日本を代表する本格オフローダー、スズキ・ジムニーが、1990年代のアメリカを象徴する高性能SUVへと姿を変えました。
広島県東広島市を拠点とするカスタムパーツメーカー「C.L.LINK(シーエルリンク)」が発表したのは、ジムニーノマドをベースに、1990年代初頭のアメリカンSUVを再現したカスタムモデルです。
その姿は、1992年から1993年にかけて販売された伝説的な高性能SUV「GMCタイフーン(Typhoon)」を彷彿とさせるもので、アメリカの自動車メディアも注目しています。
しかも、このカスタムは単なるショーカーではありません。2027年1月の東京オートサロンで実車を披露し、同時に受注を開始する予定となっており、日本の小さなオフローダーが新しいカスタム文化を生み出そうとしています。
まるで小さなGMCタイフーン。ジムニーの常識を覆すデザイン

今回のカスタムで最も印象的なのは、ジムニー本来のオフロード志向とは対照的な、低く構えたスタイリングです。
通常、ジムニーのカスタムといえば大径タイヤやリフトアップによって悪路走破性を強調する手法が定番ですが、C.L.LINKはあえて車高を約25mm下げることで、1990年代のアメリカン・ストリートSUVを思わせるプロポーションを実現しました。
フロントには角型ヘッドライトと専用グリル、専用バンパーを採用し、ブラックで統一されたボディに力強い存在感を与えています。
さらに、リアのスペアタイヤを取り外し、専用スムージングパネルを装着することで、ジムニー特有のアウトドア感を抑え、都会的でスポーティーな印象に仕上げています。
この大胆な方向転換によって、もともと角張ったボディを持つジムニーノマドが、驚くほど自然にアメリカンSUVの雰囲気をまとっているのです。
モチーフとなったGMCタイフーンとは何者なのか

今回のカスタムを理解するうえで欠かせないのが、GMCタイフーンという車の存在です。
1992年に登場したタイフーンは、GMCのコンパクトSUV「ジミー」をベースに開発された高性能モデルで、当時としては異例ともいえるスポーツカー並みの加速性能を備えていました。
搭載されたのは4.3リッターV型6気筒ターボエンジンで、最高出力は約284PS、最大トルクは約475Nmに達します。
フルタイムAWDと4速ATを組み合わせ、0-60mph(約96.6km/h)加速は約5秒台前半という、1990年代初頭のSUVとしては驚異的な性能を実現していました。
| 項目 | GMCタイフーン |
|---|---|
| 生産期間 | 1992〜1993年 |
| エンジン | 4.3L V6ターボ |
| 最高出力 | 約284PS |
| 最大トルク | 約475Nm |
| 駆動方式 | フルタイムAWD |
| トランスミッション | 4速AT |
| 0-60mph加速 | 約5秒台前半 |
| 生産台数 | 約4,700台 |
当時のSUVは実用性や悪路走破性が重視されていたため、タイフーンのように舗装路での圧倒的な加速性能を追求したモデルは極めて異例でした。
現在では高性能SUVが世界中で販売されていますが、タイフーンはその先駆者の一台といえる存在です。
今回のジムニーカスタムは、その独特な世界観を現代の日本車で再解釈したものと考えられます。
足回りにはアイバッハとビルシュタイン。見た目だけではない本格仕様

C.L.LINKのカスタムは、外観だけにとどまりません。
足回りにはドイツのサスペンションメーカー、アイバッハ製コイルスプリングとビルシュタイン製ショックアブソーバーを組み合わせた1インチローダウンキットを採用しています。
さらに、16インチのC.L.LINK UNIONRIM TXホイールに、TOYO TIRESのOPEN COUNTRY H/T IIを組み合わせることで、オフロード一辺倒ではないスタイリングを追求しています。
インテリアにも専用RECAROシートとリアシートカバーが用意されており、車内外で統一した世界観を実現する計画です。
| 項目 | カスタム仕様 |
|---|---|
| ベース車両 | スズキ ジムニーノマド |
| コンセプト | 90sアメリカンSUV |
| フロント | 角型ヘッドライト、専用グリル |
| サスペンション | アイバッハ+ビルシュタイン |
| 車高 | 約25mmローダウン |
| ホイール | UNIONRIM TX 16インチ |
| タイヤ | OPEN COUNTRY H/T II 215/70R16 |
| フロントシート | 専用RECARO |
| リア | スペアタイヤレス、専用パネル |
| 発表予定 | 東京オートサロン2027 |
ただし、現段階では開発中の仕様であり、量産・販売時には装備内容が変更される可能性があります。
また、オリジナルのGMCタイフーンとは異なり、エンジンの大幅な出力向上が発表されているわけではありません。今回のプロジェクトは、性能の再現というよりも、当時のデザインや雰囲気を楽しむことに重点を置いているようです。
ファッション界の石川涼氏も参加。車をライフスタイルとして表現

