ホンダ シビック タイプR改良新型を米国で先行発表|315馬力維持も冷却・足回りを進化

ホンダは、シビック タイプRの改良新型を米国で先行発表しました。

現行型「FL5」として登場したシビック タイプRは、2.0リッターVTEC TURBOエンジンと6速MTを組み合わせ、前輪駆動スポーツカーとして極めて高い完成度を誇ります。

今回の改良では最高出力をさらに引き上げるような派手なパワーアップではなく、冷却性能や空力、サスペンション、ブレーキフィールといった「速く走り続けるための性能」に手が加えられているのが特徴です。

さらにシートヒーターやGoogle built-inも採用されるなど、サーキット性能だけではなく、日常的に乗るクルマとしての快適性も大きく向上しています。

目次

315馬力の2.0リッターVTEC TURBOは継続

改良新型にも、従来と同じK20C型2.0リッター直列4気筒VTEC TURBOエンジンが搭載されます。

米国仕様の最高出力は315hpで、今回の改良による大幅なパワーアップはありません。

項目米国仕様
エンジン2.0L 直列4気筒 VTEC TURBO
最高出力315hp(約319PS)
トランスミッション6速MT
駆動方式FF
エンジン型式K20C

数字だけを見ると従来型とほとんど変わっていませんが、今回ホンダが重視したのは最高出力そのものではなく、その性能を安定して引き出せる環境です。

フロントデザイン変更は見た目だけではない

外観で最も大きく変わったのがフロントフェイスです。

よりアグレッシブなデザインへ変更するとともにフロントスプリッターを大型化し、ダウンフォースを増加させています。

さらにグリル開口部も拡大されており、エンジンルームへ流れ込む空気の流れを改善することで冷却性能を向上させました。

シビック タイプRのような高性能車では、エンジン単体の最高出力だけでなく、サーキットを連続走行した際に水温や油温を適正範囲に保てるかどうかも重要になります。

その意味では今回の変更は、カタログ上の「315hp」という数字には現れないものの、実際のサーキットでは大きな意味を持つ改良といえるでしょう。

+Rモードのサスペンションも再チューニング

シャシーにも手が加えられました。

最もスポーティな「+R」モードではアダプティブダンパーの制御が最適化され、路面への追従性を向上させながら、従来より突き上げ感を抑えています。

単純に足回りを硬くしてレスポンスを高めるのではなく、タイヤを路面へ追従させながらドライバーに伝わる衝撃を抑える方向へ調整されている点は興味深いところです。

さらにレブマッチシステムについてもエンジンレスポンスが高速化され、シフトダウン時の回転合わせがよりスムーズになりました。

ブレーキペダルには新たにヨークスプリングが追加され、ペダルを踏んだ際のダイレクト感も改善されています。

こうした変更を見ると、今回の改良はスペック競争を狙ったものではなく、ドライバーとクルマとの「つながり」をさらに磨き上げることに重点が置かれていることが分かります。

タイプR初のシートヒーターを採用

一方、インテリアでは意外ともいえる装備が追加されました。

フロントスポーツシートに、シビック タイプRとして初めて3段階調整式シートヒーターが採用されています。

タイプRといえば軽量化や走行性能を優先するイメージが強く、こうした快適装備とは距離を置いてきましたが、現在のシビック タイプRはサーキット専用車ではありません。

普段の通勤や長距離移動にも使用でき、そのままサーキットへ持ち込めるという万能性もFL5の魅力であり、シートヒーターの追加はその性格をさらに強める装備といえます。

シート表皮も変更され、パーフォレーション加工とブラックストライプを採用することで通気性を確保しながら、高Gが発生する場面で身体が滑りにくくなるよう工夫されています。

インストルメントパネルやフロントドアにはウルトラスエードが採用され、質感を高めるだけでなく、フロントウインドウへの映り込みを抑えることで視認性向上にもつなげています。

Google Geminiも利用可能に

デジタル面も大きく進化しました。

改良新型では従来のAlexa built-inに加えて、シビック タイプRとして初めて「Google built-in」を採用します。

Google MapsやGoogle Playに加えてGoogle Geminiにも対応するため、車内での音声操作や情報検索など、インフォテインメントシステムの利便性は大きく向上します。

センターコンソールにはUSB-Cポートも2基追加されました。

タイプRという名前から想像する硬派なスポーツモデルとは少し方向性が異なる装備にも見えますが、現代の高性能車では走行性能とデジタル環境を両立させることが当たり前になりつつあります。

1997年の初代から30周年

シビック タイプRが初めて登場したのは1997年です。

EK9型シビックをベースに誕生した初代から数えて、タイプRは6世代にわたって進化を続けてきました。

初代は自然吸気1.6リッターVTECエンジンと軽量ボディを組み合わせた非常にピュアなスポーツモデルでしたが、現在のFL5では2.0リッターターボによる300PSを大きく超えるパワーを持ちながら、快適装備や先進デジタル機能まで備えています。

それでも6速MTとFFという基本構成を守り続けていることは、現在の自動車市場を考えると非常に貴重です。

電動化やDCT、AT化が進む中、ドライバー自身がクラッチを操作してギアを選択するタイプRは、性能だけでは説明できない価値を持つ存在になりつつあります。

日本仕様にも改良は導入されるのか

今回発表されたのは米国仕様であり、日本仕様への導入時期や詳細については現時点で明らかになっていません。

ただし、冷却性能の向上やサスペンション制御の最適化といった変更はタイプRの商品力を直接高める内容であり、日本仕様への展開にも期待したいところです。

特に注目したいのは、今回ホンダが最高出力を引き上げなかったことです。

315hpという数字を維持しながら、冷却、空力、ダンパー、レブマッチ、ブレーキフィールといった部分を細かく磨き込んだことからは、「数字ではなく完成度を上げる」というタイプRらしい開発思想が見えてきます。

そして、シートヒーターやGoogle Geminiまで搭載したことで、FL5は週末だけ楽しむ特別なスポーツカーではなく、毎日乗れる高性能車としてさらに完成度を高めました。

1997年の初代登場から30周年を迎えたシビック タイプRですが、電動化が急速に進む時代において、2.0リッターターボ、FF、そして6速MTという組み合わせがいつまで残されるのかも気になるところです。

だからこそ今回の改良型は、単なるマイナーチェンジ以上に、純内燃機関+MTで楽しめるタイプRの成熟形として注目すべき一台なのかもしれません。

参考・出典:Honda

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この記事を書いた人

メルセデス・ベンツ正規ディーラーを中心に、自動車業界で10年以上の経験を持つ筆者。販売現場で培った経験をもとに、高級車・新型車を中心とした自動車情報を独自の視点で発信しています。

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