英国を代表する個性的なグランドツアラー「Jensen Interceptor(ジェンセン・インターセプター)」が、約60年の時を経て現代に蘇りました。
Jensen International Automotiveが発表した「Interceptor GTX」は、クラシックカーを単純にレストアしたモデルではありません。
オリジナルのデザインや思想を受け継ぎながら、新設計のシャシーと強烈なV8エンジンを組み合わせた、まったく新しいマシンです。
その最高出力は、実に960hp。
近年の復刻モデルでは珍しいほど、豪快でアナログな方向へ振り切った一台となっています。
60年前の名車「Jensen Interceptor」が現代に復活

オリジナルのJensen Interceptorが登場したのは1966年です。
英国車でありながらイタリアンテイストを感じさせるスタイリングと、大排気量のアメリカンV8を組み合わせた独特なグランドツアラーとして知られています。
特に巨大な曲面リアガラスを備えたファストバックスタイルは、Interceptorを象徴するデザインのひとつです。
そして誕生から60年を迎えるタイミングで、その思想を現代的に再解釈したのが「Interceptor GTX」です。
重要なのは、今回のGTXが既存のInterceptorをベースに改造した一般的なレストモッドではないということです。
新たなアルミニウム製シャシーを採用するなど、現代の高性能車として大幅な再設計が行われています。
6.8LスーパーチャージドV8から960馬力

Interceptor GTX最大の見どころと言えるのが、そのパワートレインです。
搭載されるのは、LME(Late Model Engines)が手掛けた6.8L V8スーパーチャージドエンジンです。
C7世代のChevrolet Corvette ZR1に搭載されたLT5をルーツに持ちながら、内部には鍛造クランクシャフトやコンロッド、CNC加工されたシリンダーヘッド、チタンバルブなどを採用。
最高出力は960hp、最大トルクは約1,356Nmという驚異的な数値を発生します。
さらにエンジン自体には、最大1,200hpクラスまで対応できるポテンシャルがあるとされています。
Jensen Interceptor GTX 主要スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| エンジン | 6.8L V8 スーパーチャージャー |
| 最高出力 | 960hp |
| 最大トルク | 約1,356Nm(1,000lb-ft) |
| 最高回転数 | 約7,000rpm |
| トランスミッション | 6速シーケンシャル |
| 駆動方式 | FR(後輪駆動) |
| 車両重量 | 約1,650kg |
| 0-60mph加速 | 約2.8秒(推定) |
| シャシー | アルミニウム |
| ボディ | アルミニウム+カーボン |
| ダウンフォース | 約350kg |
| 用途 | サーキット向けプロトタイプ |
960hpものパワーを後輪だけで受け止めるという構成からも、このクルマが現代の一般的な高性能GTとは異なる方向性を目指していることが分かります。
オリジナルの面影を残しながら徹底的に進化

Interceptor GTXのデザインには、オリジナルInterceptorの特徴が随所に残されています。
特にファストバック形状や大きなリアガラスなどは、一目でInterceptorとのつながりを感じさせるポイントです。
一方で、巨大なリアウイングやフロントスプリッター、リアディフューザーなど、現代の高性能マシンらしい空力パーツも追加されています。
クラシックGTの優雅なスタイリングと、現代のレーシングカーを思わせるエアロダイナミクス。
一見すると相反する2つの要素を融合させている点も、GTXの大きな特徴です。
エアロパーツによって発生するダウンフォースは、約350kgに達するとされています。
インテリアも本格的なサーキット仕様

外観だけではありません。
GTXのインテリアも、本格的な走行を前提とした仕様になっています。
Tillett製カーボンコンペティションシートや6点式ハーネスをはじめ、FIA規格のロールケージやLifeline製消火システムなどを装備。
オリジナルInterceptorが持っていた豪華なグランドツアラーという性格とは異なり、GTXは極めてストイックなマシンに仕上げられています。
つまりGTXは、新生Jensenがどこまで高性能なクルマを作れるのかを示す「走る技術実証車」と考えたほうが分かりやすいでしょう。
本当に注目すべきは公道仕様「GTR」と「GT」

そして今回の発表でGTXそのものと同じくらい興味深いのが、その先に計画されている公道仕様です。
GTXで得られた技術やノウハウを活用し、将来的には公道走行可能な「Interceptor GTR」の開発が構想されています。
さらにその後には、よりグランドツアラーとしての性格を強めた「Interceptor GT」へと発展する計画もあります。
GTX:サーキット/技術実証モデル
↓
GTR:公道走行可能な高性能モデル
↓
GT:4人乗りのラグジュアリー・グランドツアラー
という流れです。
つまり今回発表されたGTXは、新型Interceptorシリーズの完成形ではありません。
むしろ「Jensen復活計画」のスタート地点と言える存在なのです。
価格は億円クラスになる可能性も

当然ながら、これだけ特殊なマシンだけに価格も一般的なスーパーカーとは大きく異なる可能性があります。
GTXと同等の仕様を製作する場合、海外メディアでは約120万ドル規模になる可能性が伝えられています。
さらに将来登場する公道仕様についても、仕様によっては200万ドルを超える可能性があります。
正式な市販価格ではないものの、Jensenが一般的な量産高級車ではなく、極めて少数の顧客に向けたビスポークモデルを目指していることがうかがえます。
PaganiやKoenigseggなどに代表される超少量生産のハイエンド市場に、英国の歴史あるブランドが独自の方法で挑戦することになるのかもしれません。
なぜJensen Interceptorは特別なのか

Interceptorの面白さは、単純な英国製高級GTではなかったことにあります。
英国ブランドでありながら、スタイリングにはイタリア的な要素を取り入れ、そこへアメリカ製の大排気量V8を組み合わせるという非常にユニークなクルマでした。
国籍や伝統に縛られるのではなく、「魅力的なGTを作るために必要なものを組み合わせる」という考え方です。
約60年後に登場したGTXも、その思想を受け継いでいるように見えます。
現代ではEV化、電動化、デジタル化が急速に進んでいます。
その中でJensenが選択したのは、大排気量V8、スーパーチャージャー、後輪駆動、そしてドライバーを中心としたアナログな走行体験でした。
時代に逆行しているようにも見えますが、だからこそGTXには強烈な個性があります。
まとめ──本当のJensen復活はこれから
Jensen Interceptor GTXは、単なる「昔の名車の復刻版」ではありません。
オリジナルInterceptorのデザインと思想を現代に受け継ぎながら、960hpを発生する6.8LスーパーチャージドV8や新設計シャシー、本格的なエアロダイナミクスを組み合わせた、極めて野心的なプロジェクトです。
そして何より重要なのは、GTXが最終目的ではないことでしょう。
今後計画されるGTR、そしてラグジュアリーGTへとプロジェクトが発展すれば、Interceptorという一台の名車だけではなく、「Jensen」というブランドそのものが現代に復活する可能性があります。
60年の時を経て、再び動き始めたInterceptor。
960hpという数字以上に注目したいのは、この一台が新たなJensenの歴史を始める存在になるのかという点です。
本当の復活劇は、これから始まるのかもしれません。
参考・出典:Motor1 / MotorTrend / Wallpaper

