フランスの名車、シトロエン「2CV」が、ついに現代の電気自動車としてその全貌を現しました。
シトロエンは2026年10月11日、パリモーターショー2026の開幕に先立ち、新型「2 CV Concept」を世界初公開しました。1948年に誕生し、1990年まで生産された伝説的な大衆車の思想を受け継ぎながら、現代の都市生活に適した小型EVとして再解釈したモデルです。
MOTION & TIMEでは以前、ティザー画像や復活計画を紹介しましたが、今回はその続報となります。

当時は一部のデザインしか明らかになっていなかったものの、今回の正式公開によってボディ全体やインテリア、具体的な車両サイズが判明しました。さらにシトロエンは、2028年までに市販モデルを発表し、約1万5,000ユーロという手頃な価格を目指す方針も改めて示しています。
伝説の2CVが現代に復活。想像以上に忠実なデザイン

今回公開された2 CV Conceptで最も印象的なのは、ひと目で2CVと分かる独特のシルエットです。
大きく膨らんだフロントフェンダー、ボディから独立したように配置された丸型ヘッドライト、緩やかな曲線を描くルーフなど、1948年に登場したオリジナルの特徴が随所に再現されています。
ただし、単純に昔のデザインをコピーしたわけではありません。ヘッドライトには現代的なLED技術を採用し、ボンネットには彫刻的なプレスラインを与えることで、クラシカルな雰囲気と近未来的な印象を両立させています。
側面にはオリジナルを連想させるドアハンドルやCピラー付近のウインカーを配置し、足元には18インチのスチールホイールを採用。ミシュラン製タイヤにも専用デザインが施されるなど、細部まで2CVの世界観が表現されました。
リアには大きなブラックのテールゲートとLEDテールランプが組み合わされ、往年の面影を残しながらも、現代のクルマとして成立するスタイリングに仕上げられています。
シトロエンが目指したのは、単なる懐古趣味ではなく、かつての2CVが持っていた親しみやすさや自由な雰囲気を現代に蘇らせることなのでしょう。
全長3,760mm。初代より短いコンパクトなボディ

今回新たに明らかになった重要な情報が、車両の全長です。
新型2 CV Conceptは全長3,760mmに抑えられており、意外にもオリジナルの2CVより短いボディを採用しています。
| 項目 | 新型2 CV Concept |
|---|---|
| 車両タイプ | 小型電気自動車 |
| 全長 | 3,760mm |
| 車両重量 | 約1,000kgを目標 |
| ホイール | 18インチ |
| パワートレイン | 電動モーター |
| 最高出力 | 未発表 |
| バッテリー容量 | 未発表 |
| 航続距離 | 未発表 |
| 目標価格 | 約15,000ユーロ |
| 市販モデル発表目標 | 2028年まで |
| 生産地域 | 欧州 |
特に注目したいのは、約1,000kgという軽量な車両重量を目標としている点です。
現在のEVは航続距離を伸ばすために大容量バッテリーを搭載する傾向がありますが、それに伴って車両重量や価格が増加するという課題を抱えています。
一方、新型2CVでは車体を軽量化することで必要なバッテリー容量を抑え、製造コストと日常の電力消費を削減する考え方が採用されています。
これは、必要以上の性能や装備を追求せず、日常生活に本当に必要な機能を優先したオリジナル2CVの哲学そのものです。
インテリアは驚くほどシンプル。それでも遊び心は忘れない

エクステリア以上に大胆なのがインテリアです。
一般的な自動車に見られる大きなダッシュボードを廃止し、運転席前方には円筒形の構造物を配置。そこにシングルスポークステアリングや操作レバー、シフトセレクターなどを集約することで、車内を広く感じさせる設計となっています。
必要な走行情報は「Citroën Smart Vision」と呼ばれる表示システムで確認でき、中央には8インチの正方形タッチスクリーンも用意されています。
もっとも、最新のディスプレイ技術を大量に搭載する方向ではなく、必要な情報を分かりやすく伝えることが重視されている点が特徴的です。
さらに、センターコンソールの代わりには取り外し可能な収納バスケットを採用し、ドアハンドルには柔らかなストラップを使用。脱着可能なスピーカー「Radioën」や開放感のあるファブリックルーフなども備え、移動そのものを楽しめる空間を目指しています。
シートにはシトロエン独自のAdvanced Comfort技術が採用され、前席を引き出して休憩時に活用できる仕組みも盛り込まれました。
黄色を基調としたチェック柄のシートや温かみのある素材使いも印象的で、近年のEVに多い無機質なインテリアとは明確に異なる方向性を示しています。
卵を割らずに運ぶ。初代2CVの伝説も受け継ぐ

