ランボルギーニの歴史を語るうえで、エンジンは単なる動力源ではありません。とりわけガヤルドからウラカンへと受け継がれてきた自然吸気V10は、アクセルを踏み込むほど高まっていくレスポンスと甲高いサウンドによって、小型ランボルギーニを象徴する存在となっていました。
だからこそ、そのV10を廃止して後継モデル「Temerario(テメラリオ)」にV8ツインターボ+ハイブリッドを採用すると発表すれば、ファンから批判や惜しむ声が上がることは容易に想像できます。
そして興味深いのは、ランボルギーニ自身もそれを十分に理解していたことです。
Motor1が報じたところによると、テメラリオの開発側はV10が失われることで愛好家から批判が出ることを予想していました。それでも従来型エンジンを延命するのではなく、まったく異なる方法で「ランボルギーニらしさ」を作り直す道を選んだのです。
「V10が恋しくなる」ことは最初から分かっていた
ウラカンに搭載されていた自然吸気V10は、その性能だけを数字で評価できるエンジンではなく、回転上昇の感覚やレスポンス、そして高回転域で響くサウンドまで含めて車のキャラクターを形成していました。
そのため、後継車がV8ツインターボになると聞けば「ランボルギーニらしさが薄れるのではないか」と考えるファンが現れるのも当然でしょう。
しかしランボルギーニは、そうした反応を避けるために過去へ留まるのではなく、V10とは違う方法でドライバーを興奮させるエンジンを作ることを選択しました。
その答えが、量産スーパースポーツカーとして極めて異例となる最高10,000rpmまで回る4.0リッターV8ツインターボです。
「V10からV8」ではなく「10から10,000へ」
ランボルギーニのChief Marketing and Sales OfficerであるFederico Foschini氏は、以前テメラリオについて非常に象徴的な言葉を残しています。
「V10からV8になったのではなく、10から10,000になった」
つまりランボルギーニは、シリンダー数が2つ減ったことではなく、10,000rpmという新しい体験そのものをテメラリオの象徴にしようとしているのです。
自然吸気V10とツインターボV8では音もフィーリングも当然異なるため、V10をそのまま再現することはできません。それならば中途半端に過去を模倣するのではなく、V10にはなかった新しい魅力を作るという考え方なのでしょう。
なぜV6ではなくV8だったのか
実はランボルギーニは、テメラリオの開発段階でV6も検討していました。
しかしCTOのRouven Mohr氏によれば、V10からV6への変更はユーザーから大幅なダウングレードと受け取られる可能性があり、それを避けたかったことがV8を選択した理由のひとつだったといいます。
さらにランボルギーニは大手メーカーのように頻繁に新しいエンジンを開発できる規模ではないため、将来的な性能向上の余地も確保する必要がありました。その点でも、3.0リッター級V6より4.0リッターV8のほうが将来の発展性を持たせやすかったというわけです。
つまりV8への変更は単純なコスト削減型のダウンサイジングではなく、ブランドイメージと将来的な性能向上まで考えたうえで選択されたものといえます。
新型V8は800PS、システム全体では920PS
テメラリオに搭載される4.0リッターV8ツインターボは、ランボルギーニがサンタアガタ・ボロネーゼで新たに開発したエンジンで、V8単体でも最高出力800PSを発生します。
さらに3基の電気モーターを組み合わせることでシステム最高出力は920PSに達し、0-100km/h加速は2.7秒、最高速度は340km/h以上とされています。
| 項目 | Lamborghini Temerario |
|---|---|
| エンジン | 4.0L V8ツインターボ |
| エンジン最高出力 | 800PS |
| システム最高出力 | 920PS |
| 最大トルク(V8) | 730Nm |
| 最高回転数 | 10,000rpm |
| モーター | 3基 |
| 駆動方式 | 電動AWD |
| 0-100km/h加速 | 2.7秒 |
| 最高速度 | 340km/h以上 |
さらにフラットプレーンクランクシャフトやチタン製コンロッド、DLCコーティングされたフィンガーフォロワーなど、モータースポーツを思わせる技術が投入されており、単にターボで大きなパワーを発生させるだけのV8ではありません。
ハイブリッドはV8の弱点を補うためにも使われる
テメラリオの興味深いところは、電動化が単純な最高出力向上のためだけに使われていないことです。
大きなターボチャージャーを装着した高回転型エンジンでは、低回転域から瞬時に大きなトルクを発生させることが難しくなりますが、テメラリオでは電気モーターがその領域を補完します。
その結果、低回転ではモーターがレスポンスを支え、回転数が上昇するとV8ツインターボが本領を発揮し、そのまま10,000rpm近くまでパワーが伸びていくという、従来のターボエンジンとは異なるキャラクターが作られています。
ランボルギーニが目指したのは、電動化によってエンジンの存在感を薄めることではなく、電気モーターを使って内燃機関をさらに刺激的にすることだったと見ることができます。
それでもV10と同じではない
もちろん、どれだけ高性能であってもテメラリオのV8がウラカンのV10と同じになるわけではありません。
自然吸気V10特有の音やレスポンスには代替しにくい魅力があり、実際にテメラリオを評価した海外メディアからも、新しいV8を高く評価する一方で、V10のサウンドについては依然として特別だったという声が出ています。
ここはランボルギーニ自身も理解している部分でしょう。
だからこそ「V10を再現したV8」を作るのではなく、10,000rpmという別の強烈な個性を与えることで、新しい時代のランボルギーニとして成立させようとしたのではないでしょうか。
V10を失った代わりに、新しい伝説を作れるのか
ガヤルド、そしてウラカンへと約20年間続いてきた自然吸気V10の終了を惜しむ声が出ることを、ランボルギーニは最初から分かっていました。
それでもV10を守り続けるのではなく、V8ツインターボ、3モーターのハイブリッドシステム、そして10,000rpmという極端な高回転化によって、新しい時代に合わせたスーパーカーへ踏み出しています。
V10が名機だったことと、V8が優れたエンジンであることは決して矛盾しません。むしろテメラリオにとって本当に重要なのは、過去のV10を忘れさせることではなく、数年後に「テメラリオの10,000rpm V8もまた特別だった」と語られる存在になれるかどうかでしょう。
V10の死を惜しむ声まで予想したうえで、それでも新しい道を選んだランボルギーニ。その決断が正しかったのかどうかは、これからテメラリオが積み重ねていく歴史によって評価されることになりそうです。
参考・出典:Motor1 / Lamborghini




