世界にはフェラーリやランボルギーニほど名前を知られていなくても、自動車史に重要な足跡を残したスーパーカーが存在する

その代表格ともいえる「MCA Centenaire(センテネール)」が、2026年10月9日にベルギーで開催されるBroad Arrow Zoute Concours Auctionに出品されます。

生産されたのはわずか5台。そのうえ今回登場する個体は、Centenaireの記念すべき最初の1台とされる特別な車両です。

目次

モナコから誕生した異色のスーパーカー

MCAとは「Monte Carlo Automobile」の略で、元F2およびCARTドライバーのフルヴィオ・マリア・バラビオによって1985年に設立されました。

Centenaireは1990年に発表され、モナコで生まれた最初のスーパーカーとして知られています。

開発にはフェラーリやアルファロメオのモータースポーツ部門で活躍したエンジニア、カルロ・キティをはじめ、イタリアのモータースポーツ界に関係する多くの人物が参加しました。

車名の「Centenaire」はフランス語で「100周年」を意味し、モナコ自動車クラブの創立100周年にちなんで名付けられています。

しかし、このクルマを特別な存在にしている理由は、生産台数だけではありません。

マクラーレンF1より早かったカーボンファイバーシャシー

Centenaire最大の特徴が、カーボンファイバー製シャシーです。

Broad Arrowによれば、Centenaireは公道用スーパーカーとして世界で初めてカーボンファイバーシャシーを採用したモデルとされています。

現在ではマクラーレンやフェラーリ、ランボルギーニなどの高性能モデルで珍しくない技術ですが、Centenaireが登場したのは1990年でした。

マクラーレンF1の市販モデル登場よりも早い時期に、ほとんど無名に近い小規模メーカーがこの構造を実現していたことになります。

生産されたCentenaireは1990年から1992年にかけてわずか5台にとどまり、その希少性は現代の限定ハイパーカーと比較しても際立っています。

心臓部はランボルギーニ・カウンタックのV12

さらに驚かされるのがパワートレインです。

今回出品される個体を含む初期の3台には、ランボルギーニ・カウンタック5000 QVに搭載された5.2リッターV12エンジンが採用されています。

項目MCA Centenaire
エンジン5.2L V型12気筒
エンジン供給Lamborghini
ベースCountach 5000 QV
最高出力455hp
トランスミッションZF製6速MT
シャシーカーボンファイバー
生産台数5台
生産期間1990〜1992年

大排気量の自然吸気V12と6速マニュアル、そしてカーボンファイバーシャシーという組み合わせは、現在の視点から見ても非常に魅力的です。

Centenaireのうち2台は後にル・マン24時間レース参戦に向けたテスト用としてさらに開発され、ミュルサンヌ・ストレートでは354km/hに達したとも伝えられています。

今回の個体は「最初のCentenaire」

今回オークションに登場する1990年式Centenaireがさらに特別なのは、製造された最初の個体だからです。

この車両は開発、テスト、プレゼンテーションなどに使用された後、車体番号が「EL0002」へ変更されたとされています。

その後はイタリア・サンタアガタ・ボロネーゼにあるランボルギーニの工場で約10年間保管され、2000年代初頭にMCA創業者のフルヴィオ・バラビオへ贈られました。

もともとのボディカラーはアイボリーホワイトで、インテリアには赤いレザーを採用。この白と赤の組み合わせは、モナコのナショナルカラーを表現したものです。

2007年頃にはブルーへ塗り替えられ、同年のレトロモビルにも展示されましたが、2014年に現在のオーナーがフランスで購入。その約2年後にボディが修復され、本来のアイボリーホワイトへ戻されています。

一方、赤いレザーインテリアは慎重に保存されてきました。

予想落札価格は最高約2億1,700万円

Broad Arrowが発表した予想落札価格は、90万〜120万ユーロです。

2026年9月22日時点の為替レートである1ユーロ=約180.8円で単純換算すると、

約1億6,300万〜2億1,700万円

という価格帯になります。

決して安い金額ではありませんが、生産わずか5台という希少性に加え、今回の車両はその最初の1台です。

さらにランボルギーニ製V12、6速MT、カーボンファイバーシャシーという構成だけでなく、MCAとランボルギーニのエンジン供給契約書のコピーや当時の写真、MCAの書簡、報道資料など膨大なヒストリーファイルも付属します。

知名度では測れない歴史的価値

MCA Centenaireという名前を初めて聞いたという人も少なくないでしょう。

しかしその歴史を辿ってみると、カーボンファイバーシャシーを極めて早い段階で公道用スーパーカーへ採用し、ランボルギーニのV12を搭載、さらにモナコという小さな国から世界のスーパーカー市場へ挑んだ非常に興味深い存在だったことが分かります。

フェラーリF40やポルシェ959、ランボルギーニ・カウンタック、そして後に登場するマクラーレンF1などがスーパーカー史の表舞台を飾る一方、その陰でCentenaireのような野心的なマシンも生まれていました。

今回のオークションは、そんな「忘れられたスーパーカー」が再び世界から注目を集める機会になりそうです。

参考・出典:Motor1 / Broad Arrow Auctions

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

目次