このプロジェクトには、ファッションブランド「VANQUISH」や「#FR2」の創設者として知られる石川涼氏も参加しています。
C.L.LINKの顧問を務める石川氏が持つファッションやブランドづくりの感性と、同社が長年培ってきたジムニーカスタムの技術を組み合わせることで、従来の自動車カスタムとは異なるアプローチが生まれました。
重要なのは、単に往年の名車に似せることではなく、1990年代のアメリカンカルチャーを現代のライフスタイルに取り入れようとしている点です。
ジムニーは本来、悪路走破性に優れた実用的な四輪駆動車ですが、そのシンプルな造形はさまざまなデザインへと発展させやすく、カスタムの自由度という点でも大きな魅力を持っています。
今回のようなモデルが登場する背景には、車を移動手段としてだけでなく、ファッションや個性を表現する存在として楽しむ文化があるのでしょう。
2027年東京オートサロンで受注開始。価格はいくらになるのか

C.L.LINKによると、このジムニーノマドのカスタムモデルは、2027年1月15日から17日まで幕張メッセで開催される東京オートサロン2027に出展される予定です。
同イベントに合わせて受注も開始される計画ですが、現時点で販売価格や具体的な販売形態は公表されていません。
ベースとなるジムニーノマドに加え、専用外装パーツ、ローダウンサスペンション、ホイール、RECAROシートなどを採用することから、一般的な外装カスタムよりも大掛かりな仕様となることが予想されます。
もっとも、車両込みのコンプリートカーとして販売されるのか、カスタムキットとして提供されるのかによっても購入費用は大きく異なるため、正式発表を待つ必要があります。
日本国内で開発されるモデルだけに、海外の希少なカスタムカーとは異なり、日本のユーザーが実際に購入できる可能性がある点も注目したいところです。
なぜ日本のジムニーカスタムが海外で注目されるのか
日本では身近な存在であるジムニーですが、アメリカでは現行モデルが正規販売されていないこともあり、独特の存在感を持つ車として知られています。
その一方で、日本のカスタムメーカーはジムニーの角張ったデザインを生かし、メルセデス・ベンツGクラスやランドローバー、往年の欧州車などを連想させる個性的なモデルを次々と生み出してきました。
今回のGMCタイフーン風カスタムが興味深いのは、アメリカ生まれの伝説的SUVを、日本のコンパクトな四輪駆動車で表現しているという逆転した関係にあります。
かつてアメリカで誕生した高性能SUVのデザインが、30年以上の時を経て日本のカスタム文化に取り入れられ、再びアメリカの自動車メディアから注目されているのです。
しかも、単なる縮小コピーではなく、ジムニーノマドの持つ独自の個性を残しながら、異なる時代の自動車文化を融合させている点に、このプロジェクトの面白さがあります。
まとめ:ジムニーの可能性はオフロードだけではない
GMCタイフーンを思わせる今回のカスタムは、ジムニーという車が持つデザインの自由度を改めて示した一台といえます。
高い車高と大径タイヤによって力強さを演出するのではなく、あえて車高を下げ、1990年代のアメリカンSUVを思わせる姿に仕立てるという発想は、ジムニーの新しい楽しみ方を提示しています。
もちろん、オリジナルのGMCタイフーンが誇った圧倒的な加速性能を備えているわけではありませんが、この車の価値は速さではなく、時代を超えて愛されるデザインを現代に蘇らせたことにあるのでしょう。
2027年の東京オートサロンで実車がどのような完成度を見せるのか、そしてどのような価格で販売されるのか。
日本の小さなオフローダーが、世界の自動車ファンを魅了する新たな存在となるのか注目されます。
参考・出典:CarBuzz / Car and Driver / C.L.LINK / PR TIMES