今回のコンセプトには、オリジナル2CVを知る人なら思わず笑顔になるような仕掛けも隠されています。
例えば、ドアの収納スペースには卵を収められる工夫が施されていますが、これは初代2CVの開発時に掲げられた、悪路でも卵を割らずに運べる乗り心地を実現するという有名な要求に由来するものです。
また、ブレーキペダルには亀、アクセルペダルにはウサギのモチーフを採用し、フロントガラスには1948年の誕生、1990年の生産終了、2026年のコンセプト公開を意味する数字が刻まれています。
さらに、ホーンや起動時のサウンドにも往年の2CVを連想させる演出が取り入れられました。
こうした細部を見ると、シトロエンが単に2CVという有名な車名を再利用するのではなく、当時の文化やユーモアまで現代に引き継ごうとしていることが分かります。
約260万円を目指す新型2CV。低価格EV市場への挑戦

新型2CVの市販化において、デザインと並んで重要なのが販売価格です。
シトロエンは今回、欧州での目標価格を約1万5,000ユーロとする方針を改めて明らかにしました。
仮に1ユーロ=173円で換算すると約259万5,000円となり、現在のEV市場では比較的手頃な価格帯に位置します。
ただし、この価格は正式な販売価格ではなく、2028年の市販化に向けた目標値であり、実際の価格は生産コストや為替、欧州の制度などによって変動する可能性があります。
また、新型2CVは欧州で検討されている小型・低価格EV向けの新しい「E-Car」規制を想定して開発されており、シトロエンのラインナップでは超小型モビリティのAmiとコンパクトカーのC3の中間に位置付けられる予定です。
欧州市場では中国メーカーによる低価格EVの攻勢が強まっていることもあり、ステランティスにとって新型2CVは単なるブランドの象徴ではなく、価格競争力を取り戻すための重要なモデルになると考えられます。
安さを実現するために、あえて複雑にしない
今回の発表で興味深いのは、シトロエンが低価格化を単なる装備の削減だけで実現しようとしているわけではないことです。
例えば、ボディには製造しやすい平面的な構造を取り入れ、バンパーは車体から独立して交換できる設計とするなど、生産時のコストだけでなく修理のしやすさにも配慮しています。
さらに、車体重量を抑えれば小型のバッテリーでも日常生活に必要な航続距離を確保しやすくなるため、車両価格と維持費の両面でメリットが生まれます。
現在の自動車業界では、より大きなディスプレイ、より高い出力、より長い航続距離が商品価値として重視されがちですが、新型2CVはそうした競争とは距離を置いています。
高性能化によって価格を上げるのではなく、必要な機能を見極めて購入しやすいクルマを作るという発想は、むしろ現在の自動車市場だからこそ新鮮に映ります。
日本発売の可能性は? 軽自動車とは異なる魅力
日本市場への導入について、現時点でシトロエンから正式な発表はありません。
全長3,760mmというサイズは日本の軽自動車規格を超えているため、仮に国内導入される場合には普通乗用車として販売されることになります。
また、欧州で約260万円という目標価格が実現したとしても、日本では輸送費や認証費用、為替などの影響を受けるため、同じ価格で販売できるとは限りません。
それでも、コンパクトな車体と独創的なデザイン、そしてシトロエンらしい乗り心地を備えたEVが登場すれば、日本でも一定の支持を集める可能性はあるでしょう。
特に、単なる移動手段ではなく、所有すること自体に楽しさを求めるユーザーにとって、2CVの個性的なデザインは大きな魅力になるはずです。
ただし、日本市場での成功を考えるのであれば、価格だけでなく航続距離や急速充電への対応、アフターサービス体制なども重要になります。
2028年、2CVは再び「人々のためのクルマ」になれるか
今回の2 CV Concept公開によって、長年噂されてきた2CV復活計画は、具体的な姿を持つ段階へと進みました。
しかもシトロエンが目指しているのは、歴史的な名車の名前を使った高価な趣味のクルマではなく、かつての2CVと同じように、多くの人が無理なく購入し、日常生活で使える実用的な自動車です。
もちろん、約1万5,000ユーロという価格と現代の安全性、快適性、実用性をどこまで両立できるかは、今後の大きな課題となるでしょう。
それでも、クルマが年々大型化し、複雑化し、高価になっている現在だからこそ、新型2CVが掲げる「シンプルで手頃な移動の自由」という価値には大きな意味があります。
1948年の初代2CVがフランスの人々に自動車を身近な存在として届けたように、2028年に登場する新型2CVも、電気自動車を特別なものではなく、誰もが楽しめる日常の道具へと変えていくことができるのでしょうか。
その答えは、コンセプトカーのデザイン以上に、今後発表される量産モデルの完成度と価格にかかっています。
参考・出典:Motor1 / Citroën・Stellantis Media / Reuters / Top Gear

