ロールス・ロイスが、わずか100台のみが製作される特別なEV「Project Nightingale(プロジェクト・ナイチンゲール)」の本格的なテストプログラムを開始しました。
しかし、そこはロールス・ロイスです。単に走行距離を重ねて耐久性を確認するだけではありません。
同車を象徴する「Piano Boot(ピアノ・ブート)」については、なんと最大1万5,000回もの開閉テストを実施。さらにルーフや空力性能、静粛性まで、世界各地の過酷な環境を使って徹底的に検証していきます。
わずか100台の特別なロールス・ロイス

Project Nightingaleは2026年4月に発表された、ロールス・ロイスの新たな「Coachbuild Collection」を代表するモデルです。
生産台数はわずか100台で、完全電動パワートレインを採用。従来の量産モデルとは一線を画し、コーチビルディングならではの自由なデザインと、現代のロールス・ロイスが持つEV技術を組み合わせています。
ロールス・ロイスによれば、オーナーとなる顧客からは実際に世界各地を走らせたいという強い要望が寄せられており、そのため同社は非常に大規模なテストプログラムを用意しました。
その期間は、エンジニアリング作業を合計すると実に350週間相当に及びます。
「Piano Boot」を1万5,000回開閉

Project Nightingaleの中でも特に目を引くのが、リアに設けられた「Piano Boot」です。
一般的なトランクのように上方向へ開くのではなく、カンチレバー機構によって横方向へ開く独特な構造となっており、その動きはグランドピアノの蓋を開ける所作を思わせます。
ロールス・ロイスにとっても初めて採用する機構ですが、その耐久試験は驚くほど徹底しています。
開閉テストは最大1万5,000サイクルに及び、長期間使用した後でも滑らかな動きや静粛性が失われないかを確認します。
ロールス・ロイスのCEO、クリス・ブラウンリッジ氏も、1万5,000回の開閉後に「Piano Bootが閉まる音」に至るまで細部を磨き上げると説明しており、単に壊れないことだけが合格基準ではないところに、このブランドらしさが表れています。
ルーフは最高80℃の環境でもテスト
Project Nightingaleはオープントップモデルであるため、ルーフにも特別な技術が投入されています。
ルーフの内張りにはカシミアやファブリック、高性能コンポジットを組み合わせた独自の防音素材を採用し、オープンモデルでありながらロールス・ロイスらしい静粛性を追求しています。
このルーフについては、生地そのものだけでなく開閉機構や高温環境での性能など、合計10種類のテストを実施。試験温度は最高80℃に達します。
さらに、ルーフを開けた状態での快適性を高めるため、専用の電動ウインドディフレクターも開発されています。
北極圏からアラビア半島まで走る
テスト環境も非常に幅広く、南ヨーロッパを皮切りに北極圏、さらにアラビア半島など、Project Nightingaleのオーナーが実際に訪れる可能性のあるさまざまな環境で検証が行われます。
また空力開発についても、モデリングと風洞試験に1,430時間を投入します。
極寒の環境から灼熱の地域まで走らせることで、気温や路面状況が大きく変化してもロールス・ロイスに求められる静粛性や快適性、操作感を維持できるかを確認していくわけです。
ロールス・ロイスが試しているのは「耐久性」だけではない
Project Nightingaleのテストで興味深いのは、数値だけでは評価できない部分まで重要視していることです。
センサーを使えば振動や騒音、温度などを正確に測定できますが、最終的にロールス・ロイスとして相応しいかどうかは、経験豊富なエンジニア自身の感覚によって判断されます。
Piano Bootの閉まる音、ルーフを開けたときの風の流れ、各部の動作から感じる滑らかさなど、一般的な自動車では数値化されにくい部分まで作り込むのがProject Nightingaleの開発なのです。
100台だからこそ、ここまでやる
Project Nightingaleは大量生産を前提としたモデルではなく、製作されるのはわずか100台です。
それでも350週間相当の開発作業を行い、1,430時間もの空力開発を実施し、Piano Bootだけでも最大1万5,000回開閉するというのは、効率だけを考えれば極めて贅沢な開発方法でしょう。
しかし、その「過剰」とも思える作り込みこそ、ロールス・ロイスが販売している価値の一部なのかもしれません。
EV化によってパワートレインが変わっても、ドアやルーフ、トランクが動くときの感触や音まで徹底的に磨き上げる姿勢は変わっていません。
Project Nightingaleは単なる100台限定の超高級EVではなく、電動化時代にロールス・ロイスがどこまで「完璧な移動体験」を追求できるのかを示すモデルになりそうです。
参考・出典:Motor1 / Rolls-Royce Motor Cars



