ポルシェ・パナメーラといえば、高い快適性とスポーツ性能を両立した4ドアモデルです。
現在のパナメーラにマニュアルトランスミッション(MT)の設定はありませんが、どうやら十分な予算と明確な要望さえあれば、ポルシェ自身の手による「MTパナメーラ」が誕生する可能性があるようです。
海外メディアThe Supercar Blogなどによると、ポルシェの特別注文プログラム「Sonderwunsch(ゾンダーヴンシュ)」を統括するAlexander Fabig氏が、パワートレインやトランスミッションの変更を含む特別なプロジェクトについて言及しました。
「MTのパナメーラは作れる?」ポルシェ側の答えは“Yes”

今回注目されているのは、Sonderwunschによってトランスミッションの変更が可能なのかという話です。
Fabig氏は、マニュアルトランスミッションを含めたカスタムパワートレインについて前向きな姿勢を示しています。
さらに「顧客がMT仕様のパナメーラを依頼した場合、製作できるのか」と質問された際には、非常に肯定的な回答をしています。
つまり技術的・法規的な条件をクリアできれば、ポルシェ公式のワンオフモデルとしてMTパナメーラが製作される可能性があるということです。
ただし、これは通常ラインナップへのMT追加を意味するものではありません。
Sonderwunschとは?

Sonderwunschは、ポルシェが展開する高度なビスポークプログラムです。
一般的なボディカラーや内装素材の変更だけではなく、顧客とポルシェのデザイナーやエンジニアが協力し、場合によっては技術的な開発まで行います。
ポルシェ自身も、Sonderwunschでは外観の変更だけではなく、顧客の要望に応じた新しい技術開発まで対象になり得ると説明しています。
パナメーラについてもFactory Re-Commissioningを通じた特別製作が可能で、顧客自身がプロジェクトに参加しながら仕様を決めていく仕組みになっています。
通常のオプション選択とは、まったく異なる世界です。
現行パナメーラはもちろんATのみ

現在のパナメーラにMTモデルは存在しません。
ポルシェによると、第2世代パナメーラが登場した2016年以降、パナメーラは8速PDKのみの設定となっています。
現在販売されている日本仕様でもオートマチックトランスミッションのみとなっており、通常の新車オーダーでMTを選択することはできません。
だからこそ、SonderwunschによるMT化が実現すれば極めて特別な一台になります。
MT化は簡単な話ではない
もちろん、既存のパナメーラにMTを載せれば完成、というほど単純ではありません。
トランスミッションそのものだけでなく、クラッチ、ペダル、電子制御、エンジン制御、内装、センターコンソールなど、非常に多くの部分を専用設計する必要があると考えられます。
さらに重要なのが法規への適合です。
Fabig氏も、Sonderwunschにおける大きな制約のひとつが安全・排出ガスなどの規制であることを説明しています。
そのため、希望する仕様によっては公道走行が認められない車両になる可能性もあります。
おそらく価格は「パナメーラ何台分」という世界
そして最大のハードルが価格でしょう。
MT化したパナメーラについて具体的な価格は明らかになっていません。
ただし、Sonderwunschによるワンオフ車両では、通常の車両購入とはまったく異なる規模の開発費が必要になります。
今回の発言が行われた背景には、ポルシェがモントレー・カー・ウィークで披露した特別なワンオフモデルの存在もあります。The Driveによると、こうしたプロジェクトでは完成まで数年単位の時間と非常に大きな予算が必要になるケースもあります。
MTパナメーラを本当に実現しようとすれば、単なる高額オプションというレベルではなく、一台のクルマを新たに開発するようなプロジェクトになる可能性があります。
「効率」ではなく「体験」にお金を払う時代
このニュースで興味深いのは、MTパナメーラそのもの以上に、ポルシェがここまで顧客の要望に応えようとしていることです。
現在の高性能車において、変速スピードや燃費、加速性能だけを考えればPDKの方が合理的です。
実際、ポルシェ自身もPDKの快適性や効率、スポーツ性能を理由に自動変速化を進めてきました。
それでも一部の顧客は、速さではなく「自分でクラッチを踏み、ギアを選ぶ」という体験そのものを求めています。
そして、そのために莫大なコストを払う顧客がいるのであれば、メーカー側もそれに応える。
Sonderwunschは、これからの高級車市場を象徴する存在なのかもしれません。
MOTION & TIMEの視点

もし本当にMTのパナメーラが誕生すれば、個人的には非常に興味深い一台だと思います。
約5m級の大型4ドアGTを自分でクラッチ操作しながら走らせるというのは、現代の自動車市場ではほぼ存在しない体験です。
もちろん、速さだけを求めるならPDKの方が合理的でしょう。
しかし、EV化や電動化によってクルマの操作がますます簡単になっていく時代だからこそ、こうした「あえて不便なものに価値を見出す」クルマは、今後さらに特別な存在になっていくのではないでしょうか。
MTパナメーラが実際に製作される日は来るのか。
世界中のコレクターの中に、その開発費を払ってでも手に入れたい人物が現れることを期待したくなるニュースです。
参考・出典:The Supercar Blog / The Drive / Porsche Newsroom




