アストンマーティンの歴史の中でも、ひときわ異彩を放つモデル「ラゴンダ」。
そのラゴンダをベースに製作された、世界に1台しか存在しないシューティングブレークがオークションに登場します。
出品されるのは1987年式「Aston Martin Lagonda Series 3 Shooting Brake by Roos Engineering Ltd」。
単なるカスタムカーではありません。スイスのアストンマーティン専門企業Roos Engineeringによって製作され、さらにアストンマーティン本社の承認を受け、純正部品の供給を受けながら完成した特別な1台です。
予想落札価格は25万〜35万スイスフラン。日本円に換算すると、およそ4,700万〜6,600万円という非常に高額な価格帯となっています。
ベースとなったのは1987年式ラゴンダ Series 3

今回の車両のベースとなったのは、1987年式のアストンマーティン・ラゴンダ Series 3です。
ラゴンダといえば、1970〜80年代の高級車とは思えないほど大胆なウェッジシェイプと、当時としては極めて先進的だったデジタルメーターなどで知られています。
なかでもSeries 3はわずか76台しか生産されなかったとされ、通常のセダンであっても非常に希少なモデルです。
ラゴンダ Series 3 Shooting Brake主要スペック
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 年式 | 1987年 |
| ベースモデル | Aston Martin Lagonda Series 3 |
| ボディ | シューティングブレーク |
| エンジン | V8 ガソリン |
| 最高出力 | 305hp(約309PS) |
| トランスミッション | 4速AT |
| 駆動方式 | FR |
| ボディカラー | Antrim Blue |
| インテリア | Grey Connolly Leather |
| 製作 | Roos Engineering Ltd |
| コンバージョン期間 | 1996〜2000年 |
| Series 3生産台数 | 76台 |
| シューティングブレーク | 1台のみ |
4年をかけてシューティングブレークへ改造

このラゴンダが現在の姿になったのは、新車時ではありません。
1996年にオーナーがスイスのRoos Engineeringへ車両を持ち込み、シューティングブレークへのコンバージョンを依頼しました。
そこから完成までにかかった期間は、なんと約4年間。
2000年にようやく完成しています。
製作にあたっては車両を大規模に分解し、単純にルーフを延長するような改造ではなく、ボディ後半部分をほぼ新たに設計するほどの作業が行われました。
リアセクションのウインドウやラゲッジスペース周辺のボディパネルなども専用品として製作されています。
アストンマーティン自身が製作をサポート

このクルマを特別な存在にしている最大の理由のひとつが、アストンマーティン自身がプロジェクトを承認していたことです。
コンバージョンを担当したRoos Engineeringに対して、アストンマーティンは純正スペアパーツを供給。
つまり、メーカーとは無関係に製作された単なるワンオフカスタムではなく、メーカー側の協力を得ながら完成したシューティングブレークなのです。
Broad Arrowによれば、Series 3をベースとしたシューティングブレークとしてアストンマーティンから正式な承認を受けた車両は、この1台のみとされています。
希少なSeries 3をベースに、さらにメーカー公認でワンオフボディを製作するという、現代では考えにくいプロジェクトだったことが分かります。
エンジンやトランスミッションまで徹底的に再構築
変更されたのはボディだけではありません。
搭載される燃料噴射式V8エンジンは一度完全に分解され、Roos Engineeringによってリビルドされています。
最高出力は305hp(約309PS)。
さらに4速オートマチックトランスミッションにも大幅な改良が施されました。
エンジンマネジメントコンピューターのアップデートに加え、電装系の配線も刷新。
シューティングブレーク化によってリア部分の重量が増加したため、専用リアショックアブソーバーまで製作されています。
外観だけを変えたショーカーではなく、実際に使用することを前提として細部まで作り込まれている点が非常に興味深いところです。
テールゲートを開けた状態まで考えられた設計

シューティングブレーク化によって大型のテールゲートが追加されていますが、ここにもユニークな工夫があります。
テールゲートを開けた際にも後方から灯火類が確認できるよう、リアのパーキングライトやシグナルライトを専用設計。
さらに、テールゲートを開けた状態で排気ガスが室内へ侵入することを防止するための安全システムまで設計されています。
インテリアにはConnollyレザーとアルカンターラを採用し、ラゲッジスペースのカーペットなども専用品として製作されました。
単に「ラゴンダの屋根を延長した」というレベルではなく、1台の完成車として成立させるためのエンジニアリングが施されています。
独特すぎるウェッジシェイプはさらに強烈に

オリジナルのラゴンダ自体が、極端に低く長いウェッジシェイプを特徴とするクルマです。
そこからルーフラインをリアまで延長したことで、このシューティングブレークはさらに独特なプロポーションとなりました。
通常のステーションワゴンとはまったく異なり、1970〜80年代の未来予想図をそのまま具現化したかのようなスタイルです。
ボディは「Antrim Blue」に塗装され、グレーのConnollyレザーインテリアとの組み合わせも非常に英国車らしいものとなっています。
好き嫌いがはっきり分かれそうなデザインではありますが、世界に1台という背景を考えれば、この個性こそが最大の魅力ともいえるでしょう。
予想落札価格は最大約6,600万円
このラゴンダ・シューティングブレークは、2026年11月7日にスイス・チューリッヒのThe Dolder Grandで開催されるBroad Arrow Auctions「The Zürich Auction」に出品される予定です。
予想価格は、
250,000〜350,000スイスフラン
となっています。
日本円では為替レートによって変動しますが、およそ4,700万〜6,600万円前後に相当する価格帯です。
さらに今回は**リザーブなし(最低落札価格なし)**で出品されます。
車両にはアストンマーティンのオリジナル・ビルドシートのデジタルコピーや、シューティングブレークへのコンバージョンに関する当時の請求書なども付属します。
「オリジナルではない」ことが価値になる珍しい1台
クラシックカーの世界では、一般的にオリジナル状態を維持している個体ほど高く評価される傾向があります。
特に生産台数の少ないモデルを大幅に改造することは、現在であればコレクターから敬遠される可能性もあります。
しかし、このラゴンダは少し事情が異なります。
Series 3自体が76台しか存在しないうえ、アストンマーティンの承認を得て、専門企業が4年を費やして製作した世界唯一のシューティングブレークです。
そのため「改造されているから価値が低い」のではなく、改造されたことそのものが歴史的価値になっている非常に珍しいケースといえるでしょう。
まとめ
1987年式アストンマーティン・ラゴンダ Series 3をベースに製作された、世界唯一のシューティングブレーク。
その存在だけでも十分に特別ですが、アストンマーティン自身がプロジェクトを承認し、純正部品まで供給していたという背景が、このクルマをさらに特別な存在にしています。
4年間に及ぶ製作期間、エンジンやトランスミッションのリビルド、専用ボディやガラス、サスペンション、そして細部まで考え抜かれたラゲッジスペース。
これは単なる「珍しいラゴンダ」ではなく、20世紀のコーチビルド文化を象徴する1台といってもいいかもしれません。
予想価格は最大35万スイスフラン。
しかし世界に代替となる個体が存在しない以上、コレクター同士の競り合いによって予想価格を超える可能性も十分にありそうです。
2026年11月7日のチューリッヒで、この世界唯一のラゴンダにどのような価格が付けられるのか注目です。
参考・出典: Autoblog / Broad Arrow Auctions




