年には約1.8倍まで縮小しています。
その中心にあるのがカリナンであり、さらにスペクターというEVが新しい顧客層を取り込んでいます。
興味深いのは、ロールス・ロイスが販売台数を大幅に増やしながらも、ブランドの希少性を失っていないことです。
むしろBespokeを強化することで、「大量生産とは正反対の方向」で事業規模を拡大しています。
まとめ|ロールス・ロイスとベントレーは同じ方向を目指しているわけではない
ロールス・ロイスとベントレーは長い歴史を共有してきたブランドですが、現在では異なるラグジュアリー戦略を歩んでいます。
ベントレーはコンチネンタルGTやベンテイガを中心に、スポーツ性とラグジュアリーを融合した幅広いモデルを展開。
一方のロールス・ロイスは、ファントム、カリナン、スペクターなどを通じて、さらに高い価格帯と希少性を追求しています。
そのため「どちらが上か」を販売台数だけで判断することは難しいでしょう。
ただし、20年以上にわたる販売台数の推移を見ると、ロールス・ロイスが着実にベントレーとの差を縮めていることは明らかです。
カリナンによってSUV市場を開拓し、スペクターによって電動化時代にもブランドの価値を維持したロールス・ロイス。
今後この差がさらに縮まり、年間販売台数でもベントレーに迫ることになるのか、世界最高峰の英国ラグジュアリーブランドの競争は非常に興味深いものになりそうです。
参考・出典:Motor1 / Rolls-Royce Motor Cars / Bentley Motors




